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【発明の名称】再生可能エネルギー発電
【特許権者】
【識別番号】714007540
【氏名又は名称】蔭山 次郎
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区森ノ宮中央2丁目13番35−726号
【発明者】
【氏名】蔭山次郎
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区森ノ宮中央2丁目13番35−726号
【要約】
【課題】再生可能エネルギーを利用して発電を行う場合、潮力発電においては潮位・潮力の季節的・時間的変動が発電量に影響を及ぼし、太陽光発電においては曇天や雨天および夜間に発電量が低下する問題、風力発電においては弱風または無風状態での発電量低下と強風下での風車羽根破損の懸念による発電一時停止などの問題があり、安定した電力を継続的に供給することが難しい。
【解決手段】フライホイールに貯蔵したエネルギーにて発電機を駆動し、そのエネルギーを間欠的に補充するための動力として太陽電池と風力発電機の相互補完による安定した電力にて駆動する電動機と、雨水と海水の位置エネルギーを利用して回転させる水車を併用することで効率の高い発電装置を構成し、潮位・潮力の季節的・時間的変動の影響や太陽光と風力の時間的・気候的変動が発電量に影響する問題を解決して、継続的に安定した電力を供給する。
【選択図】図1
選択図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機の回転軸に取り付けられたギヤBと、それに噛み合うギヤAと電磁クラッチを備える電動機と、ギヤBと噛み合うギヤCを備えた大型のフライホイールと、フライホイールに浮力を与えるための機械油を満たす機械油プールと、さらに発電機回転軸の先端に取り付けられた発電機駆動のための水車と、それを覆う筐体と、使用済み水流を海洋へと自然排出する排水管と、水車を回転させる水流を導く導水管と、導水管に設けられて水流を調節する電動弁と、雨水および揚水された海水を貯蔵する目的で地上数メートルから十数メートルに設けられた貯水槽と、付帯設備にて必要とする電力を常時供給するための小規模発電設備と、装置全体を電子制御する自動制御装置を備えた発電装置。
【請求項2】
前記電磁クラッチには摩擦板式が使用され、電動機側から発電機側へ、または発電機側から電動機側へ動力を伝達する際の両者の回転数の不整合を吸収して円滑に動力伝達を行うことを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項3】
前記フライホイールに浮力を与えるために機械油プールに満たされた機械油は極めて粘度の低いものであって、フライホイールの垂直位置を理想的な位置に維持するための機械油ポンプによって適宜に増減され、さらにその動作を自動制御するためフライホイール回転軸に取り付けられた反射鏡と、それにレーザー光を照射するレーザー発光素子と、その反射光を検知する受光素子を備えたことを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項4】
前記電動弁は、水車の回転速度と駆動時間を調節するためのものであって自動制御装置にて制御され、フライホイールにエネルギーを貯蔵する際に水車と電動機との回転数の整合を行い、発電機負荷に応じた駆動時間を決定するために適宜に開閉または段階的開閉を行うことを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項5】
前記貯水槽は、雨水を取り入れて貯蔵するための開口部を持ち、海水を汲み上げて貯蔵するための揚水ポンプを備え、さらに貯水槽内の水位を監視するために水位センサーを備えて常時水位を自動的に監視することを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項6】
前記小規模発電装置は太陽電池と風力発電機で構成され、お互いの欠点を相互補完して電動機や揚水ポンプ、機械油ポンプ、自動制御装置などの付帯設備に常時安定した電力を供給することを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項7】
前記自動制御装置は、発電機負荷の状況に応じてフライホイールにエネルギーを貯蔵する時間を計算し、電動機によるフライホイール回転支援と水車による回転支援の同期を行いながらその時間を適宜制御することを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項8】
請求項1記載の発電装置の貯水槽を丘陵または山地の中腹に設置することで、揚水塔の工事を省略した発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
再生可能エネルギーを利用した発電に関する技術
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーを利用した発電には様々な方法が考案されているが、最も大きな課題は、天候など自然現象の変動が発電量に与える影響が大きいことである。すなわち潮位・潮力の季節的・時間的変動の影響を受ける潮力発電や風力の変動の影響を受ける風力発電、雨天や曇天では起電力が半減し、夜間では発電不能な太陽光発電などにおいてその改善が待たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−26336
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】特願2015−005508
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、発明者本人が平成27年1月15日に特許申請提出済みの「特願2015−005508」から新たな構想を得たものであり、前記「背景技術」記載の諸課題を解決すると共に、特に熱帯雨林地域での発電所建設を念頭に発電効率を改善したことと、機械的構造を簡素化して建設コスト低減に配慮したことが特徴である。
【0006】
特許文献1では、発電のエネルギー源としての水源を海底や湖底から得ることで、潮位・潮力の季節的・時間的変動など不安定要素の影響を受けずに安定して発電が継続できる点が優れている。しかしながら、発電機駆動に利用された海水または湖水は排水ポンプにて海または湖に戻される構成なので、それに必要とするエネルギーは発電機駆動に利用されたエネルギーとほぼ同量であることから、発電電力の多くが排水ポンプ駆動に消費されてしまうので、十分な電力を外部に供給することが難しい。
【0007】
特許文献1では、海底または湖底での建設工事と地中深くの建設工事が必要であり、工期が長くなって建設コストが高くなる。またそれらの場所での保守点検整備作業が容易でないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
雨水、海水、風力、太陽光の4種類の再生可能エネルギーの特徴を効果的に利用して、発電効率の高い発電装置を構成する。すなわち、雨水と海水を発電機駆動エネルギーとして間欠的に利用するだけで発電が継続できる構成とし、風力と太陽光は互いの欠点を相互補完する小規模発電設備として付帯設備への電力供給専用とすることによって発電機出力の全てを外部への電力供給に充てることができる。これにより、潮位・潮力および風力と太陽光の季節的、時間的、気候的変動の影響を受けない高効率の発電装置を実現すると共に全体を簡素な構造とすることでプラント建設の工期を短縮し、建設コスト低減にも配慮している。
【発明の効果】
【0009】
発電機駆動には雨水と海水エネルギーを、付帯設備への電力供給には風力と太陽光を利用するため、それらのエネルギー源のコストはゼロであり、従来の発電方式よりも電気料金を低く抑えることが可能である。また燃焼ガスや放射性物質などの有害物質を大気中に放出しないので、周辺環境を破壊しないクリーンな発電設備が実現でき、新規プラント建設の際に地域住民の賛同を得やすい。
【0010】
発電設備全体の構造が簡素でありプラント建設も安価で容易であるため、遠距離にある発電所から離島や沿岸小集落へ送電していた従来の方法を廃止して独立した発電設備を現地に建設することにより、難工事である送電設備建設が不要になって、膨大な資財を節約することができる。
【0011】
本発明の特徴のひとつである雨水の利用は発電効率改善に大きく寄与するので、特に熱帯雨林地域での稼働に効果を発揮する。従って、それらの地域へのプラント輸出や政府開発援助プロジェクトの一助になり得ると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第一の実施形態
【図2】フライホイール詳細
【図3】制御装置
【図4】タイミングチャート
【図5】第二の実施形態
【図6】第三の実施形態
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1の第一の実施形態において、貯水槽1は開口部18から取り込んだ雨水と、揚水管25を通じて揚水ポンプ17にて汲み上げた海水を一時的に貯槽して発電棟20へと供給するためのもので、地上数メートルから十数メートルの位置に設置される。手動弁7とドレンパイプ28は大規模な暴風雨などの自然災害が予想されて発電を一時停止する際に貯水槽1内の雨水と海水を放出し、貯水塔24の重心を低くして倒壊を予防する安全装置である。
【0014】
水位センサー16は、雨水と海水の貯蔵量を監視するセンサーであり、雨水のみで貯水槽1が満たされる場合には揚水ポンプ17にて海水を汲み上げる必要はないが、天候により雨水が不足する場合や発電棟20への供給により水位が下限水位に達した際には、後述する揚水制御装置103の指令により揚水ポンプ17を稼働させて上限水位に達するまで海水を汲み上げる。溢水バイパス19は、長期的な降雨などで上限水位を超えた雨水を海洋などに放出し、貯水槽1から溢れるのを防ぐためのものである。
【0015】
電動弁3は導水管4を通じて水車棟2に供給される水量を調節するためのもので、全開または全閉、または段階的な開閉が可能である。発電機14の回転軸には比較的大きな直径のギヤB10が設けられ、それと噛み合うさらに大きな直径のギヤC11を備えたフライホイール12があり、さらにギヤB10と噛み合う小さなギヤAを持つ電動機7は装置の始動と、運転中にはフライホイール12の回転支援を行い、装置停止の際にはブレーキとしても動作する。
【0016】
電動機7には摩擦版式電磁クラッチ8が装備されており、発電装置の始動時と運転時においては電動機7の動力をギヤA9を介してギヤB10に伝え、装置の停止の際にはギヤB10からの動力をブレーキモードに入った電動機7に伝える。これらの動作中に電動機7側とギヤA9側の回転数が整合しない期間を生じるが、電磁クラッチ8の摩擦版が適宜にスリップすることで動力伝達を円滑に行うことができる。
【0017】
発電機14の回転軸先端には水車ランナー6が取り付けられ、水車筐体5とで落差数メートルから十数メートルにて高い回転効率が得られる水車を構成し、電動弁3が開放されて貯水槽1内の雨水と海水が流入するとその位置エネルギーを得て回転して、発電機14を駆動すると共にフライホイール12の回転支援を行う。すなわち貯水槽1からの水流がある場合には発電機14の駆動とフライホイール12の回転支援の動力となり、水流がない場合には発電機14を継続回転させるためのフライホイールとしても作用する。同様に比較的大きな慣性モーメントを有するギヤB10とギヤC11もフライホイールとして作用する。
【0018】
大型のフライホイール12は、鉄などの金属製で大きな慣性モーメントを有し、その重量を支えるために下部スラスト軸受13が設けられているが、このままではフライホイール12の垂直荷重が下部スラスト軸受13にかかって摩耗を早め、さらにこの部分での機械損がフライホイール効果を低下させる。このためフライホイール12は断面を図2Aのように円周部分の肉厚を厚くして慣性モーメントを維持すると共に浮力を得やすい形状にして粘性の低い機械油29を満たした機械油プール30の中に置かれている。これによりフライホイール12は適度の浮力によって下部スラスト軸受13から離脱してこの部分での機械損を解消する。すなわち下部スラスト軸受は、保守点検整備などの際に機械油を放出したときのフライホイール12の垂直荷重支持が主な目的である。
【0019】
フライホイール12が機械油29によって浮力を得ている状態において、フライホイール回転軸56は図2Bに示すように上下のラジアル軸受54のみにて支えられている。ラジアル軸受54にはフライホイール12の垂直荷重がかからないので、この部分での機械損は僅かであり、フライホイール効果を低減させることはない。機械油29と接触するフライホイール12の底面と側面は鏡面加工またはクロムメッキが施され、油面との摩擦を極力小さくしてフライホイール12の回転を円滑にすると共に油面を波立たせないように考慮されている。
【0020】
図2Cにラジアル軸受54の断面を示す。フライホイール12の回転軸56は複数のボールベアリング60にて支えられており、摩擦を軽減すると共に図2A、図2Bにおける垂直方向への移動を容易にしている。図2Cは本装置に使用されるラジアル軸受の一例を示すものであって、意図する目的が達成されるならば本図の通りの構造に限ることはない。
図2Aに示す上部スラスト軸受52は、何らかの要因でフライホイール12の垂直位置が上限を超えた際にこれを抑えて制止するためのものである。
【0021】
反射鏡53は図2Dのような形状で、レーザー発光素子55dの反射光の状況を3個の受光素子55a、55b、55cにて検知してフライホイール12の垂直位置を知ることができる。すなわち、フライホイール12が下部スラスト軸受13を離れて理想的な垂直位置にあるかどうかを監視するためのもので、正常な状態では中心受光素子55bの出力が最大になる。図2Dはフライホイール12の浮力が十分でない状態を示していて、レーザー発光素子55dの反射光は上部受光素子55aに多く集まり、3個の受光素子の出力は、55a>55b>55cとなって、図3Bのようにその状況を入力ポートIP−4にてモニターした主制御装置101はフライホイール12の位置エラーを検知する。主制御装置101はエラー検知後ただちに受光素子からの出力が55a<55b>55cとなるように機械油ポンプ59を作動させ、機械油プール30内の機械油29を増減してフライホイール12の垂直位置を修正する。このときギヤC11が垂直移動する際にギヤB10から外れないように、ギヤB10は十分な肉厚を備えている。
【0022】
水車6の回転に使用された雨水と海水は、図1に示すように排水管15にて海洋へと自然排出される。このため排水ポンプを特に必要としない。
【0023】
太陽電池22と風力発電機23は、お互いの欠点を補完する形で小規模発電設備を構成する。すなわち図3Aに示すように、両者の発電電力はハイブリッドコントローラーにて合成され、蓄電・安定化され、インバーターによって適宜の交流電力に変換されて、電動機7、揚水ポンプ17、機械油ポンプ59、および制御室21に必要十分な電力が供給される。この構成により、雨天や曇天、夜間や無風状態での発電電力の変動を相互補完して常時安定した電力をこれらの付帯設備に供給できるので、発電機14の出力の全てを外部への送電に充てることが可能となる。太陽電池と風力発電機のハイブリッド発電については公知の技術であるため、詳細説明は省略する。
【0024】
制御室21は、図3Aおよび図3Bに示す発電機14を電子制御する主制御装置101、小規模発電設備を制御する副制御装置102、揚水ポンプ17を制御する揚水制御装置103およびそれらに必要とされる配電盤や表示板などの付帯設備を統括し、発電装置全体を管理・監視・遠隔操作する設備である。
【0025】
変電設備32は、本発電装置から遠隔地への送電を必要とする場合に発電機出力電圧を数千V〜1万Vに昇圧して送電するための設備である。従って、近隣地区のみの需要に対応する場合は昇圧の必要はなく、変電設備32も不要となる。
【0026】
図1〜図4にて本発電装置の始動から発電状態までと、発電状態から停止の方法を説明する。より具体的な説明とするため各構成要素に数値を与えているが、これらの数値は実施可能な一例であって、この限りに特定するものではない。
【0027】
装置を始動する前に、先ず各構成要素のディフォルト状態を確認する。本発電装置におけるディフォルト状態とは、貯水槽1内の水位が上限水位にあり、電動弁3が「閉」であり、フライホイール12が浮力を得て下部スラスト軸受13から離れ、理想的な垂直位置にある状態であって、小規模発電設備が十分な電力を供給可能な状態であることを指し、これらの状態は制御室21内の表示板で確認できる。
【0028】
各部のディフォルト状態の確認が終われば、次に図3Bに示す主制御装置101の始動スイッチ106をONする。主制御装置101はインバーターB108を制御して出力50KWの電動機7を始動する。このときインバーターB108は予めプログラムされた電力にて電動機7を低速で回転させ、装置の始動を円滑に行う。すなわち図4Aに示すようにt1で始動スイッチ106がONされると電動機7の回転数はt2にて始動初期段階の設定値の60rpmに達する。電動機7への電力は前述のように小規模発電設備から供給される。
【0029】
t2にて電動機7の回転数が60rpmに達すれば主制御装置101は摩擦版式電磁クラッチ8をONしてギヤA9に動力を伝える。摩擦版式電磁クラッチ8は適度のスリップを生じながら低回転・高トルクの動力を静止しているギヤB10(=発電機14と水車ランナー6)とギヤC11(=フライホイール12)に伝えて徐々に回転させる。
【0030】
直径20cmのギヤA9と直径1mのギヤB10とのギヤ比は1:5、ギヤB10と直径2mのギヤC11とのギヤ比は1:2である。主制御装置101は予め設定されたプログラムにより入力ポートIP−3にて発電機14の回転数をモニターし、回転数が上昇することで負荷が徐々に軽くなることを確認しながら、電動機7の回転数を段階的に定格の1800rpmまで上昇させ、t3にて発電機14の回転数が1800rpm/5=360rpmで安定したことを確認する。すなわちこの時点で電動機7の回転数が定格回転数の1800rpmに達し、発電機14の回転数も360rpmで安定してこれ以上に上昇しないことを意味する。主制御装置101はこの状態を持続して、360rpm/2=180rpmで回転している直径3mのフライホイール12に回転エネルギーを貯蔵し、3分後のt4にて電磁クラッチ8をOFFして電動機7の電源を切る。回転エネルギーは主にフライホイール12に貯蔵されるが、空転している水車ランナー6やギヤB10、ギヤC11にも貯えられる。
【0031】
発電機14は、300rpmで60Hz、200Vを発生する24極の500KW三相交流発電機であり、t3では1800/5=360rpmに達するので、このときの出力は72Hz、240Vである。t4にて電動機7の電源が切断されると、360/2=180rpmで回転していたフライホイール12は緩やかに回転数を低下させ、図4Bに示すようにt6では発電機14の回転数も240rpmまで低下する。このときの出力は48Hz、160Vであるが、この時点で主制御装置101は電動機7を定格の1800rpmにて再起動して5秒後に電磁クラッチ8をONし、電動弁3を開放して水車6を回転させ、電動機7と水車6との協調によりフライホイール12の回転支援を行い、再びエネルギー貯蔵を開始する。
【0032】
回転支援を得たフライホイール12の回転数はt7にて再び180rpmまで回復し、発電機14の回転数も360rpmとなる。これを検知した主制御装置101はこの状態を3分間持続したあとt8にて電動弁3を閉じて水車への水流を遮断し、電磁クラッチ8をOFFして電動機7を停止する。フライホイール12の回転数は再び低下し、発電機14の回転数も共に低下して240rpmに達したときに主制御装置101が上記と同様のエネルギー貯蔵命令を発して電動機7を再起動、電磁クラッチ8をON、水車6を再起動させることによって再びフライホイールの回転支援を行う。以後同様の動作を繰り返すことで発電が継続される。
【0033】
ここでフライホイール12がエネルギーを取り込んでいる期間、すなわち図4Bのt6からt7までの期間をT1、エネルギーを蓄えている期間、すなわちt7からt8までの期間をT2、エネルギーを放出している期間、すなわちt8からt9までの期間をT3とすると、低負荷では(T1+T2)<T3であり、高負荷では(T1+T2)>T3となる。装置全体の設計を行う際には、(T1+T2)はT3の3倍程度を限度とするのが望ましい。これらの諸元は負荷の規模や各構成要素の仕様・性能に左右されるので、実際のプラント建設においては需要電力に応じて設計し、現場で微調整を行うとよい。需要電力が本発電装置1基分の能力を超える場合は複数基を設置してもよい。
【0034】
図4Bに示すように、発電機14の回転数は240rpmから360rpmまで変化するため、出力電圧は160Vから240V、周波数は48Hzから72Hzまで変動する。これを安定した三相交流として外部に送電するために、図3Bに示すように先ずコンバーター104にて直流変換し、平滑・安定化して蓄電し、さらにインバーターA105によって目標の60Hz/200V/500KWの三相交流に変換して外部に出力する。発電機回転数と出力電圧およびインバーターA出力電圧の関係は図4Bのとおりである。
【0035】
貯水槽1の水位は、水車6を駆動するために消費される水量に応じて低下するので、図3Aに示すように主制御装置101とは独立した揚水制御装置103と水位センサー16にて常に監視する。上下の水位センサー16は揚水制御装置103の入力ポートIP−1とIP−2にてモニターされ、必要に応じて出力ポートOP−1から指令を出して揚水ポンプ17を駆動させて揚水する。水位低下分が雨水だけで補填できる降雨量の多い気象条件下では揚水ポンプ17を作動させる必要はないが、降雨のない場合には揚水ポンプ17が作動して海水を汲み上げ、貯水槽1の上限水位を維持する。このように揚水ポンプ17は少量の海水を間欠的に補填するためのものなので、これを駆動する電動機も出力30KW程度でよい。
【0036】
電動機7と水車6は協調してフライホイール12の回転支援を行うが、ここで重要なことは電動機7の回転と水車6の回転をできるだけ同期させることである。(電動機7の回転数/5)が水車6の回転数を上回ると電動機7の負荷がそれだけ重くなる。反対に水車6の回転数が(電動機7の回転数/5)よりも上回ると水車6の負荷がそれだけ重くなり、さらに電動機7に回生電流を生じるので、規定値を超えないように留意する必要がある。両者の過渡的な回転数のずれは摩擦版式電磁クラッチ8にて吸収できるが、装置の信頼性をより高めるために設計時点では入念な計算を行い、建設現場で微調整するとよい。建設現場では各ギヤの歯数を調整することは難しいので、導水管4の直径や電動弁3の開閉量、水車筐体内のガイドベーン設定などで微調整することが望ましい。
【0037】
図1に示す水車はフランシス水車を模して描かれているが、この限りに特定するものではない。本装置では貯水槽1の設置位置が地上数メートルから十数メートルであるため、この落差でも回転効率の良いクロスフロー水車が適している。水車の種類と構造については公知の技術であるので詳述は省略する。
【0038】
運転中の状態から装置を停止させるには、最初に主制御装置101の停止スイッチ107を押す。主制御装置101はプログラムに従って電動弁3を全閉にして水車6への水流を遮断する。次に電磁クラッチ8をOFFし、電動機7をブレーキモードに切り替えてから電磁クラッチ8をONしてギヤB10からの動力で発電させ、負荷を増減することによって惰力で回転している発電機14を適宜に制動する。電動機7のブレーキモードとは、小規模発電設備から電動機7の固定子巻線に供給されている電力を遮断し、適度の負荷を接続することによってブレーキとして動作させるモードを言う。
【0039】
図5は第二の実施形態であり、発電プラント建設予定地が沿岸地区で背後に丘陵や山地が控えている場合に適している。図5に示すように貯水槽1を丘陵または山地の中腹に設置できるため、重量物である貯水槽1を支える揚水塔の建設が不要であり、貯水槽1と発電棟20との落差を大きく取れる点が優れている。落差を大きくすれば水車を回転させる位置エネルギーを大きくすることができるが、海水を揚水する際のエネルギーもその分だけ必要とするので、最も効率の良い設置位置を算出すべきである。発電棟20が海岸に近接しすぎると風波の塩害や波浪の被害を受けるので、防潮堤を設けるか、または海岸から一定の距離を取るとよい。
【0040】
図6は第三の実施形態である。フライホイールの回転支援の動力を電動機のみに限定するため、電動機の出力は100KWまたはそれ以上が必要になって、第一と第二の実施形態よりも発電効率が低下するが、貯水槽と水車および、それに必要とされる揚水ポンプや配管工事が不要となり、コンパクトで手軽な発電設備として内陸部や都市部での設置に適している。中規模の電力を近隣地区に限定して送電するので、高圧の送電線や送電設備も不要になり、都心部に設置する際にも工期は比較的短く、稼働後の公害が皆無であり、電気料金も安価であることから地域住民の賛同を得やすい。
【実施例】
【0041】
本発明の発電装置を日本国内に設置して稼働する場合の候補地は、年間降雨量が比較的多く、海水の取水と水車駆動後の排水に便利で、遮蔽物が少なくて太陽光発電に適し、風力発電に有利な海風が得られる地域が最も適している。これらの条件を満たすのが沿岸小集落や離島であり、従来技術のように遠距離に位置する発電所から送電線を引く難工事が不要になるなど、本発明の効果を発揮できる。国外の、例えば熱帯雨林地域に設置して稼働する場合にはさらに効果を発揮することになるので、設置場所の気候環境や立地条件、需要発電量などを勘案して設計し、建設計画を実施するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
前記の実施例に記したように、本発電装置を沿岸小集落や離島に設置すれば公害の無いクリーンな発電プラントが小規模の敷地面積で実現できるので、従来方式よりも安価な電力を地域住民に提供することができる。
【0043】
本発電装置の特長を最も効果的に生かせる熱帯雨林地域を対象にしたプラント輸出には他の発電方式よりも有利な条件を提示できるので、産業上・商業上の利用価値が高く、発展途上国の多い同地域に対する政府開発援助プロジェクトの一助にもなる。
【0044】
第三の実施形態は内陸部や都市部での設置に適しており、同地域にて再開発の一環として大型商業施設などの建設が検討される際の電力需要増加の問題が解決できる。すなわち、その施設に隣接してこの発電装置を設置して近隣家屋にも送電するか、またはその施設専用の自家発電設備として設置することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
各図面の下段に符合説明あり。
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5 
【図6】
図6 
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