閉じる
 
【発明の名称】土圧、水圧を電気エネルギーに変換する装置
【出願人】
【識別番号】713000087
【氏名又は名称】佐田 哲朗
【住所又は居所】兵庫県明石市大久保町高丘2丁目12番地の14
【発明者】
【氏名】佐田 哲朗
【住所又は居所】兵庫県明石市大久保町高丘2丁目12−14
【要約】
【課題】これまでの発電素子を利用して発電する方式は、装置の設置場所が限定される、圧電素子全体に荷重が同時作用しないため圧電素子設置面積当たりの発電効率が高くない、荷重がかかるのは一瞬で発電に継続性がない等の問題があった。
【解決手段】(a) 圧電ユニット20が圧力伝達媒体15の内部で回転あるいは揺動するケースである。海洋プレート等の影響で地中の土圧44には方向性がある。地中で圧電ユニット20が圧力伝達媒体15の内部で回転或いは揺動することにより、圧電ユニット20に作用する圧力に変動が発生し、発電が起こる。 (b)圧電ユニット20が圧力伝達媒体15の内部で上下動するケースである。地表又は水面21下の地中或いは水中では圧力伝達媒体15には土圧又は水圧22が水平方向に作用する。圧電ユニット20を圧力伝達媒体15内で上下動させることにより、圧電ユニット20に作用する圧力に変動が発生し、発電が起こる。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と電極及び圧力伝達媒体等から構成される圧電パッケージを地中に設置し、圧電素子と電極等より構成される圧電ユニットを圧力伝達媒体内で回転、揺動、上下動或いはこれらの動作を組み合わせることにより、圧電ユニットに作用する土圧の変動を生じさせ、電気エネルギーに変換する。
【請求項2】
圧電素子と電極及び圧力伝達媒体等から構成される圧電パッケージを水中に設置し、圧電素子と電極等より構成される圧電ユニットを圧力伝達媒体内で上下動させることにより、圧電ユニットに作用する水圧の変動を生じさせ、電気エネルギーに変換する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中で発生する土圧及び水中で発生する水圧を、圧電素子を介して電気エネルギーに変換する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧力変動や振動を、圧電素子を介して発電する幾つかの特許が公開されている。
【0003】
これ等の特許では、圧電素子をある場所に固定し、人や車、列車がその上を動く時の荷重(圧力)変動により生じる振動エネルギーを利用している。このため、装置の設置場所が限定されるとともに、利用できる振動エネルギー量も人数や車両数で変動し一定ではない。また、圧電素子全体に荷重が同時作用しないため、圧電素子設置面積当たりの発電効率は高くない。更に、発電は踏まれた時の一瞬で継続性がなく、発電量も小規模のため、現時点での利用は信号機の補助電源、ビルや建屋内での照明、センサー等に限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−197704号公報
【特許文献1】特開平11−353913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでの圧電素子を介して発電する方法は、圧電素子をある場所に固定し、人や車、列車がその上を動く時の荷重(圧力)変動により生じる振動エネルギーを利用している。このため、装置の設置場所が限定されるとともに、利用できる振動エネルギーも人数や車両数で変動し一定ではない。また、圧電素子全体に荷重が同時作用しないため、圧電素子設置面積当たりの発電効率は高くない。更に、発電は踏まれた時の一瞬で継続性がない。本発明では従来の発電素子を固定し、荷重(圧力)がその上を動くことで発電する方法を逆にし、荷重(圧力)が常時作用している場所で、発電素子を動かすことで発電する方式とした。この方法により、圧電素子設置全面積にわたって、一定量の振動エネルギーを効率よく得ることが可能となり、恒常的に一定量の電気を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
水中では深さが10m増す毎に1気圧上昇する。地中では水中と同じ深さで、水圧の約2.5倍の土力が作用する。水圧はあらゆる方向に同じ大きさの圧力が作用するが、土圧は水平方向には鉛直方向の約半分の圧力が作用する。また、土圧は深さによって発生する圧力のみならず、海洋プレートが大陸プレート押すことにより発生する圧力も加わる。海洋プレートが大陸プレート押すことにより発生する圧力(圧縮歪)が、プレート境界地震及び断層で生じる内陸地震の原因と見なされている。
【0007】
水圧は海や湖で、土圧は陸地の至る所で利用できる。また、海洋プレートの影響による土圧も日本では利用可能地点が多く存在する。本発明では、これ等の圧力を利用し、安定的に効率よく電力を得ることを目的とする。
【発明の効果】
【0008】
水圧や土圧を利用するため、一定量の電気を効率よく、恒常的に得ることができる。装置の単機容量を増す、装置の個数を増やすことで大規模発電も可能である。
【0009】
海洋プレートの影響による土圧を利用する場合は、発電により地震発生の原因となる圧縮歪を緩和させるため、地震発生の予防にもなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は地中で圧電素子を揺動させて発電した実験の写真である。
【図2】図2は地中で圧電素子を上下動させて発電した実験の写真である。
【図3】図3は図1、図2に示す実験の説明図である。
【図4】図4は圧電ユニットの動作図を示す。
【図5】図5は圧電パッケージの断面図を示す。
【図6】図6は圧電ユニットが回転・揺動する場合の圧電パッケージの断面図及び側面図を示す。
【図7】図7は圧電ユニットが上下動する場合の圧電パッケージの断面図及び側面図を示す。
【図8】図8は圧電ユニットが上下動する場合の別の圧電パッケージの断面図及び側面図を示す。
【図9】図9は地中に作用する土圧を利用して電気エネルギーを取り出す説明図を示す。(実施例1)
【図10】図10は海底の大陸プレートに作用する土圧を利用して電気エネルギーを取り出す説明図を示す。(実施例2)
【図11】図11は水中で作用する水圧を利用して電気エネルギーを取り出す説明図を示す。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0011】
圧力が常時作用している場所で、発電素子を移動させることにより発電する方法を図の具体例を用いて説明する。但し、これ等は一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、これ等の具体例に限定されるものではない。
【0012】
図1は土圧に方向性がある場合に、発電素子を揺動させることにより発電した実験の写真である。(a)は発電素子を粘着テープで円筒容器に固定した写真である。(b)はその円筒容器をボール箱内の地中に埋め、万力で一方向に圧力を加えた写真である。(c)はその状態でLEDが未発光であることを示す。(d)は円筒容器を揺動させるとLEDが光ることを示す。
【0013】
図2は地中の発電素子を上下動させることにより発電した実験の写真である。(a)は発電素子を貼り付けた円筒容器が上下動した際に、その下に出来る空間に土が流れ込まないよう、ボール紙で円筒容器を包んだ写真である。(b)はボール箱内に土を詰め、万力で一方向に圧力を加えた写真である。(c)はその状態でLEDが未発光であることを示す。(d)は円筒容器を上下動させるとLFDが光ることを示す。
【0014】
図3の(a)は図1の、(b)は図2の実験の説明図である。(a)では、箱10内の土9に埋まった円筒容器7上に、上部電極2、下部電極3に挟まれた発電素子1が粘着テープ6で固定されている。上部電極2と下部電極3はリード線5でLED4に繋がれている。土9は万力8により一方向に大きな圧力が加えられている。この状態で円筒容器7を揺動させると、圧電素子1に作用する土圧が変動するため、LED4が発光する。すなわち発電が行われる。(b)も(a)と同じ構成だが、円筒容器7がボール紙11で包まれている。更に、圧力変動は円筒容器7がボール紙11内で上下動することにより、土圧が作用したり、しないことより得られ、LED4が発光する。
【0015】
図4は圧電ユニット20の動作を示す。(a)は図1の実験結果に基づく発電方式である。海洋プレート等の影響で地中の土圧44には方向性がある。地中で圧電ユニット20が圧力伝達媒体15の内部で回転或いは揺動することにより、圧電ユニット20に作用する圧力に変動が発生し、発電が起こる。回転或いは揺動を継続することで、恒常的に電気を取り出すことができる。又、海洋プレートの影響で土中に蓄積した圧縮歪を発電により緩和することで、地震発生防止に役立つ。 (b)は図2の実験結果に基づく発電方式である。地表又は水面21下の地中或いは水中では圧力伝達媒体15には土圧又は水圧22が水平方向に作用する。圧電ユニット20を圧力伝達媒体15の内部で上方向に移動させると、圧力伝達媒体15を抜け出した圧電ユニット20には土圧又は水圧22が作用しなくなる。そこから圧電ユニット20を下方向に移動させると、圧力伝達媒体15内に戻り、圧電ユニット20には土圧又は水圧22が再び作用する。圧電ユニット20を上下動させることにより、圧電ユニット20に作用する圧力に変動が発生し、発電が起こる。上下動を継続することで、恒常的に電気を取り出すことができる。
【0016】
図5は圧電パッケージの断面図を示す。(a)は分割型発電素子、(b)は一体型発電素子を示す。(a)では4分割となっているが、これは一例で、任意に分割することができる。上部電極2、下部電極3に挟まれた発電素子1が円筒構造物13に固定される。圧電素子1、上部電極2、下部電極3及び円筒構造物13を含んだ構造体を圧電ユニット20と称する。圧電ユニット20は圧力伝達媒体15内に設置される。圧力伝達媒体15の材料としては潤滑性のある耐熱ゴム等が使用される。圧電ユニット20と圧力伝達媒体15の間に潤滑物質12を充填する。潤滑物質12の材料としては、グラファイトやフッ素樹脂やポリマー等の個体潤滑材、グリース等の半固体潤滑材又は潤滑油等が使用される。圧電ユニット20と潤滑物質12及び圧力伝達媒体15を併せて圧電パッケージ29と称する。圧力伝達媒体15は圧電ユニット20を土石16から保護するとともに、土石16からの圧力を圧電ユニット20に伝える役目を持つ。潤滑物質12は圧電ユニット20が圧力伝達媒体15内で移動する際の摩擦力を軽減する役目を持つ。
【0017】
図6は圧電ユニット20が回転或いは揺動する場合の圧電パッケージ29の断面図及び側面図を示す。圧電パッケージ29は導管17の下部に配置される。土圧は上方向にも作用する。このため圧電パッケージ29に作用する上向きの土圧はパッキン18及びパッキン押え19を介して導管17により支持される。パッキン18は土石16が導管17内に侵入するのを防ぐ役目も持つ。圧電パッケージ29は土圧に方向性のある場所(ある方向の土圧がそれと直角方向の土圧に比べ高い場所)に設置される。圧力伝達媒体15の中で、圧電ユニット20が回転或いは揺動すると発電素子1にかかる圧力が変動するため発電が起こる。回転或いは揺動を継続することで、恒常的に電気を取り出すことができる。
【0018】
図7は圧電ユニット20が上下動する場合の圧電パッケージの断面図及び側面図を示す。圧電ユニット20が上昇して圧力伝達媒体15から完全に抜け出すと、下降時に圧力伝達媒体15に戻るのが困難となるため、円筒構造物13の下に円筒構造物下部14を設ける。圧電ユニット20が上昇しても、円筒構造物下部14は圧力伝達媒体15内に留まる。圧電ユニット20が上昇すると、圧力伝達媒体15の大部分は空洞となるため土圧又は水圧のため、変形し、圧電ユニット20を元の位置に戻すのが困難となる。圧力伝達媒体15の過度の変形を抑えるため、ガイド23が設置される。図7ではガイドは円周上に4個設置されているが、これは一例で、個数は任意に選ぶことができる。ガイド23は導管17に固定されたガイド支持パイプ24と円筒構造物下部14の下に設置されたガイド底板25で固定される。この際、ガイド底板25と圧力伝達媒体15の底部には隙間を設け、パッキン18に充分な圧縮力が作用するよう配慮する。パッキン18は地中にあっては導管17内への土の侵入を防止するが、水中にあっては導管17内への水の浸入を防止する。ガイド23により圧力伝達媒体15の過度の変形が抑制されるため、圧電ユニット20はガイド23に沿ってスムーズに上下できる。なお、水中では発電パッケージ29が導管17より外れる可能性があるため、導管下部(多孔管)26を追加する。多孔管のため、発電パッケージ29に水圧が作用する。
【0019】
図8は圧電ユニット20が上下動する場合の別の構造の圧電パッケージ29の断面図及び側面図を示す。空洞となる圧力伝達媒体15の変形防止のため、バネ又はベロー27を圧力伝達媒体15内に設置する。バネ又はベロー27はバネ又はベロー受け28を介して圧力伝達媒体15内で伸縮するので、空洞となった圧力伝達媒体15が過度に変形するのを防ぐ。それ以外の構造は図7と同じである。
【0020】
図6〜図8には圧電ユニット20を駆動する装置は図示されていない。この目的のために、低速で馬力のあるギヤードモータやモーターの回転を揺動、上下動に変換する歯車やリンク、カム装置及び電源を地表37や浮体38、あるいは圧電ユニット20の近傍あるいは内部に、状況に応じて設置する。
【実施例1】
【0021】
図9は、本発明装置の1実施例であって、地中で作用する土圧を利用して発電する説明図を示す。地表37上のデリック30に設置された地中掘削装置31により導管17を発電に適した土圧が作用する場所35まで送り込む。その後、圧電パッケージ29を導管17の下部に設定し、圧電ユニット20を回転或いは揺動、又は上下動、またはこれらの動作の組合せにより発電を行う。なお、地中掘削方法は一例であり、図とは異なる掘削方法を使用して行うこともできる。発電した電気は交流に変換された後、変圧器32で昇圧され、鉄塔33に支持された送電線34を介して消費地に送られる。発電の一部は電源として利用される。
【0022】
圧電パッケージ29を断層36の近傍に設置すると、発電により断層36に作用する土圧が緩和され、内陸地震発生防止に役立つ。
【実施例2】
【0023】
図10の実施例は、海底の大陸プレートに作用する土圧を利用して発電する説明図を示す。図9と異なり、デリック30及び地中掘削装置31は海に浮かぶ浮体38に設置される。導管17は大陸プレート40内の発電に適した土圧が作用する場所35に送りこまれる。その後は図9と同じ方法で発電を行う。浮体38が陸地より遠く離れている場合は、発電した電気はバッテリー製造工場又は水素製造工場41でバッテリーの充電或いは水素の製造に供される。発電の一部は電源として利用される。
【0024】
圧電パッケージ29を大陸プレート40内の圧縮歪が蓄積した場所に設置すると、発電によりが圧縮歪が緩和され、プレート境界地震発生防止に役立つ。
【実施例3】
【0025】
図11の実施例は、水中で作用する水圧を利用して発電する説明図を示す。海又は湖42上の浮体38から導管17が水中に伸び、その下部に圧電パッケージ29が設置される。圧電ユニット20を上下動させることにより発電する。発電した電気は交流に変換された後、変圧器32で昇圧され、水底ケーブル43を介して消費地に送られる。発電の一部は電源として利用される。
【0026】
浮体38に風力発電装置等を設置して再生可能エネルギーを最大限利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
地球上の至る所に存在する土圧、水圧を利用して発電することができる。
【0028】
断層近傍や大陸プレートに溜まった圧縮歪を発電により緩和することにより、内陸地震発及びプレート境界地震の発生防止に役立つ。
【符号の説明】
【0029】
1 発電素子
2 上部電極
3 下部電極
4 LED
5 リード線
6 粘着テープ
7 円筒容器
8 万力
9 土
10 箱
11 ボール紙
12 潤滑物質
13 円筒構造物
14 円筒構造物下部
15 圧力伝達媒体
16 土石
17 導管
18 パッキン
19 パッキン押え
20 圧電ユニット
21 地表又は水面
22 土圧又は水圧
23 ガイド
24 ガイド支持パイプ
25 ガイド支持底板
26 導管下部(多孔管)
27 バネ又はベロー
28 バネ又はベロー受け
29 圧電パッケージ
30 デリック
31 地中掘削装置
32 変圧器
33 鉄塔
34 送電線
35 発電に適した土圧の作用する場所
36 断層
37 地表
38 浮体
39 海
40 大陸プレート
41 バッテリー製造工場又は水素製造工場
42 海又は湖
43 水底ケーブル
44 土圧 
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
【図4】
【図5】
図5 
【図6】
図6 
【図7】
図7 
【図8】
図8 
【図9】
図9 
【図10】
図10 
【図11】
図11 


 地震、津波は巨大な自然現象であり、人力でこれを防止するのは不可能というのが通説である。しかるに、迫りくる南海トラフ巨大地震に対し、3.11大災害の再現を座して待つのも切ない話である。
 3.11大災害の原因は海洋プレートのもぐりこみにより発生する、陸に蓄積される圧縮歪によると言われている。このため、圧縮歪から電気エネルギーを取り出し、圧縮歪を緩和することにより、地震・津波の発生を防止するのがこの特許の狙いである。
 ただ、今までの防災に主点をおいた受動的地震・津波対策と一線を画す、この能動的地震・津波対策(徐災)の完成への道のりは果てしなく遠い。今回の特許は、簡単な実験により、土圧、水圧から電気エネルギーを取り出せること確認した基本特許である。
 先ずは、試作を通じて、土圧、水圧を効率よく電気エネルギーに変換する装置を実現する必要がある。変換に要するエネルギーが発生エネルギーより小さければ、独立電源としての活用が期待される。
 この特許の実用化に向けてトライする意向のある企業に、無償で本特許を譲渡します。
 また、徐災に関心のある方は、ご意見をお寄せ下さい。


sadatt@kmh.biglobe.ne.jp  佐田
ページtop へ