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土木・建設
 
【発明の名称】土間均し鏝の均し板の可動機構
【出願人】
【識別番号】592106306
【氏名又は名称】音瀬 春三
【住所又は居所】新潟県阿賀野市笹岡1042番地
【発明者】
【氏名】音瀬 春三
【住所又は居所】新潟県阿賀野市笹岡1042番地
【要約】
【課題】
土間均し鏝を川いて、打設後のコンクリート床面を均す時には、該鏝の柄を握り、これを前進と後進させて均す必要があるが、従来の土間均し鏝では、コンクリート床面を均す均し板に柄が一定の角度で固定されて取り付けられているため、使用に当たっては、均し角形成のための柄の上下操作が必要となり、このため、作業者はその度毎に腰や腕を用いて、柄を上下する身体負担(煩労・疲労等)を強いられていた。また、作業性の悪さも否めなかった。
【解決手段】
土間均し鏝において、操作のために握る柄を左右回動ができるようにし、この柄の回動を、伝動機構としてのロッドを介して、均し板が取り付けられている連結板に伝え、これにより、均し板がコンクリート床面を均す均し角を形成し、スムーズな均しができるようにする。これにより、作業者の身体的負担が少なくなり、作業性も向上する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設後のコンクリート床面を均す土間均し鏝において、手首の回る範囲内での左右回動可能且つ抜脱不能に柄の前部が嵌挿されている円筒状の取付筒を形成するとともに、該取付筒の前部には枢軸と枢軸承を介して連結板の前部を取り付けて、枢軸を支軸とした連結板の上下回動を可能とし、また該連結板の後方部の所要点とその上方に位置する柄の所要点とを繋ぐ伝動機構を形設し、且つコンクリート床面を均す均し板の上面には、取り付けを可能とする部材を介して前述の連結板を取り付け、これにより、連結板と一体で均し板が可動し、均し角を形成するものとした土間均し鏝における均し板の可動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明は、コンクリートによる床工事(土間工事ともいう)に携わる作業者が、打設後のコンクリート床面を均す作業において、握っている土間均し鏝の柄を左右に回動するだけで均し板を動かし、コンクリートの床面にたいする均し板の適正傾斜角度(以下、均し角という)を形成し、床面をならすことができるようにした土間均し鏝における均し板の可動機構に関する。
【背景技術】
この分野における従来の土間均し鏝は、主として前後幅を略10〜15cm、長手方向の長さを50〜100cm余とする略長方形の金属薄板を均し板とし、その中央部に一定の傾斜をもたせて柄を固着したもの(図5及び[0032]参照)であった。
作業者は上記の柄を操作し、均し板の前進と後進とを繰り返してコンクリート床面を均すものであるが、この時、図6(A),(B)で示すように、前進時には、均し板の前方部が上がり後方部が下がり、後進時には、後方部が上がり前方部が下がるというように、均し板とコンクリート床面との間に均し角が形成されなければならない。
そのため、従来の土間均し鏝においては、前進と後進の度毎に、均し角を得るために、柄を持つ腕(手)を上下させたり、膝を曲げたり、腰を上下させなければならず、これが身体的負担(煩労,疲労)や作業性の低下の原因となっていた。この問題は柄の長い土間均し鏝ほど柄を握る点の上下差が大となり、用いにくいものとなっていた(図6参照)。
本発明と同様、上記問題の解決を図ろうとする特許文献には、次のものがある。
【特許文献】
実公平3−78838
上記特許文献の考案は、その記載を見ると、目的では本発明と類似するところがあるものの、構成及び効果では異なるものである。この考案について若干考察すれば、この考案は観念的で、且つ多機能を求めるがために複雑な構成のものとなり、その目的が達成できない構成となっているところがある。これについてその一例を上げれば、ブラケットと円錐部の連携機構が、前進作業時には機能せず、均し作業ができない欠点があり、考案は完成していないものと考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
上記の問題を鑑みて、本発明では、その構成が簡易で且つ安価で実施でき、その上、容易且つ確かに均し角が形成できる均し板の可動機構を確立して、従来の土間均し鏝に見られた使用時における身体的負担を軽減し、その上作業性に優れた土間均し鏝の均し板の可動機構の実現を課題とする。
また、本発明では、上記の外に、身体に負担とならない姿勢のままで均し角を形成して作業ができる手段についても課題とした。
【課題を解決するための手段】
その長手方向と直交し、且つ直状な制御溝孔を形設した円筒状の取付筒を形づくるとともに、既に上記取付筒に嵌挿の柄に上記制御溝孔を通して制御ピンを立設する。この制御溝孔と制御ピンの機構により、柄の左右回動範囲が限定されるとともに、柄の抜脱も防止される。
次に、共に鉄鋼製の上記取付筒と連結板の前部どうしを枢軸と枢軸承けを介して溶接により枢着し、連結板は上記枢軸を支軸として上下回動が可能である構成にする。
さらに、取付筒に近接の柄の所要点と、その下方に位置する連結板の対応所要点とに、ロッド軸承けをそれぞれ配設し、これらにロッドを回動可能に軸着して柄と連結板を連結し、伝動機構を形成する。これにより、柄の左右回動を連結板の上下回動に変換することが可能となり、連結板に取り付けられた均し板では、均し角が形成されることになる。
また、打設後のコンクリート床面を均す均し板には、弾性を有する薄手のステンレス鋼板又は鉄鋼板を用い、この長手方向の上部には、均し板補強のための金属又は木材による補強部材を取り付ける。また、該補強部材は、前記連結板への取付を仲介する部材としても用いる。
以上により、本発明は、作業者による柄の左右回動が、伝動機構であるロッド等によって連結板と一体の均し板を可動させ、これにより均し角を形成する。
なお、上記においては、伝動機構にロッド等を用いた場合を示しているが、これに限らず、後述のように、ラックとピニオンを用いてなす手段も可能である。
なお、本発明の土間均し鏝の均し板の可動機構は、柄の左右回動で均し板が均し角を形成するものであるが、その均し角の大きさは、取付筒に形設の制御溝孔内の制御ピンの移動範囲で変えることができるので、コンクリートの床面の凹凸状況や柄の長さ等を勘案して、均し角を形成するための柄の左右回動を行えばよい。
【発明の効果】
本発明における二つの伝動機構と連結板の上下可動の機構は、簡易な機構であるにも拘わらず、本発明が目指す課題解決の根幹を成すものであり、このような構成は、従来の土間均し鏝や上記の特許文献の考案においても、その類を見ない構成と作用・効果を有するものである。
特に、上記の二つの伝動機構は、その構成は簡単であっても、枢軸を支軸とした連結板の上下可動の機構と相俟って、手首を回す範囲内の僅かな柄の左右回動を、同時に連結板(均し板)に伝達して、均し角を形成する機構は、本発明の大きな特長である。
また、本発明では、[0012]で示したように、均し板での均し角の大きさを、柄の左右回動幅によって変えることができるので、コンクリート上面(床面)の凹凸具合や柄の長さ等を見ながら、事前に最適な均し角を形成することができる。また、制御溝孔を取付筒の長手方向に直交させて形成しているので、柄の左右回動では、手首を回す範囲内でただ横方向に軽く動かすだけでよく、身体的な負担も小さく、作業者は、ただ前進と後進の均し作業だけに専念でき、その利点は大きい。従って、作業性も優れたものとなる。
また、本発明は、従来のものに見られた前進と後進の度毎に行う膝の屈伸や腰と腕を上下する身体的負担(煩労,疲労など)から作業者を解放するので、作業者は略直立の姿勢のままで、片手のみでも楽に作業をすることができる。これは、本発明の大きな効果である。また、本発明の構成は簡易であるので、その実施に当たっても低コストである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図を参照して説明する。なお、図及び説明で用いる符号は、同じ機能を持つものには同じ符号をつけている。また、本発明を構成する部材は、断りのないかぎり、鉄鋼材又はステンレス鋼材を材料としている。
図1は、本発明の実施での最良の形態を示すもので、図における1は作業者が手で握り鏝を操作する柄である。柄1は円筒で、その長さは任意であるが、先端部の略10〜12cmは円筒状の取付筒2に嵌挿されている。
また、前記取付筒2は、その長さを略10〜12cmとし、且つ該取付筒2にはその長手方向と直交し、且つその長さを手首を回してつくれる範囲内の6cm程度とする制御溝孔3を貫通させて形成し、該制御溝孔3内を柄の左右回動に伴って動く制御ピン4を取付筒2に嵌挿の柄1に螺挿により立設する。また、これにより、柄1の取付筒2からの抜脱が防止され、且つ制御溝孔3内の柄1の左右回動を自在なものにする。
次に、取付筒2の先端(前方)下部に枢軸5を溶着するとともに、該枢軸5には円筒状の枢軸承け6を嵌め、該枢軸承け6は、連結板7の前方部に溶着する。これにより、連結板7は枢軸5を支軸とした上下回動が可能なものとなる。
連結板7の形状は任意であるが、ここでは前部を上底、後部を下底とする台形状にして実施するものを示している。またその大きさも任意であるが、上底12cm、下底15cm、前後幅12cmとし、素材は、厚さ0.23〜0.36cmの鉄鋼板が望ましい。
更に、柄1と連結板7を繋ぐ伝動機構として、連結板7の後部周縁域にロッド軸承け8bを溶着するとともに、その上部となる柄1の対応部位にロッド軸承け8aを溶着(柄1がアルミニウムの場合は柄に鉄鋼材を巻くか、取り付けてからこれに溶着)し、該両ロッド8a,8bに止ピン11を介してロッド9を回動可能に取り付ける。なお、上記のロッド9は、厚みはあるが幅の少ない短冊状板又は棒で構成し、その両端部には止ピン11を挿通する軸孔を設ける。
なお、軸着するロッド9とロッド軸承け8a,8bの間に、若干遊び(間隙)があることが、動きのスムーズさのためにのぞましい。
打設されたコンクリート床面と対峙し、これを均す均し板10は、厚さを1mm程度とし且つ弾性を有するステンレス鋼板又は鉄鋼板を略長方形にし、その長手方向が左右方向になるように用い、またその長手方向の中央線を基準に、補強部材12を取り付ける。該補強部材12は使用時における均し板10の屈曲のし過ぎを抑えるためのもので、ここでは断面がL字状の鉄鋼材による補強部材12を均し板10の上面に皿ボルト23とナット24により取り付けている。
最後に、均し板10に取り付けられた補強部材を介して前記連結板7と均し板10を溶接により溶着し、本発明の土間均し鏝の均し板の可動機構の構成は完成をみる。
なお、図2は、図1について参考のために示した側面図である。
次に、上記本発明の実施の最良の形態に拘わる作用について説明する。
本発明は、図1でしめすイ,ロの柄の左右回動を手元で行えば、柄1は制御溝孔3の幅の範囲(約6cm)内で左右に回動し、この回動がロッド9を介して連結板7に伝達され、これにより、連結板7に取り付けられた均し板10によって、均し角が形成される。
従って、上記の形態では、作業者が握る手元の柄を、手首の回る程度のわずかな左右回動(往復約6cm)をするだけで、均し角の形成が可能となる。
本発明では、上記の形態の外、その構成の一部を変えて成る別な形態によっても実施が可能である。以下、その内の2例を実施例として説明する。
【実施例1】
上述の実施のための最良の形態では、伝動機構として、ロッド9及びロッド軸承け8aと8bを用いる機構について説明をしたが、これに代えて、図8で示すようなピニオン13を柄1に配設し、また上記ピニオン13に対応の位置となるその下部の連結板7上面にラック軸承け15を設け、該ラック軸承け15に、ピニオン13の歯と整合に歯合させたラック14を軸着する。
以上の構成により、柄1の左右回動がピニオン13の左右回動となり、これがラック14の上下動となって連結板7の上下動をつくり、これにより、前述のロッド9等による場合と同様、均し板10によって均し角が形成されることとなる。
また、上記の操作において、ラック14に揺動が生じないように、鉄鋼材によるガードバー16を溶接により取付筒2に設置する。なお、ラック14とピニオン13の歯合においては、両者の間に若干遊びがあるように構成すると、回動範囲の全てにおいてスムーズな動きをつくることができる。
上記のラック軸承け15は、連結板7に溶接により溶着し、ピニオン13は、柄1が鉄鋼材ではなくアルミニウム等であるときは、柄1に鉄鋼材を取り付け(巻き付け)て、これに溶着する。しかし、柄1にきっちりと嵌まる鋼管を所要幅だけ切断し、これにラック14の歯と整合の歯を形成して柄1に嵌めてネジで留め、ピニオン13として用いることも可能である。
なお、上記実施例1は、前述の実施のための最良の形態よりも、実施コストは若干大きくはなるが、柄1の操作性は優れたものとなる。
【実施例2】
図4は、図1における連結板7と均し板10の連結の仕方を変え、着脱も可能とした機構の均し板の可動機構に関するものである。
即ち、連結板7の前方部を、下方にU字状に曲折してU字曲折部17を構成するとともに、後方部の下底に相当する辺の中点に、ボルト挿通のための切欠孔18を形成する。
また、均し板10上面に設けた補強部材12の上部には、前述の連結板7と等しい大きさと形状の係合板19を連結板7と対応するように溶着し、且つ連結板7の切欠孔18と対応の係合板19の位置に、ボルト軸孔20を形設し、これに蝶ナット22付きボルト21を常設しておく。
使用に際しては、均し板10が取り付けられた上記の係合板19の前部(上底に相当する辺)を、連結板の7のU字曲折部17に挿入しながら、ボルト21の下部を切欠孔18に挿設し、その上部の蝶ナット22を締め、これにより係合板19と連結板7を一体に結合し、柄1の左右回動が均し板10の均し角の形成となるようにする。
該実施例2で示す本発明は、連結板7と係合板19を着脱可能に連結して、均し板10を機能させる均し板の可動機構であるが、この実施例2の機構では、上記の可動機構のみてなく、着脱機構により、現場の状況に即応する均し板に即座に取り換えて用いることが可能となるので、該実施例2は、本発明の課題にも合う作業性よいものとなっている。
次に、参考のために示す図である図5と図6(A),(B)について簡単に説明する。
図5は、従来から用いられている土間均し鏝で、柄は傾斜角が固定されて、均し板10の補助部材12に取り付けられている。柄1の傾斜角は25°程度で、その長さは、ほとんどが2m程度である。その理由は、図6(A),(B)からも分かるように、柄が2mを越えると、柄の握る点の高さが著しく高くなったり、著しく低くなったりして、操作がしにくくなり、身体的な負担が大きくなりすぎるからである。
図6は、図5で示す土間均し鏝における柄1の固定角度および均し角と柄1を握る点の高さについて説明する図である。
図6(A)は、均し板(ニ)に25°の固定角で2mの柄1を付け、コンクリート床面を前進して均す場合の図であるが、この時の地表(床面)からの柄1の高さ(ト)は約50cmとなるので、作業者は、柄1を握る高さを約50cmまで下げなければならず、作業はしにくいものとなる。
図6(B)は、柄1を後進させて用いる場合の図で、(A)と同じく均し角10°、柄1の固定角を25°とすると、地表(床面)からの柄1の傾斜角は35°となり、2mの柄1の握点(握る点)は、約115cmとなり、この高さでの柄1の操作は、しにくいものとなる。
図6の場合、もし、柄1が3mになったとすると、(A)の握る高さは80cm程度となり、操作しやすい高さとなるが、(B)の場合では、170cm程度となり、機能しにくい高さとなる。
従って、柄の取り付け角度が固定されている土間均し鏝では、3m,4mと柄を長くして用いることはできない。なお、本発明は、その機構からこの限りではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態をしめす一部破断斜視図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の実施の形態の別形態の要部を示す斜視図である。
【図4】均し板を着脱可能なものにした本発明の斜視図である。
【図5】従来の土間均し鏝の一例を示す斜視図である。
【図6】(A)(B)従来の土間均し鏝の問題点を示す参考図である。
【符号の説明】
1 柄
2 取付筒
3 制御溝孔
4 制御ピン
5 枢軸
6 枢軸承け
7 連結板
8a,8b ロッド軸承け
9 ロッド
10 均し板
12 補強部材
13 ピニオン
14 ラック
17 U字曲折部
18 切欠孔
19 係合板
21 ボルト
22 蝶ナット
イ 柄の右回動方向
ロ 柄の左回動方向
ハ 固定角
ニ 均し角
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
【図6】
図6
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