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機械器具
 
【考案の名称】ラチェットレンチ
【実用新案権者】
【識別番号】507016960
【氏名又は名称】岡本 光市
【住所又は居所】埼玉県桶川市上日出谷850−18
【代理人】
【弁理士】
【識別番号】100109955
【氏名又は名称】細井 貞行
【代理人】
【弁理士】
【識別番号】100140154
【氏名又は名称】岩崎 孝治
【考案者】
【氏名】岡本 光市
【住所又は居所】埼玉県桶川市上日出谷850−18
【要約】
【課題】
ヘッド部の厚みを抑えつつサイズの異なる複数のソケットを交換することのできるラチェットレンチを提供する。
【解決手段】
ラチェットレンチ本体aのハンドル1の端部にヘッド部2を設け、このヘッド部2に略リング状のベースホイール3を回転自在に内装し、ベースホイール3は内周面に保持歯3bを形成し、ラチェット機構5を上記ヘッド部2に設け、且つ、ベースホイール3の内部には、保持歯3bと形状一致する外周形状であると共に、六角ナットbの外周に嵌合して回動せしめる歯合孔4aを貫通形成して成る交換ソケット4を着脱可能に内嵌し、交換ソケット4はサイズの異なるものを複数種類具備し、これを順次交換装着するように構成したものである。
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
ラチェットレンチ本体を構成するハンドルの端部にヘッド部を設け、このヘッド部に略リング状のベースホイールを回転自在に嵌装し、該ベースホイールは内周面に保持歯を形成すると共に外周面にラチェット歯を形成し、このラチェット歯に歯合してベースホイールの掛止と空転を行うラチェット機構を上記ヘッド部に設け、且つ、上記ベースホイールの内周には目的の六角ナットの外周に嵌合して回動せしめる交換ソケットを着脱可能に嵌装し、この交換ソケットは保持歯と形状一致して歯合しベースホイール内に内嵌する外周形状であると共に、六角ナットに嵌合せしめる歯合孔を軸芯部に貫通形成して成り、上記交換ソケットは六角ナットに対応して歯合孔のサイズの異なるものを複数種類具備し、これを上記ヘッド部に順次交換装着するように構成したラチェットレンチ。
【請求項2】
上記交換ソケットは、肉厚の一方の片半部と肉厚の他方の片半部とに、サイズの異なる二種類の歯合孔を形成して成る請求項1記載のラチェットレンチ。
【請求項3】
上記ベースホイールと交換ソケットとの歯合部に、両部材の嵌合状態を維持する係止機構を設けて成る請求項1又は2記載のラチェットレンチ。
【請求項4】
上記係止機構はキーとキー溝の関係から成る請求項3記載のラチェットレンチ。
【請求項5】
上記係止機構は弾性的に出没するボールと、該ホールが嵌合する半球形の凹溝とから成る請求項3記載のラチェットレンチ。
【請求項6】
上記係止機構はベースホイール若しくは交換ソケットの少なくとも一方に取り付けた磁石体により構成した請求項3記載のラチェットレンチ。
【請求項7】
ラチェット本体のハンドルとヘッド部との間にヒンジ機構を設け、ヘッド部の角度を変更可能に構成して成る請求項1乃至6の何れか一項記載のラチェットレンチ。
【考案の詳細な説明】
【技術分野】
本考案はラチェットレンチに関し、さらに詳しくはヘッド部の肉厚が薄型形状であり、且つソケットの交換によりナットのサイズに合ったレンチのサイズに変更することのできるラチェットレンチに関する。
【背景技術】
従来、例えば建築現場等で使用するラチェットレンチの中には、図8にて示すようなものがある。このラチェットレンチ100は、ハンドル101の一端部に比較的肉厚の薄い円形のヘッド部102を備え、このヘッド部102の開口内に略リング状のレンチソケット103を内装して回転可能に保持してある。レンチソケット103は内周面に目的とする六角ナットの外周に嵌合して歯合する保持歯103aを形成すると共に、その外周面には上記ヘッド部102の基端側に設けたラチェット機構104と歯合するラチェット歯103bを形成し、上記ラチェット機構104の作動によりレンチソケット103のロックと空転の回転方向、即ち締め付け方向を任意に変更できるように構成してある。
上記したラチェットレンチ100は、ヘッド部102の厚みが比較的薄いために、構造物の狭い隙間に存在するボルトにナットを螺合する場合や、ボルト頭部上に障害物等が近接して存在する状況においてボルトにナットを螺合して締め付ける必要がある場合には、限られた隙間にヘッドを差し込んでナットを締め付ける作業ができるので、比較的狭い作業空間においても効率的に作業を行うことができる利点がある。また、レンチソケットの歯合部は孔として貫通しているために、六角ナットの移動に合わせてレンチソケットもボルトの長さ方向へ自由に移動できるので長いボルトにナットを螺合する作業などに都合よく利用できる。
しかし、上記したラチェットレンチ100はヘッド部102に内装したレンチソケットのサイズが決まっているため、複数のサイズの六角ナットを締め付ける作業を行う場合、現場で使用される六角ナットに対応したサイズのラチェットレンチをサイズ別に揃える必要があった。よって、大抵の場合、普段使用するサイズのラチェットレンチを数多く揃えて持っている必要があった。ちなみに、上記した従来のラチェットレンチにはハンドルの一端のみに口部がある片口と呼ばれるものと、ハンドルの両端に異なるサイズの口部がある両口と呼ばれるタイプのものがある。
尚、このようなタイプの従来のラチェットレンチとしては特許文献1や特許文献2等がある。
一方、上記したラチェットレンチと同様に使用するものの中には、目的とする六角ナットのサイズに対応してソケットを交換できるようにしたものがある。図7は、六角ナットに被嵌する六角ソケット205を、使用するナットのサイズに対応して交換可能に構成した従来のラチェットレンチ200を示している。
このラチェットレンチ200は、ハンドル201一端に設けたヘッド部202の開口部内に駆動ギヤ203を内装し、回転自在に支持すると共に、上記ヘッド部202に内設したラチェット機構204を作動させることにより同駆動ギヤ203のロックと空転の回転方向を選択できるように構成してある。上記駆動ギヤ203の片面には略四角柱形の凸部203aを突出形成してあり、この凸部203aに六角ソケット205の装着凹部205aを嵌合してサイズ別に用意した数種類の六角ソケット205を交換可能に装着する。
上記したように、六角ソケット205を交換可能に装着できるラチェットレンチ200の場合、目的とする六角ナットのサイズに合わせて予めサイズ別に用意された六角ソケット205を選択して装着することにより、六角ナットの締め付け作業を行うことができる。即ち、ハンドル201とヘッド部202とからなるレンチ本体は1本のものを使用し、目的とするとナットのサイズに合わせて六角ソケット205を交換装着するだけで、サイズの異なる複数種類のナットの締め付け作業に対応できる。
しかしながら、上記したように構成されるラチェットレンチ200は、六角ソケット205を装着したヘッド部202の厚み寸法がかなり大きくなるため、ボルトの上方に障害物や壁等がある場合や、作業空間の狭い場所ではヘッド部202と六角ソケット205が入り込むスペース的な余裕がなかったり、周囲の障害物に突き当たって作業が困難であったりする不具合があった。
また、上記した六角ソケット205は嵌合部がボックス状に構成されるので、六角ナットが嵌合する深さに限りがあり、長いボルトに六角ナットを螺合して締め付ける作業では六角ナットから突出したボルト先端が六角ソケット205内の壁に突き当たって六角ナットを完全に締め付けることが出来なくなる場合があった。
【特許文献1】
特開2002−254329号公報
【特許文献2】
特許3001811号公報
【考案の開示】
【考案が解決しようとする課題】
本考案は上記したような従来事情に鑑みなされたものであり、その目的とする処は、ヘッド部の厚みを抑えつつ、サイズの異なる複数のソケットを交換することのできるラチェットレンチを簡素な構成にて提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本考案は、上記目的を達成するために下記の技術的手段を採用した。
第1考案のラチェットレンチは、ラチェットレンチ本体を構成するハンドルの端部にヘッド部を設け、このヘッド部に略リング状のベースホイールを回転自在に嵌装し、該ベースホイールは内周面に保持歯を形成すると共に外周面にラチェット歯を形成し、このラチェット歯に歯合してベースホイールの掛止と空転を行うラチェット機構を上記ヘッド部に設け、且つ、上記ベースホイールの内周には目的の六角ナットの外周に嵌合して回動せしめる交換ソケットを着脱可能に嵌装し、この交換ソケットは保持歯と形状一致して歯合しベースホイール内に内嵌する外周形状であると共に、六角ナットに嵌合せしめる歯合孔を軸芯部に貫通形成して成り、上記交換ソケットは六角ナットに対応して歯合孔のサイズの異なるものを複数種類具備し、これを上記ヘッド部に順次交換装着するように構成したものである。
第2考案のラチェットレンチは、上記交換ソケットは、肉厚の一方の片半部と肉厚の他方の片半部とに、サイズの異なる二種類の歯合孔を形成して成るものである。
第3考案のラチェットレンチは、上記請求項1又は2記載のラチェットレンチにおいて、ベースホイールと交換ソケットとの歯合部に、両部材の嵌合状態を維持する係止機構を設けて成るものである。
第4考案のラチェットレンチは、上記請求項3記載のラチェットレンチにおいて、上記係止機構はキーとキー溝の関係から成るものである。
第5考案のラチェットレンチは、上記請求項3記載のラチェットレンチにおいて、上記係止機構は弾性的に出没するボールと、該ホールが嵌合する半球形の凹溝とから成るものである。
第6考案のラチェットレンチは、上記請求項3記載のラチェットレンチにおいて、上記係止機構はベースホイール若しくは交換ソケットの少なくとも一方に取り付けた磁石体により構成したものである。
第7考案のラチェットレンチは、上記請求項1乃至6の何れか一項記載のラチェットレンチにおいて、ラチェット本体のハンドルとヘッド部との間にヒンジ機構を設け、ヘッド部の角度を変更可能に構成して成るものである。
【考案の効果】
本考案のラチェットレンチによれば、下記のような優れた作用、効果が期待できる。
第1考案のラチェットレンチは、ハンドルの端部にヘッド部を設け、このヘッド部に略リング状のベースホイールを回転自在に嵌装し、該ベースホイールは内周面に保持歯を形成すると共に外周面にラチェット歯を形成し、このラチェット歯に歯合するラチェット機構を上記ヘッド部に設け、且つ、上記ベースホイールの内周には交換ソケットを着脱可能に嵌装し、この交換ソケットは保持歯と形状一致して歯合しベースホイール内に内嵌する外周形状であると共に、歯合孔を軸芯部に貫通形成して成り、上記交換ソケットは六角ナットに対応して歯合孔のサイズの異なるものを複数種類具備し、これを上記ヘッド部に順次交換装着するように構成したものである。
よって、1本のラチェットレンチ本体を共通して使い通すことができ、また、同ラチェット本体のヘッド部にサイズの異なる複数の交換ソケットを交換装着することにより、現場においてサイズのことなる六角ナットの締め付けや緩める作業を合理的に行うことができる。
そして上記したように、1本のラチェットレンチ本体を共通して使用できるので、製造コストの低減を図ることができると共に、多くのサイズに対応した交換ソケットを用意しても比較的コンパクトにまとめて携帯することができる。
さらに、上記交換ソケットはラチェットレンチ本体のヘッド部に内装したベースホイールの内周に内嵌して歯合しているので、ラチェットレンチ本体のヘッド部の肉厚を従来のヘッドの薄いラチェットレンチ(特許文献1,2にて示されるタイプのレンチ)と同様に薄くすることが可能である。よって、狭い作業スペースでも六角ナットの締め付け作業を効率的に行うことができ、また、長いボルトに沿って六角ナットを螺合させる場合でも、ボルトにレンチを通し、六角ナットに嵌合させて支障なく六角ナットの締め付けを行うことができる。
また、交換ソケットとベースホイールとの固定を周面の歯合関係により行っているので、締め付け力に対する耐圧強度を確保し易く、比較的肉厚の小さな交換式のソケットでありながら固定部分に十分な強度を備えることができる。
第2考案のラチェットレンチは、上記請求項1記載のラチェットレンチにおいて、上記交換ソケットは、肉厚の一方の片半部と肉厚の他方の片半部とに、サイズの異なる二種類の歯合孔を形成して成るものであるから、1個の交換ソケットにて2種類のサイズのボルトナットを締め付けることができる状態となり、作業効率と利便性を向上することができる。
第3考案のラチェットレンチは、上記請求項1又は2記載のラチェットレンチにおいて、ベースホイールと交換ソケットとの歯合部に、両部材の嵌合状態を維持する係止機構を設けて成るものであるから、ベースホイールと交換ソケットとの結合力を適度に確保することができる。即ち、ベースホイールと交換ソケットの嵌め合い関係に加えて、係止機構による保持力により交換ソケットを確実に保持し、作業中における交換ソケットの脱落を防止できる。また、使用者が係止機構による係止関係を外すことによりベースホイールから交換ソケットを取り外すことも容易に行うことができる。
第4考案のラチェットレンチは、上記請求項3記載のラチェットレンチにおいて、上記係止機構はキーとキー溝の関係から成るものである。よって、キーとキー溝との係合関係により締め付け力が増し、これによりベースホイールと交換ソケットとの結合力を適度に高めると共に、両部材間に生じるがたつきを無くし、作業中にベースホイールから交換ソケットが外れてしまうことを効果的に防止することができる。また、使用者がキー部分を押してスライドさせることによりベースホイールから交換ソケットを簡単に取り外すことができ、交換ソケットの交換作業もスムースに行うことができる。
第5考案のラチェットレンチは、上記請求項3記載のラチェットレンチにおいて、上記係止機構は弾性的に出没するボールと、該ボールが嵌合する半球形の凹溝とから成るものであるから、ベースホイールの内周に交換ソケットを内嵌した際に上記ボールが半球形の凹溝内に弾性嵌合して保持力を得るので、交換ソケットの保持と交換作業を極めて容易に行うことができる。また、ボールと凹溝とが係合した際、音や手応えによりそれがはっきり分かるので係合状態を確実に確認できる利点もある。
第6考案のラチェットレンチは、上記請求項3記載のラチェットレンチにおいて、上記係止機構はベースホイール若しくは交換ソケットの少なくとも一方に取り付けた磁石体により構成したものである。よって、ベースホイールの内周に交換ソケットを内嵌した状態において磁石体の磁力により交換ソケットを保持し、作業中にベースホイールから外れることを防止することができる。また、磁力により保持力を得ているので保持力が一定であり、摩耗や機械的疲労がなく、長期にわたり安定した保持力を発揮することができる。
第7考案のラチェットレンチは、上記請求項1乃至6の何れか一項記載のラチェットレンチにおいて、ラチェット本体のハンドルとヘッド部との間にヒンジ機構を設け、ヘッド部の角度を変更可能に構成して成るものであるから、作業場の状況に応じてヘッドに対するハンドルの角度を自由に変更しながら六角ナットの締め付けを行うことができ、利用範囲を広げると共にレンチの使い勝手が非常に向上し、作業効率を向上することができる。
【考案を実施するための最良の形態】
以下、本考案のラチェットレンチを実施するための最良の形態を図1乃至図3に基づいて説明する。
図1及び図2は本考案を実施したラチェットレンチAを示している。このラチェットレンチaは、ハンドル1とその一端部に設けられるヘッド部2とから構成され、ヘッド部2は後述するヒンジ部6を介してハンドル1の端部に接続されている。また、ヘッド部2には回転自在に保持されるベースホイール3と該ベースホイール3内周に交換可能に嵌装される交換ソケット4が内装される。尚、交換ソケット4は六角ナットbのサイズに合わせて複数種類用意される。尚、上記したハンドルの形状や長さ、滑り止めの有無は任意に変更してもよい。
ヘッド部2は略円形に形成され、その中心部に円形の開口部2aを貫通形成してある。開口部2aはベースホイール3及び交換ソケット4を嵌合して内装する孔であり、その孔の一側はヘッド部2の基端側(ヒンジ部側)に設けられるラチェット機構5を収納する横孔5aに連絡している(図1)。
ヘッド部2の開口部2aに内装されるベースホイール3は、交換ソケット4を保持しつつヘッド部2内で回動する略リング状の回転体であり、その内周面には六角ナットbを回す部材となる交換ソケット4の外周と歯合するための保持歯3bを形成すると共に、外周面にはラチェット機構5と歯合するラチェット歯3aを形成してある。また、ベースホイール3の厚さはヘッド部2の厚さと略一致させてあり本実施例の場合10mm〜12mm程度に設定してある。
ベースホイール3の保持歯3bは交換ソケット4の外周形状と一致するように6角若しくは12角と、6の倍数である歯と谷がある形状が望ましく、本実施例の場合、後述する交換ソケット4に合わせて12の歯と谷が交互に配置される形状に構成してある。
ベースホイール3一側の外周縁部に沿っては凹溝3cを周設し、同ベースホイール3をヘッド部2の開口部2a内に内嵌した際に、同開口部2a一側の内周縁に沿って形成した凸状のガイド2bと係合するように構成してある(図3)。これによりベースホイール3は開口部2aの一側から抜け出ないように嵌合される。
また、ベースホイール3の他側外周にはC形リング31を嵌装する凹溝3dを周設し、この凹溝3dに嵌装したC形リング31を開口部2aの他側外周に周設した掛止溝21内に嵌入してある。よって、ベースホイール3は開口部2a内に収納され、ガイド2b及びC形リング31にガイドされながら正逆両方向へ回動自在に保持される。
尚、ベースホイール3の外周面に形成されるラチェット歯3aは上記した凹溝3cとC形リングを嵌装する凹溝3dとの間の範囲に形成され、装着状態において、その外周の一部がラチェット機構5の内装される横孔5a側へ突出するように構成してある(図3)。
上記したようにヘッド部2に内装されるベースホイール3の内側には六角ナットb外周に嵌合して回動させるための交換ソケット4を着脱可能に内嵌してある。
交換ソケット4は、六角ナットb外周の各角部に嵌合して同六角ナットを締め付けたり緩めたりするものであり、主に使用する六角ナットのサイズに合わせて複数種類用意する。交換ソケット4は上記したベースホイール3の内孔に形状一致した状態で嵌合する略リング状の部材であり、その外周形状は上記したベースホイール3の孔形状となる保持歯3bと形状一致した状態で嵌合する外周歯4bを形成してある。また、交換ソケット4の内側には六角ナットbの各角部に掛止する歯合孔4aを形成してある。
歯合孔4aは六角ナットbの各角部に掛止するように、6の倍数である歯と谷を形成する。本実施例の交換ソケット4の歯合孔4aは12の歯と谷を交互に形成し、この谷部に六角ナットの角部が嵌合するように構成してある。よって、歯合孔4aは六角ナットbのサイズに対応してその各谷部が沿う内径の寸法も変更する。ちなみに、本実施例の場合、4mm〜12mmのボルトと螺合する六角ナットに対応した5〜7種類の交換ソケット4を用意する。尚、上記した歯合孔4aの歯と谷の数は6若しくは6×2×n倍の数から選択するが、実際には6若しくは12が好適である。
上記したように嵌合するベースホイール3と交換ソケット4とはキー7a及びキー溝7bを介して着脱可能に結合している。
本実施例の場合、ベースホイール3の先端側に位置する谷の部分に図2及び図3にて示すように軸芯方向へ延びるキー7aを突出形成し、これに対応する交換ソケット4の1か所の歯にキー溝7bを凹設してある。これらのキー7aとキー溝7bとはテ−パキーであり、ベースホイール3内に交換ソケット4を完全に嵌装した時点でキー7aとキー溝7bとが圧接されて交換ソケット4が適度な圧力をもって固定される。この固定力により交換ソケット4はベースホイール3内にて保持され、作業中に加わる負荷力によって脱落することが防止される。
また、交換ソケット4を他のサイズのものと交換する場合には、使用者が交換ソケット4のキー溝7b部分を比較的強く押すことにより上記したキー7aとキー溝7bの係合が外れて交換ソケット4を抜き出すことができる。その後、上記と同様に別のサイズの交換ソケット4を装着すればよい。
尚、上記したキー7aはベースホイール3と一体的に形成したが、このキーは別体に形成してベースホイール若しくは交換ソケットのどちらか一方に固定するように構成してもよい。また、ベースホイールと交換ソケットの双方にキー溝を設け、このキー溝の間にキーを適度な力にて圧入して嵌装するように構成してもよい。この場合、キーの材質は金属以外にも、必要な強度と耐摩耗性を有した合成樹脂を用いてもよい(図示せず)。
ヘッド部2の基端側にはラチェット機構5が内装してある。ラチェット機構5は、上記した如くヘッド部2に回転自在な状態で内装されるベースホイール3のロックと空転方向の切り換えを行うものであり、ヘッド部2の基端側に貫通形成した横孔5a内にて揺動するように爪付きアーム51を具備している。
爪付きアーム51は若干湾曲する略天秤形の部材であり、その中央部分を枢軸52により枢支して横孔5a内にて回動するように支持してある(図1)。爪付きアーム51はベースホイール3と対向する面の両側に各々掛止爪51a,51bを突設し、同アームを回動させることにより、左右一方の掛止爪51a,51bがベースホイール3外周のラチェット歯3aに掛止されるように構成してある。
上記爪付きアーム51のヒンジ部6側の中央部には切り換え爪53を略山形に突出してあり、この切り換え爪53の斜面に対して、横孔5aのヒンジ部6側内壁面にコイルスプリング54を介して出没可能に弾装したボール55を当接してある。これにより、爪付きアーム51を左右に回動させる度に切り換え爪53の頂点がボール55を乗り越え、ボール55が圧接される斜面とは反対側の掛止爪51a,51bをベースホイール3外周のラチェット歯3aに対して弾性的に当接せしめて掛止する。
例えば、図1は右側の掛止爪51aが掛止した状態にあり、爪付きアーム51の左端は横孔5aの左側に突出した状態にある。この状態ではベースホイール3を右回転(図1において)させようとすると掛止爪51aがラチェット歯3aに掛止されてロックされ(ナット締め付け状態)、反対にベースホイール3を左回転させると掛止爪51aがスライドして空転状態となる。
また、これとは反対に爪付きアーム51の左側が前に来るように回動させると(図1とは反対の状態)、ベースホイール3は左回転させようとするとロックされ(ナット緩め状態)、右回転させると空転する状態となる。
上記したように構成したヘッド部2とラチェット本体aのハンドル1とはヒンジ部1を介して傾動可能に軸支してある。ヘッド部2側の部材の後端には凸部61を形成すると共に、ハンドル1先端部には上記凸部61を左右から挟む形となる凹部62を形成してある。図1にて示すように、上記した凸部61は凹部62内に嵌入し、幅方向に枢軸63を貫通してある(図1,図2)。
これにより、ラチェット本体aはヘッド部2に対してハンドル1の角度を傾動させることが可能となり、ボルトナットの周囲に障害物がある場合などは、ハンドル1を上方へ傾動させた状態のままナットの締め付けや緩める作業ができるので使い勝手がよく作業能率も向上する。
上記したしたように構成したラチェットレンチAを使用する際には、現場等で使用する六角ナットbのサイズに合わせて、これに対応するサイズの交換ソケット4をヘッド部2のベースホイール3内に嵌装しておく。例えば固定ボルトに螺合した六角ナットbを締め付ける場合、上記ラチェットレンチAの歯合孔4aを六角ナットbの外周に嵌合してハンドル1を持って締め付け方向へ繰り返して往復回動する。この際、ラチェット機構5によりベースホイール3及び交換ソケット4は締め付け方向への回転が止められ、戻りの際には空転する。これにより六角ナットbは徐々に締め付けられ、最終的に締め付けを完了した状態で六角ナットbからラチェットレンチAのヘッド部2を外せば次の作業に移行できる。
上記ラチェットレンチAはヘッド部2の厚みが10mm〜12mmと薄いために狭い場所でも使い勝手がよい。さらに、比較的長い固定ボルトに六角ナットbを螺合する際にも、交換ソケット4の歯合孔4aが貫通した形態であるから、六角ナットbの締め付けが進むにつれてボルトの頭が突出してきても問題を生じることなく、締め付け作業を行うことができる。また、締め付けておいた六角ナットbを緩める際にはラチェット機構5の爪付きアーム51を逆向きに回動して、締め付けと空転の回転方向を逆転させる。ラチェット機構5の操作は従来のラチェットレンチと同様である。
次ぎに、図4にて示すラチェットレンチA2について説明する。
このラチェットレンチA2は、前記したラチェットレンチAと基本的に同様に構成してあるが、ハンドル1の一端と他端とに各々ヘッド部2,2'を設けて構成してある。ハンドル1の両端に設けた両ヘッド部2,2'は各々にラチェット機構5を具備し、ヒンジ部6を介して傾動可能に支持してある。上記したラチェットレンチA2は所謂両口型と呼ばれるものであり、2個のヘッド部a,a'に別々のサイズの交換ソケット4を装着した状態で作業を行うことができるので、複数種類のサイズの六角ナットbを締め付ける作業を行う場合などに便利である。また、ヘッド部2,2'に装着する交換ソケット4のサイズを大小に分けて使用するとよく、例えばこの実施例の場合、ヘッドaに10mm〜12mmのものを、ヘッドa'には4mm〜9mmのものを装着するように決めて使用することにより使い勝手を向上している。
次ぎに、図7(a),(b)及び図8にて示す交換ソケット40について説明する。
この交換ソケット40は、上記交換ソケット4と同様に形成されるが、交換ソケット40の肉厚の一方の片半部と肉厚の他方の片半部とに、サイズの異なる大小二種類の歯合孔40a,40cを形成して成るものである。例えば、この実施例の場合、10φと9φのサイズの歯合孔40a,40cを形成して断面が段差状の貫通孔となる(図7−b)。このような交換ソケット40を一方の面の歯合孔40aと他方の面の歯合孔40cとで使い分けることにより、サイズの異なる2種類のソケットを具備したことになる。
即ち、上記交換ソケット40を上記ラチェットレンチA又はA2に装着することにより1個のヘッド部、若しくは片側のヘッド部でもってサイズの異なる2種類のボルトナットの締め付けを行うことができるようになり、作業効率を高めることができ、利便性も向上する。
上記したラチェットレンチAの場合、ベースホイール3と交換ソケット4とを着脱可能に係合させるための係合機構としてテーパキーとキー溝を用いたが、本考案のラチェットレンチAに使用する係合機構は図5(a),図5(b)にて示すような構造を採用してもよい。
図5(a),図5(b)はベースホイール3と交換ソケット4とを着脱可能に保持する為の係合機構としてボールと凹溝から成るものを示している。この係合機構はベースホイール3側にキー70aを形成すると共に、交換ソケット4には上記キー70aが嵌合するキー溝70bを設けてある。上記したキー70aの中央部にはコイルスプリング71を介してボール72を弾性的に出没するように構成してある。また、嵌合状態において上記ボール72と対応するキー溝70bの合面には半球形の凹穴73を形成し、ベースホイール30bと交換ソケット4とが正確に嵌合した際に上記ボール72が凹穴73内に圧接した状態で嵌入することにより交換ソケット4を適宜な保持力により保持するように構成してある。また、交換ソケット4を取り外す際には使用者が交換ソケット4のキー70a部分を比較的強く押すことでボール72が応穴73から抜け出て交換ソケット4を取り外すことができる。上記した係合機構は、ボール72と凹穴73とが嵌合した際、「カチッ」という音や手応えによりそれがはっきり分かるので係合状態を確実に知ることができる利点がある。尚、上記したキーとキー溝とは平行キーを用いても若しくはテ−パキーを用いてもよい。
図6(a),図6(b)はベースホイール3と交換ソケット4との係合機構として磁石を利用してものを示している。この場合、ベースホイール3の保持歯3bは追加の加工を施すことなく完全な形状の歯形を呈している。一方交換ソケット4の一側の歯にはキー溝状の凹溝75を形成し、この凹溝内に磁石、例えばフェライト磁石76を埋め込んで固着し、その外形が他の外周歯4bと同形になるように構成してある。上記した係合機構の場合、保持歯3bと外周歯4bとが無理な形状一致するので交換ソケット4の着脱がスムースに行うことができると共に、フェライト磁石76による保持力も強く、定位置を維持しようとする復元性も有しているので合理的である。尚、上記したフェライト磁石はベースホイール3と交換ソケット4の双方に設けてもよく、この場合、磁力による保持力を更に高めることができる。また、磁石の種類としてはフェライト磁石が好適であるが、それ以外のものを使用してもよい。
尚、図5及び図6にて示した交換ソケット4に採用した係合機構は前記した図7,図8にて示した交換ソケット40に用いてもよい。
また、本考案のラチェットレンチのベースホイールと交換ソケットとの間の係止機構は上述したものに限定するものではなく、ベースホイールに対して交換ソケットを着脱可能に保持し得るものであれば、既存の係止機構のどのようなものを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案を実施したラチェットレンチを一部切欠して示す平面図。
【図2】同ラチェットレンチのヘッド部を示す斜視図。
【図3】同ラチェットレンチのヘッド部の縦断面図。
【図4】両口型のラチェットレンチを示す平面図。
【図5】(a)はボールと凹穴から成る係止機構を設けたヘッド部を示す平面図,(b)は同ヘッド部の従断面図。
【図6】(a)はフェライト磁石を利用した係止機構を設けたヘッド部を示す平面図,(b)は同ヘッド部の従断面図。
【図7】(a)はサイズの異なる2個の歯合孔を形成した交換ソケットを装着した状態のヘッド部を示す平面図,(b)は同ヘッド部の従断面図。
【図8】同交換ソケットを一部切欠して示す斜視図。
【図9】交換可能な六角ソケットを具備する従来のラチェットレンチのヘッド部を示す側面図。
【図10】従来の片口型ラチェットレンチを示す平面図。
【符号の説明】
A,A2・・・ラチェットレンチ
a・・・ラチェットレンチ本体
b・・・六角ナット
1・・・ハンドル
2・・・ヘッド部
2a・・・開口部
3・・・ベースホイール
3a・・・ラチェット歯
3b・・・保持歯
4,40・・・交換ソケット
4a,40a,40c・・・歯合孔
4b,40b・・・外周歯
5・・・ラチェット機構
6・・・ヒンジ部
7a・・・キー
7b・・・キー溝
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
【図6】
図6
【図7】
図7
【図8】
図8
【図9】
図9
【図10】
図10
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