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土木・建設
 
【発明の名称】削孔装置及び削孔方法
【出願人】
【識別番号】517126990
【氏名又は名称】岡川 秀幸
【住所又は居所】北海道札幌市豊平区福住1条2丁目5-1-501
【代理人】
【識別番号】100137800
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 正義
【代理人】
【識別番号】100148253
【弁理士】
【氏名又は名称】今枝 弘充
【代理人】
【識別番号】100148079
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 裕明
【代理人】
【識別番号】100158241
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 安子
【発明者】
【氏名】山田 義則
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区三枚町108−7−502
【発明者】
【氏名】尾崎 寿一
【住所又は居所】神奈川県横浜市保土ヶ谷区仏向町1716−1-A402
【発明者】
【氏名】岡川 秀幸
【住所又は居所】北海道札幌市豊平区福住1条2丁目5-1-501
【発明者】
【氏名】松井 恵太
【住所又は居所】北海道札幌市豊平区豊平2条1丁目1番1号 株式会社松井商店内
【要約】
【課題】ビットの破損に繋がるコンクリート中の埋設物を検知しながら、削孔することができる削孔装置及び削孔方法を提供する。
【解決手段】ドリルヘッド12と、前記ドリルヘッド12に接続された、先端にビット14を有するロッド16とを備える削孔装置10において、前記ロッド16に高周波信号を供給する高周波結合部46と、前記ロッド16からの反射信号を受信する検知制御部とを備えることを特徴とする。
【選択図】図2
選択図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルヘッドと、
前記ドリルヘッドに接続された、先端にビットを有するロッドと
を備える削孔装置において、
前記ロッドに高周波信号を供給する高周波結合部と、
前記ロッドからの反射信号を受信する検知制御部と
を備えることを特徴とする削孔装置。
【請求項2】
前記高周波結合部は、
前記ロッドの外側に設けられた絶縁性枠体と、
前記絶縁性枠体の外周面に設けられた金属枠体と
を有し、
前記ロッドと前記絶縁性枠体の間に不揮発性媒体が充填されている
ことを特徴とする請求項1記載の削孔装置。
【請求項3】
前記ドリルヘッドを前後方向に移動可能に支持するガイドセルを備え、
前記ガイドセルには、前後方向に開口した吸塵口を有する集塵ヘッドが固定されており、
前記高周波結合部が取り付けられた前記ロッドが、前記吸塵口に挿入されている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の削孔装置。
【請求項4】
ドリルヘッドに接続された、先端にビットを有するロッドにより削孔する削孔方法において、
前記ロッドの高周波信号を供給するステップと、
前記ロッドからの反射信号を受信するステップと
を備え、
削孔しながら前記反射信号を検知することにより、前記ビットの近傍における鋼材の有無を検知することを特徴とする削孔方法。
【請求項5】
前記鋼材の存在を検知した場合に、削孔を停止するステップを備えることを特徴とする請求項4記載の削孔方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルのコンクリート躯体や鉄筋コンクリート構造物などを削孔する際に、ビット及びロッドが躯体に埋設された鋼材で破損することが無いようにロッドが給進する方向に鋼材が存在することを検知する方法と削孔装置の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルのコンクリート躯体や鉄筋コンクリート構造物にアンカーや注入剤の注入孔を削孔する場合、一般にコンクリート躯体はコンクリートを補強するために鋼材が埋設されており、この鋼材によりビットが破損することが起こる。したがって削孔しようとするロッドの進行方向に鋼材があるかないか検知する必要がある。
【0003】
コンクリート壁を削孔するには、ドリルヘッドと、ドリルヘッドに取り付けられたロッドと、ロッドの先端部に取り付けられたビットとを備える削孔装置が用いられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−172973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンクリート中の埋設物を調査する方法として、電磁波を照射して埋設物による反射波を探知する電磁波レーダー法がある。深さは周波数に依存するため、コンクリート壁表面から深い位置の埋設物に対しては低い周波数が使用され、浅い位置の埋設物に対しては高い周波数を使用する。電磁波レーダー法を用いれば、鋼材などの埋設物の場所を深さ情報と共に調査することにより、埋設物を避けて削孔することは可能であるが、削孔する前に調査する必要があるので、工数が増えてしまうという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、上記した問題点に鑑み、ビットの破損に繋がるコンクリート中の埋設物を検知しながら、削孔することができる削孔装置及び削孔方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る削孔装置は、ドリルヘッドと、前記ドリルヘッドに接続された、先端にビットを有するロッドとを備える削孔装置において、前記ロッドに高周波信号を供給する高周波結合部と、前記ロッドからの反射信号を受信する検知制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る削孔方法は、ドリルヘッドに接続された、先端にビットを有するロッドにより削孔する削孔方法において、前記ロッドの高周波信号を供給するステップと、前記ロッドからの反射信号を受信するステップとを備え、削孔しながら前記反射信号を検知することにより、前記ビットの近傍における鋼材の有無を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、削孔しながら、検知制御部が、ロッドからの反射電力信号と、あらかじめ定められた基準値信号と比較し、反射電力信号が基準値信号を超えていた場合、鋼材などの埋設物が存在すると判定することにより、ビットの破損を防止することができる。したがって、ビットの破損に繋がるコンクリート中の埋設物を検知しながら、削孔することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る削孔装置を用いた削孔システムを示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る削孔装置を示す正面図である。
【図3】本実施形態に係る高周波結合部を示す斜視図であり、図3Aは全体図、図3Bは分解斜視図である。
【図4】本実施形態に係る高周波結合部の正面図である。
【図5】本実施形態に係る検知制御部を示すブロック図である。
【図6】本実施形態に係る削孔装置の使用状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(全体構成)
図1に示す削孔装置10は、制御盤27、圧縮装置28、油圧装置32、及び吸引装置42にそれぞれ接続されている。削孔装置10は、ドリルヘッド12と、前記ドリルヘッド12に接続された、先端にビット14を有するロッド16とを備え、ガイドセル20によって前後方向へ移動可能に支持されている。ドリルヘッド12は、配管26を通じて制御盤27を介して、圧縮装置28に連結されている。ドリルヘッド12は、圧縮装置28から供給される高圧の気体によって、接続されたロッド16に対し、打撃力と回転力を与える。
【0013】
ガイドセル20は、ドリルヘッド12を固定する移動体21と、レール23と、第1シリンダー22とを有する。移動体21は、図示しないが、レール23上を滑走する台車を有し、チェーンに固定されている。レール23は、長手方向の両端に設けられた滑車を有し、当該滑車にはチェーンが掛け回されている。チェーンの両端は、第1シリンダー22のピストン25の先端に固定されている。
【0014】
第1シリンダー22は、配管30を通じて油圧装置32に連結されている。第1シリンダー22は、油圧装置32から供給される高圧の作動油によって、ピストン25がシリンダーに対し進退することにより、伸縮する。移動体21は、第1シリンダー22が伸縮することにより、レール23上を前後方向に移動することができる。
【0015】
ガイドセル20は、基台18に設けられている。基台18は、鉛直方向に延びる支柱29と、鉛直方向に伸縮可能な第2シリンダー24とを有する。ガイドセル20は、支柱29の先端において、支柱29の軸を中心に回転可能、前記軸に対し直行する方向(本図の場合、水平方向)に対し搖動可能に支持されている。第2シリンダー24は、支柱29に平行に設けられ、ピストン31の先端がガイドセル20に回転支持されている。第2シリンダー24が伸縮することにより、ガイドセル20は、支柱29の軸に対し直行する方向の角度を変更することができる。
【0016】
ガイドセル20の先端には、集塵ヘッド34が固定されている。集塵ヘッド34は、中央に吸塵口(図示しない)を有し、配管36を通じて、集塵タンク38、配管40を介して吸引装置42に連結されている。削孔装置10は、吸塵口にロッド16を挿入した状態で、集塵ヘッド34をコンクリート壁に強く押し当てることで、ロッド16をコンクリート壁に固定するとともに、吸引装置42で気体を吸引することで削孔塵を吸入することができる。
【0017】
図2に示すように、ロッド16には、高周波結合部46が設けられている。高周波結合部46は、支持棒48によって移動体21に固定されており、ドリルヘッド12と一体的に前後方向へ移動する。
【0018】
図3に示すように、高周波結合部46は、円筒形状を有し、ロッド16の外側に設けられた絶縁性枠体54と、前記絶縁性枠体54の外周面に設けられた金属枠体56とを有し、前記ロッド16と前記絶縁性枠体54の間に不揮発性媒体52が充填されている。絶縁性枠体54は、内周面において、不揮発性媒体52に接触している。
【0019】
図4に示す絶縁性枠体54の外周面54Aには、金属膜(図示していない)が形成されている。金属膜は、円筒形コンデンサの一方の電極となる。金属枠体56は、前記金属膜と電気的に接続されることで外部端子となる。なお金属膜は絶縁性枠体54の内周面54Bに形成することもでき、この場合、金属膜と金属枠体56を電気的に接続しておく。
【0020】
絶縁性枠体54は、プラスチックやセラミックなどで形成することが好ましい。特にセラミックは、印刷・焼成により、表面に金属膜を容易に形成することができるので、絶縁性枠体54の外周面54A及び内周面54Bに電極を形成するうえでより好ましい。またプラスチックは、低温焼結性金属粒子インクやペーストを用いることにより、表面を金属膜化することができるので、絶縁性枠体54の外周面54A及び内周面54Bに容易に電極を形成することができる。低温焼結性金属粒子インク、ペーストとしては銀を用いることができる。
【0021】
金属枠体56は、金属、例えば、ステンレス、アルミ、真鍮など、支持棒48を溶接・固定できる金属であれば、特に限定されない。金属膜は、絶縁性枠体54の外周面54A又は内周面54Bに、低温焼結性金属粒子インク、ペーストを用いて形成することにより、密着性の良好な電極となる。この金属膜はコンデンサ電極となるので、機械振動や熱、経年により電極浮き、電極剥離などがあってはならない。また金属膜は円筒形状の外周面54Aに形成されていれば良く、環状の二つの側面に形成されている必要はない。金属枠体56はコンデンサ電極(金属膜)のリード端子の役割を担うもので、円筒形状の外周面54Aすべてにおいて金属膜に密着している必要はない。接触抵抗が著しく大きくならない程度に接触していればよい。
【0022】
不揮発性媒体52としては、絶縁油を用いることができる。寒冷地で使用する場合には、不凍性を得るため、絶縁油にエチレングリコールを混ぜた混合液としてもよい。またシール性を向上するには、粘性液体であることが望ましい。例えば、高粘度のシリコンオイルを用いることができる。また電解液、イオン液体などの液体も使用できる。不揮発性媒体52としては、シール性の観点では潤滑剤である半固体状のグリースなども使用することができる。
【0023】
高周波結合部46は、前後にシール部としてのグランドパッキン57が設けられている。グランドパッキン57は、パッキン押さえ58で締め付けることで、ロッド16表面を押し付け、不揮発性媒体52をシールする。パッキン押さえ58は、図示しないが、互いを引き寄せる治具を用いて前後方向の内向きに締め付けることができる。ロッド16は、高周波結合部46が設けられる外周面に、円筒形状の樹脂製部材からなるシール層50を設けるのが好ましい。多角形状のロッド16であっても、シール層50はグランドパッキン57とより密着するので、シール性を向上することができる。
【0024】
上記のようにして、高周波結合部46がロッド16に取り付けられることで、絶縁性枠体54を介して、電極として金属枠体56及びロッド16を有する円筒形状のコンデンサが形成される。
【0025】
次に、図5を参照して、検知制御部59について説明する。検知制御部59は、信号発生器60、方向性結合器62、チューニング回路64、反射電力検波器66、電力比較器68、基準値設定部70、電源制御部72を有する。信号発生器60は、高周波信号を発生する。周波数はUHF帯(300MHz〜3GHz)から選択するのが適当である。VHF帯(30MHz〜300MHz)は高周波部品がやや大きくなり、高周波結合部を大型化する必要があり、コンデンサの機能が発揮されなくなる。
【0026】
信号発生器60で発生した高周波信号は、方向性結合器62を介してチューニング回路64へ入力される。チューニング回路64を通じて高周波信号が高周波結合部46の金属枠体56へ出力される。チューニング回路64には、ロッド16からの反射信号が入力される。チューニング回路64は、ロッド16の負荷を変えて反射信号が最も小さくなるように調整する。反射信号は、さらに方向性結合器62を介して反射電力検波器66へ入力される。反射電力検波器66は、入力された反射信号から反射電力信号を生成し、電力比較器68へ出力する。基準値設定部70は、基準値を入力する入力部と、あらかじめ定められた基準値を基準値信号として記憶する記憶部とを有する。
【0027】
電力比較器68は、反射電力検波器66から出力された反射電力信号と、基準値設定部70から取得した前記基準値信号とを比較する。電力比較器68は、反射電力信号に基づく反射電力値が基準値信号に基づく基準値を超えていた場合には、停止信号を生成し、電源制御部72へ出力する。電源制御部72は、停止信号が入力された場合、制御盤27へ供給する電源を停止し、削孔装置10を停止させる。
【0028】
(動作及び効果)
削孔装置10は、第2シリンダー24によって水平方向に対し搖動させて位置合わせをし、コンクリート壁の表面に集塵ヘッド34を押し付けて設置される。この状態で、圧縮装置28及び油圧装置32を起動し、ドリルヘッド12及び第1シリンダー22を作動させる。削孔装置10は、ロッド16が集塵ヘッド34を通りながら、ドリルヘッド12及び高周波結合部46が一体的に前方へ移動する(図6)。そうするとドリルヘッド12を通じてロッド16には打撃力及び回転力が加えられ、第1シリンダー22によって前方へ移動させることで、ビット14がコンクリート壁を削孔する。
【0029】
同時に、吸引装置42を起動することにより、集塵ヘッド34を通じて、削孔塵が吸引される。ロッド16は、集塵ヘッド34がコンクリート壁に押し付けられていることにより、コンクリート壁に対する位置が固定される。
【0030】
ビット14によって削孔がされている間、高周波結合部46には、検知制御部59から高周波信号が入力される。高周波結合部46は、ロッド16に取り付けられていることにより、コンデンサとしてふるまう。通常、ビット14の先端はコンクリート壁に接触しているため、ロッド16の負荷は一定に保たれる。本実施形態の場合、ロッド16の負荷は、チューニング回路64によって、反射信号が最も小さくなるように設定される。検知制御部95は、受信した反射信号を、チューニング回路64、方向性結合器62、反射電力検波器66を経て、電力比較器68へ入力する。電力比較器68は、反射電力信号に基づく反射電力値が基準値信号に基づく基準値を超えるまで、反射電力値と基準値とを比較しながら、削孔を継続させる。
【0031】
削孔中、ビット14がコンクリート壁内の鋼材に近づいたり、接触したりした場合、ロッド16の負荷が変わる、すなわち抵抗が低下するため、ロッド16に流れる電流が増大する。したがって当該ロッド16から検知制御部59へ入力される反射信号が増大する。これにより検知制御部59は、増大した反射信号に基づく反射電力値を、基準値信号に基づく基準値と比較し、反射電力値が基準値を超えていた場合、ただちに削孔を停止する。上記のように削孔装置10は、ビット14が鋼材に近づいたり、接触したりした場合に瞬時に削孔を停止することにより、ビット14の破損を防止することができる。
【0032】
本実施形態の削孔装置10は、コンクリート壁中の埋設物を検知しながら、削孔することができるので、工数を増加させずに、削孔をすることができる。したがって削孔装置10は、ビット14の破損を防止すると共に、工数を低減することができる。
【0033】
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施形態の場合、シール部としてグランドパッキン57を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、Oリングや、Vリングなどを用いてもよい。
【0034】
検知制御部59は、反射電力信号が基準値信号を超えていた場合、ただちに削孔を停止する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、警報音を発して作業者へ通知してもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 削孔装置
12 ドリルヘッド
14 ビット
16 ロッド
34 集塵ヘッド
46 高周波結合部
50 シール層
52 不揮発性媒体
54 絶縁性枠体
56 金属枠体
59 検知制御部
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5 
【図6】
図6 
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