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【発明の名称】スピーカ装置
【特許権者】
【識別番号】516031462
【氏名又は名称】松原 拓
【住所又は居所】東京都大田区西六郷4丁目29−5−1105
【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
【発明者】
【氏名】松原 拓
【住所又は居所】東京都大田区西六郷4丁目29−5−1105
【参考文献】
【文献】特開2000−059879(JP,A)
【文献】特開2002−152884(JP,A)
【文献】特開平07−059192(JP,A)
【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/20 − 1/40
H04R 9/00 − 9/10
H04R 1/00 − 1/08
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状のボトムプレートの中央部に一体的に突設させたセンターポールを有するヨークと、該センターポールを囲むリング状のマグネットと、該センターポールを囲むリング状で、前記マグネットが前記ボトムプレートとの間に挟持固定され、前記センターポールの上端側外周面との間に磁気ギャップを形成する中央開口部周面を有するトッププレートとを備えた磁気回路と、前記磁気ギャップ内を移動可能に支持したボイスコイルボビンに巻回したボイスコイルと、一端が前記ボイスコイルボビンに、他端がフレームに振動自在に支持した振動板と、
前記磁気回路の後面部に固定した円環状のキャンセルマグネットと、前記キャンセルマグネットの後面部に固定し、前記キャンセルマグネットの磁気シールドを行うシールドカバーと、前記シールドカバーに固定し、前記磁気回路の前記振動板の振動に対する反作用を抑えるための前記磁気回路を構成する部材の共振周波数と異なる共振周波数を備えた制振部材と、前記ボトムプレートと前記シールドカバー間の空間に固定され前記ヨークの振動を抑える第2制振部材と、を備えたスピーカ装置。
【請求項2】
リング状のボトムプレートの中央部に一体的に突設させたセンターポールを有するヨークと、該センターポールを囲むリング状のマグネットと、該センターポールを囲むリング状で、前記マグネットが前記ボトムプレートとの間に挟持固定され、前記センターポールの上端側外周面との間に磁気ギャップを形成する中央開口部周面を有するトッププレートとを備えた磁気回路と、前記磁気ギャップ内を移動可能に支持したボイスコイルボビンに巻回したボイスコイルと、一端が前記ボイスコイルボビンに、他端がフレームに振動自在に支持した振動板と、
前記磁気回路の後面部に固定した円環状のキャンセルマグネットと、前記キャンセルマグネットの後面部に固定し、前記キャンセルマグネットの磁気シールドを行うシールドカバーと、前記シールドカバーに固定し、前記磁気回路の前記振動板の振動に対する反作用を抑えるための前記磁気回路を構成する部材の共振周波数と異なる共振周波数を備えた制振部材と、を備え前記制振部材は、前記ヨークとは異なる共振周波数の弾性体および前記ヨークの振動を抑える制振板から構成し、前記ボトムプレートと前記シールドカバーとの間に配置した前記弾性体と前記シールドカバーの後面部に配置した前記制振板とを、前記シールドカバーおよび前記弾性体とともに前記ボトムプレートに固定して構成したスピーカ装置。
【請求項3】
リング状のボトムプレートの中央部に一体的に突設させたセンターポールを有するヨークと、該センターポールを囲むリング状のマグネットと、前記センターポールを囲むリング状で、前記マグネットが前記ボトムプレートとの間に挟持固定され、前記センターポールの上端側外周面との間に磁気ギャップを形成する中央開口部周面を有するトッププレートとを備えた磁気回路と、前記磁気ギャップ内を移動可能に支持したボイスコイルボビンに巻回したボイスコイルと、一端を前記ボイスコイルボビンに、他端をフレームに振動自在に支持した振動板と、前記ボトムプレート上に設けられた弾性体と、前記弾性体上に設けられ、前記磁気回路の構成する部材の共振周波数と異なる共振周波数を有する制振板と、前記弾性体及び前記制振板を前記ボトムプレートに固定する固定手段と、を備えたスピーカ装置。
【請求項4】
リング状のボトムプレートの中央部に一体的に突設させたセンターポールを有するヨークと、該センターポールを囲むリング状のマグネットと、前記センターポールを囲むリング状で、前記マグネットが前記ボトムプレートとの間に挟持固定され、前記センターポールの上端側外周面との間に磁気ギャップを形成する中央開口部周面を有するトッププレートとを備えた磁気回路と、前記磁気ギャップ内を移動可能に支持したボイスコイルボビンに巻回したボイスコイルと、一端が前記ボイスコイルボビンに、他端がフレームに振動自在に支持した振動板と、前記センターポールの形成面とは逆面の前記ボトムプレート上に設けられた弾性体と、
前記弾性体上に設けられ、前記磁気回路の構成する部材の共振周波数と異なる共振周波数を有する制振板と、前記弾性体及び前記制振板を前記ボトムプレートに固定する固定手段と、を備えたスピーカ装置。
【請求項5】
リング状のボトムプレートの中央部に一体的に突設させたセンターポールを有するヨークと、該センターポールを囲むリング状のマグネットと、該センターポールを囲むリング状で、前記マグネットが前記ボトムプレートとの間に挟持固定され、前記センターポールの上端側外周面との間に磁気ギャップを形成する中央開口部周面を有するトッププレートとを備えた磁気回路と、前記磁気ギャップ内を移動可能に支持したボイスコイルボビンに巻回したボイスコイルと、一端が前記ボイスコイルボビンに、他端がフレームに振動自在に支持した振動板と、前記磁気回路の後面部の前記ボトムプレートに固定した円環状のキャンセルマグネットと、前記キャンセルマグネットの円環内で前記ボトムプレート上に設けられた弾性体と、前記弾性体上に設けられ、前記磁気回路の構成する部材の共振周波数と異なる共振周波数を有する制振板と、前記弾性体及び前記制振板を前記ボトムプレートに固定する固定手段と、を備えたスピーカ装置。
【請求項6】
リング状のボトムプレートの中央部に一体的に突設させたセンターポールを有するヨークと、該センターポールを囲むリング状のマグネットと、該センターポールを囲むリング状で、前記マグネットが前記ボトムプレートとの間に挟持固定され、前記センターポールの上端側外周面との間に磁気ギャップを形成する中央開口部周面を有するトッププレートとを備えた磁気回路と、前記磁気ギャップ内を移動可能に支持したボイスコイルボビンに巻回したボイスコイルと、一端が前記ボイスコイルボビンに、他端がフレームに振動自在に支持した振動板と、前記磁気回路の後面部に固定した円環状のキャンセルマグネットと、前記キャンセルマグネットの後面部に固定し、前記キャンセルマグネットの磁気シールドを行うシールドカバーと、前記シールドカバー上に設けられた弾性体と、前記弾性体上に設けられ、前記磁気回路の構成する部材の共振周波数と異なる共振周波数を有する制振板と、前記弾性体及び前記制振板を前記シールドカバーに固定する固定手段と、を備えたスピーカ装置。
【請求項7】
前記固定手段は、ネジである、請求項3乃至6のいずれか一項記載のスピーカ装置。
【請求項8】
前記弾性体は、ゴム製である、請求項2乃至7のいずれか一項記載のスピーカ装置。
【請求項9】
前記制振板は、金属製である、請求項2乃至7のいずれか一項記載のスピーカ装置。
【請求項10】
前記制振板は、セラミック製である、請求項2乃至7のいずれか一項記載のスピーカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、スピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スピーカユニットの振動体の振動により音波を発生すると同時にそれに伴う余剰振動が発生してスピーカ装置の音質を損ねる要因となっている。そこで、スピーカユニットのフレーム表面部分とスピーカキャビネットを構成する内外面に粘弾性体層を形成して音質損失の要因を除去することで、忠実な再生音を得ることが考えられている。
【0003】
しかしながら、スピーカ装置は磁気回路とボイスコイルの磁気反発、吸引作用により電気信号を空気振動に変換するものであるが、作用点である振動板が磁気回路の反作用により正確な空気振動に変換できない、という課題がある。
【0004】
また、スピーカユニットのフレーム表面部分とスピーカキャビネットを構成する内外面にわたる広い面積に粘弾性体層を形成する必要から、作業時間と材料コストが増加するにも関わらず効果が少ない、という課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−175472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、磁気回路を構成するヨークの反作用を抑えてより忠実な再生を図ることのできるスピーカ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のスピーカ装置は、リング状のボトムプレートの中央部に一体的に突設させたセンターポールを有するヨークと、該センターポールを囲むリング状のマグネットと、該センターポールを囲むリング状で、前記マグネットが前記ボトムプレートとの間に挟持固定され、前記センターポールの上端側外周面との間に磁気ギャップを形成する中央開口部周面を有するトッププレートとを備えた磁気回路と、前記磁気ギャップ内を移動可能に支持したボイスコイルボビンに巻回したボイスコイルと、一端が前記ボイスコイルボビンに、他端がフレームに振動自在に支持した振動板と、前記磁気回路の後面部に固定した円環状のキャンセルマグネットと、前記キャンセルマグネットの後面部に固定し、前記キャンセルマグネットの磁気シールドを行うシールドカバーと、前記シールドカバーに固定し、前記磁気回路の前記振動板の振動に対する反作用を抑えるための前記磁気回路を構成する部材の共振周波数と異なる共振周波数を備えた制振部材と、前記ボトムプレートと前記シールドカバー間の空間に固定され前記ヨークの振動を抑える第2制振部材と、を備えた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】スピーカ装置の実施形態1を示す断面図である。
【図2】図1要部の分解斜視図である。
【図3】磁気回路を構成する部材の共振周波数について説明するための図である。
【図4】入力信号を示す図である。
【図5A】入力信号21.5Hz時の音圧レベルについて説明するための図である。
【図5B】入力信号172Hz時の音圧レベルについて説明するための図である。
【図5C】入力信号1.09kHz時の音圧レベルについて説明するための図である。
【図5D】入力信号2.19kHz時の音圧レベルについて説明するための図である。
【図5E】入力信号4.38kHz時の音圧レベルについて説明するための図である。
【図5F】入力信号17.5kHz時の音圧レベルについて説明するための図である。
【図6】スピーカ装置の実施形態2を示す断面図である。
【図7】スピーカ装置の実施形態3を示す断面図である。
【図8】スピーカ装置の実施形態4を示す断面図である。
【図9】スピーカ装置の実施形態5を示す断面図である。
【図10】スピーカ装置の実施形態6を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
(実施形態1)
図1は、スピーカ装置の実施形態1を示す図、図2は図1要部を分解して示す斜視図である。
【0014】
図1に示すように、スピーカ11は、フレーム12と、磁気回路13と、ボイスコイル14と、振動板15と、ダンパ16と、エッジ17と、ボイスコイルボビン19とを備えている。図1は、振動板15を上方に向けた状態を示す。
【0015】
フレーム12は、スピーカ11全体の支持部材となる。磁気回路13は、フレーム12の図中下方に配置される。ボイスコイル14は、ボイスコイルボビン19に回巻され図中上下方向に振動する。振動板15は、ボイスコイル14の動作に伴って振動する。ダンパ16は、ボイスコイル14をフレーム12に支持するための支持体となる。エッジ17は、振動板15をフレームに保持する。
【0016】
フレーム12は、上端が開放した例えば略円錐台形状を有しており、径小となる下方側の径方向中心には開口部が形成されている。フレーム12は、その下端部近傍に径方向内方に向かって水平に窄まる下水平部121を備えている。フレーム12は、その上端部に径方向外方に向かって水平に開放する上水平部122を備えている。下水平部121および上水平部122は全周に亘って形成されている。
【0017】
磁気回路13は、ヨーク131と、マグネット132と、トッププレート133とから構成されている。ヨーク131は、磁性材料からなる磁気回路13の基盤部材であり、マグネット132の後面に固定されている。
【0018】
ヨーク131は、円板状のボトムプレート131aとこのボトムプレート131aの中心部から前方へ突出されたセンターポール131bとが一体形成して構成されている。センターポール131bは、例えば、円柱状に形成されている。ヨーク131は、ボトムプレート131aの前面がドーナッツ状のマグネット132の後面と固定されている。
【0019】
トッププレート133とマグネット132とヨーク131は、中心軸が一致された状態で結合されている。ヨーク131は、例えば、センターポール131bの前端部がトッププレート133から前方へ若干突出した状態で配置されている。トッププレート133とセンターポール131bの間の空間は、磁気ギャップ18として形成されている。
【0020】
ヨーク131のセンターポール131bには、ボイスコイルボビン19がセンターポール131bの軸方向へ移動可能に支持されている。ボイスコイルボビン19は円筒状に形成され、ボイスコイルボビン19の後端側における外周面にボイスコイル14が巻き付けられている。ボイスコイル14は、少なくとも一部が磁気ギャップ18に非接触状態で配置されている。ボイスコイル14が磁気ギャップ18に配置されることにより、トッププレート133とマグネット132とヨーク131とボイスコイル14によって、磁気回路13が構成される。
【0021】
振動板15は、例えば、コーン紙素材で円錐台状に形成されており、この振動板15が振動することによって音として放出される。振動板15は、その中央が開放されるとともに、開放した開口縁部には後方に向かって全周に亘って延出する対向壁15aが設けられている。そして、対向壁15aを、ボイスコイルボビン19の側壁に接触させ、接着剤を滴下することにより、振動板15の内周部がボイスコイルボビン19に接着固定されている。振動板15の前方の外周端15b側は、エッジ17の内周端17aと接着固定されている。エッジ17はリング状の形態を有しており、その断面は弓なりに屈曲した状態に形成されている。そして、エッジ17の外周端17bがフレーム12の上水平部122に接着固定されることで、振動板15がフレーム12に支持される構成となる。
【0022】
また、ボイスコイルボビン19の上方にはセンターキャップ20が配置されている。センターキャップ20は略ドーム状の形態を有しており、ボイスコイルボビン19を覆うように振動板15の内側に配置されている。センターキャップ20は、塵埃がボイスコイル14や振動板15の内部に入り込むことを防止する役目を果たす。
【0023】
ダンパ16は、同心円状にプレス成形された略リング状の形態を有するコルゲーションダンパであり、ボイスコイル14とフレーム12との間に全周に亘って介在している。具体的には、ダンパ16の内周部はボイスコイルボビン19の外周面における上下方向略中央部に固定され、ダンパ16の外周部はフレーム12の下水平部121に接着固定されている。
【0024】
マグネット132が結合されたボトムプレート131aの反対面である後面部には、制振部材21が固定されている。制振部材21は、例えばブチルゴム製の弾性体21aおよび例えば真鍮製の制振板21bから構成されている。制振板21bは、弾性体21aを介してボトムプレート131aに、ネジ孔22を介して固定手段であるネジ23を用いて締め付けることより固定されている。
【0025】
弾性体21aとしては、ブチルゴムを例に挙げたが他にシリコンゴム等が考えられる。制振板21bとしては、金属である真鍮を例に挙げたがステンレスなどでよい。要は、ヨーク131の振動を抑える制振機能を備える材料であればよく、セラミック板などの非金属であっても構わない。
【0026】
ここで、ヨーク131は共振周波数f1を有し、弾性体21aは共振周波数f2を有し、制振板21bは共振周波数f3を有する。これら共振周波数f1−f3の関係がf1>f2<f3の場合を考える。
【0027】
図3は、ヨーク131と弾性体21aと制振板21bのそれぞれのQ値(共振点)と共振周波数との関係を模式的に示す図である。
【0028】
図3では、ヨーク131の共振周波数f1のQ値をQ(f1)、弾性体21aの共振周波数f2のQ値をQ(f2)、制振板21bの共振周波数f3のQ値をQ(f3)とし、これら共振周波数f1−f3が持つQ値、Q(f1)−Q(f3)を合成した状態したQ値を、Q(f4)として示す。
【0029】
制振部材21がない状態の振動板15は、ヨーク131のもつ共振周波数f1の磁気回路13により駆動することになる。したがって、共振周波数f1の帯域の入力信号がボイスコイル14に入力信号が供給された場合は、ヨーク131がボイスコイル14の反作用の動きをする。この反作用は、ヨーク131がボイスコイル14の動きを吸収することになる。これが音質を損ねる要因と考えられる。
【0030】
これに対し、制振部材21をヨーク131に固定した場合の磁気回路13に入力信号が供給された場合を考える。この場合のヨーク131、弾性体21a、制振板21bの部材の各共振周波数f1−f3は、図3のQ(f4)に示すように特定の共振周波数帯の発生をなくすことができる。
【0031】
このように、ヨーク131とは異なる共振周波数を有する制振部材21を重ねて固定し、ヨーク131の共振周波数f1を、共振周波数帯のないf4の状態にする。これにより、ヨーク131のもつ共振周波数f1の振動を抑え、振動板15は入力信号に基づいた忠実な動きが実現可能となる。
【0032】
図4、図5A−図5Fを参照し、制振部材21がある場合とない場合の磁気回路13による実施形態1と比較例との音響特性効果を対比して説明する。
【0033】
図4は、磁気回路13のボイスコイル14に供給される矩形波の入力信号例を示す。入力信号の縦軸は音圧レベルを示し、横軸は角度を示す。
【0034】
図5Aは入力信号21.5Hz時、図5Bは入力信号172Hz時、図5Cは入力信号1.09kHz時、図5Dは入力信号2.19kHz時、図5Eは入力信号4.38kHz時、図5Fは入力信号17.5kHz時におけるそれぞれの音圧レベルについて説明するための図である。なお、図5A−図5Fの破線は制振部材21のない場合を示し、実線は制振部材21を設置した場合を示す。
【0035】
図5A−図5Fの測定結果は、振動板15が7cmφの外磁型スピーカとスピーカから250cm離れた位置に設置した音圧レベルをマイクロホンで取得したものである。また、制振部材21の弾性体21aとしては、厚みが1mmのブチルゴムを使用した。制振部材21の制振板21bとしては、厚みが10mmで、径がボトムプレート131aの振動に影響あるセンターポール131bの径よりも大きい真鍮を使用した。ヨーク131は、例えば2kHz付近に固有の共振周波数f1を有する材料を使用した。
【0036】
そして、入力信号が21.5Hz、172Hz、1.09kHz、2.19kHz、4.38kHz時、17.5kHz時の各周波数の音圧レベルを測定した。
【0037】
測定した結果、入力信号21.5Hz時の音圧レベルは、制振部材21があるなしには実質的な差は見られない。同じく、入力信号17.5kHz時の音圧レベルは、制振部材21があるなしには実質的な差は見られない。
【0038】
これに対し、ヨーク131の共振周波数f1の2kHz付近である、入力信号1.09kHzの図5C、2.19kHzの図5D、4.38kHzの図5Eの音圧レベルについて確認する。図5C−図5Eでは、図中(a)−(c)に示すように、制振部材21がない破線の音圧レベルに比して、制振部材21がある実線の音圧レベルが向上していることが分かる。すなわち、制振部材21は、共振周波数f1の2kHz付近での振動板15に対するヨーク131の反作用を抑えることが可能となる。
【0039】
この実施形態は、共振周波数f1を有するヨーク131に、共振周波数f1とは異なる共振周波数f2、f3の部材を固定したことにより、特定の共振周波数を持たないf4とした。これにより、振動板15は、特定周波数帯域における反作用を抑えることができ、より正確な空気振動に変換可能となる。
【0040】
(実施形態2)
図6は、スピーカ装置にかかる実施形態2について説明するための断面図である。実施形態1と同一の構成要素には同一の符号を付して説明する。以降の実施形態においても同様とする。
【0041】
この実施形態2は、ヨーク131の後面部に、円環状のキャンセルマグネット61が取付けられたスピーカ装置に、制振部材21を固定されたものである。キャンセルマグネット61は永久磁石である。
【0042】
キャンセルマグネット61は、駆動用のマグネット132と略々同一の大きさを有して形成され、マグネット132に対して逆の磁極方向を有している。すなわち、マグネット132の磁極方向が、例えば前面側がN極で後面側がS極であれば、キャンセルマグネット61の磁極方向は、前面側がS極で後面側がN極となっている。そして、キャンセルマグネット61の後面部には、例えば接着によりシールドカバー62が固定されている。
【0043】
シールドカバー62は、マグネット132とキャンセルマグネット61を覆っている。シールドカバー62は、マグネット132とキャンセルマグネット61による磁気の影響を抑えることによりスピーカボックスの小型化に寄与するものである。
【0044】
シールドカバー62は、磁性材料により、後壁部62aとこの後壁部62aの周囲部より前方側に向けて突設された周壁部62bとを備え、前方側が開放されて形成されている。シールドカバー62は、後壁部62aの前面部をキャンセルマグネット61の後面部に固定され、周壁部62bの前端部をトッププレート133の周縁部に近接させている。これにより、シールドカバー62は、マグネット132ヨーク131およびキャンセルマグネット61を覆っている。
【0045】
キャンセルマグネット61は、マグネット132の漏洩磁束を減少させ、磁気ギャップ18における磁束密度を増大させることができる。
【0046】
キャンセルマグネット61が固定されたシールドカバー62の反対面には、制振部材21が固定されている。制振部材21は、弾性体21aおよび制振板21bから構成されている。制振板21bは、例えばブチルゴム製の弾性体21aを介してシールドカバー62に、ネジ23で締め付け固定されている。
【0047】
ここで、制振部材21なしの振動板15は、共振周波数がf1を持つヨーク131の磁気回路13により駆動することになる。したがって、共振周波数f1の帯域の入力信号がボイスコイル14に入力信号が供給された場合は、ヨーク131がボイスコイル14の反作用の動きをする。この反作用は、ヨーク131がボイスコイル14の動き吸収することになる。この場合は、振動板15が磁気回路13の反作用により正確な空気振動に変換できず、忠実な再生ができなくなってしまう。
【0048】
これに対し、制振部材21をシールドカバー62に固定した場合の磁気回路13に入力信号が供給された場合を考える。この場合のヨーク131、弾性体21a、制振板21bの部材の各共振周波数f1−f3は、図3のQ(f4)に示すように特定の共振周波数帯の発生をなくすことができる。ボトムプレート131aと制振部材21との間には、キャンセルマグネット61とシールドカバー62が固定されている。しかし、キャンセルマグネット61を介して伝達されたボイスコイル14の振動に対するヨーク131の反作用は、弾性体21a、制振板21bによって抑えることができる。
【0049】
この実施形態では、シールドカバー62に弾性体21aを介して制振部材21を固定した。これにより、キャンセルマグネット61を備えたスピーカ装置にあっても、振動板15の反作用によるヨーク131の振動を抑えて、音圧レベルの低下を抑えることが可能となる。
【0050】
(実施形態3)
図7は、スピーカ装置にかかる実施形態3について説明するための断面図である。
【0051】
この実施形態は、ヨーク131のボトムプレート131aとシールドカバー62の後壁部62aとの空間71にも、例えばブチルゴム製の第2制振部材72を配置した。第2制振部材72は、ボトムプレート131aと後壁部62aにより圧接された状態で固定されている。
【0052】
この実施形態では、シールドカバー62に弾性体21aを介して制振部材21が固定されている。さらに、ボトムプレート131aと後壁部62a間に第2制振部材72が固定されている。
【0053】
ボトムプレート131aと後壁部62aに空間71がある状態では、この空間71に位置するボトムプレート131aの反作用は、抑えられていない。そこで、空間71の部分に第2制振部材72を固定した実施形態3は、空間71に位置するボトムプレート131aの振動を抑えることが可能となる。
【0054】
これにより、キャンセルマグネット61を備えたスピーカ装置にあっても、振動板15の反作用によるヨーク131の振動をより抑えて、音圧レベルの低下を抑えることが可能となる。
【0055】
なお、図7のネジ23は、シールドカバー62にねじ込まれているが、少なくとも一部のネジ23は、ボトムプレート131aにねじ込むことにより、第2制振部材72による制振効果をより確実なものとすることができる。
【0056】
(実施形態4)
図8は、スピーカ装置にかかる実施形態4について説明するための断面図である。
【0057】
この実施形態は、円環状のキャンセルマグネット61の開孔61a部分に、シールドカバー62の後壁部62aの突起部62cが当接する構成とした。突起部62cは、例えばプレス加工によりシールドカバー62と一体的に形成されている。突起部62cとボトムプレート131aとの間には弾性体21aが固定されている。突起部62cにより形成された凹み部分には、制振板21bと一体形成の凸部21b1が嵌合されている。
【0058】
制振板21bは、ネジ23をヨーク131のボトムプレート131aに対してねじ込み固定されている。このねじ込みにより弾性体21aは、ボトムプレート131aと突起部62c間に、圧接された状態で固定されている。
【0059】
この実施形態では、キャンセルマグネット61を備えながら、ボトムプレート131aに直接、制振部材21が固定されている。したがって、制振部材21はキャンセルマグネット61なしの構成のスピーカと同じようにヨーク131の振動を抑えて、音圧レベルの低下を抑えることが可能となる。
【0060】
なお、制振部材21の弾性体21aは、突起部62cとボトムプレート131aとの間に固定したが、突起部62cと制振板21bの凸部21b1との間に固定してもよい。逆に突起部62cと制振板21bの凸部21b1との間だけでも構わない。要は、振動板15の反作用によるヨーク131の振動を抑えることができればよい。
【0061】
(実施形態5)
図9は、スピーカ装置にかかる実施形態5について説明するための断面図である。
【0062】
この実施形態は、ヨーク131のボトムプレート131aとシールドカバー62の後壁部62aと間に、この間を埋める厚みを有する弾性体21aが配置されている。すなわち、実施形態4の制振板21bを取り除き、シールドカバー62を制振板21b2として兼用したものである。
【0063】
この実施形態では、弾性体21aと制振板21b2とによる制振部材21が、ヨーク131の反作用を抑えることで、音圧レベルの低下をより抑えることが可能となる。また、シールドカバー62を制振板21b2と兼用できることから、部品点数を削減することができる。
【0064】
(実施形態6)
図10は、スピーカ装置にかかる実施形態6について説明するための断面図である。
【0065】
この実施形態は、キャンセルマグネット61用のシールドカバー62が除去されている。さらに、弾性体21aと制振板21b2とによる制振部材21は、キャンセルマグネット61の円環状のキャンセルマグネット61の開孔61aからヨーク131のボトムプレート131aに固定されている。制振部材21は、キャンセルマグネット61の内壁に当接しない大きさで、かつセンターポール131bよりも大きい径で形成されている。制振部材21の材料や厚み等は、例えば上記と同様のものを使用する。
【0066】
制振部材21は、ボトムプレート131aに固定されていることから、キャンセルマグネット61を使用しながらも、振動板15の反作用によるヨーク131の振動を抑えて、音圧レベルの低下を抑えることが可能となる。
【0067】
上記の各実施形態では、ヨークと制御部材の共振周波数は異なる材料を例に挙げたが、ヨークと制御部材の間に、これらと異なる共振周波数の弾性体を介在させた構成であれば、ヨークと制御部材は同じような共振周波数の材料であっても構わない。
【0068】
また、弾性体は、ブチルゴム、シリコンゴムを例に挙げたが、例えばこれらの材料を用いた自己融着性絶縁テープであっても構わない。なお、自己融着性絶縁テープは、テープを重ねた時、重なった部分にほんの少し空間ができ、時間が経つにつれ粘着層のブチルゴムやシリコンゴムが少しずつ流れてほんの少しできた空間を埋め尽くしてしまう性質の材料である。外磁型のスピーカ装置を例に挙げたが、内磁型のスピーカ装置であっても構わない。
【0069】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
11 スピーカ
12 フレーム
13 磁気回路
131 ヨーク
131a ボトムプレート
131b センターポール
132 マグネット
133 トッププレート
14 ボイスコイル
15 振動板
16 ダンパ
17 エッジ
18 磁気ギャップ
19 ボイスコイルボビン
21 制振部材
21a 弾性体
21b,21b2 制振板
22 ネジ孔
23 ネジ
61 キャンセルマグネット
62 シールドカバー62
71 空間
72 第2制振板
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5A】
図5A 
【図5B】
図5B 
【図5C】
図5C  
【図5D】 
図5D 
【図5E】
図5E  
【図5F】 
図5F 
【図6】 
図6 
【図7】 
図7 
【図8】 
図8 
【図9】 
図9 
【図10】 
図10 

 この技術はスピーカー装置の磁気回路部の制振技術です。
作用、反作用の反作用側を強固にすることにより原音の再現性を実現。
 スピーカーの周波数特性はフラットなはずなのに ” こもった感じがする、低音に物足りなさを感じる、アタック音が物足りない ” といったお悩みを解消します。

特徴
・ 音量を下げても低域及び高音部の不足、アタック音の減少を感じさせない
・ 森、海などの自然音も違和感なく再生
・ 言葉も聞き取りやすくなる

用途
・ 高級スピーカー、ミニコンポ、テレビ、ヘッドフォン、車載スピーカー、電話、スマートフォン、AIスピーカー、ラジオ、楽器用アンプ、電子ピアノ、補聴器等
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