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衣服・履物
 
【発明の名称】膝の負担を軽減する履物の底、およびこれを用いた履物
【出願人】
【識別番号】505198318
【氏名又は名称】小西 登
【住所又は居所】兵庫県養父市上野903
【代理人】
【弁理士】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
【代理人】
【弁理士】
【識別番号】100115152
【氏名又は名称】黒田 茂
【発明者】
【氏名】小西 登
【住所又は居所】兵庫県養父市上野903
【要約】
【課題】
歩行時の膝の負担を軽減する構造を有し、かつ膝の負担を軽減しながら歩くことを可能とする履物の底、さらには、この履物の底を用いた履物を提供する。
【解決手段】
可撓性を有する足裏支持体12と、その前方部12aおよび後方部12cを除く中央部12bを支持する接地体11と、を備え、平坦な床面20に接地体11を接触させ、足裏支持体の中央部12bおよび後方部12cを上方から押圧して足裏支持体の後方端12sを最も下げた状態において、その後方端12sと中央部の後方端12rとを含む第1平面21が、床面20に対し、20度以上の角度αを有し、中央部の後方端12rと中央部の前方端12qとを含む第2平面22が、床面20に対し、角度αよりも小さい角度を有する、履物の底とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する足裏支持体と、前記足裏支持体のつま先側の前方部および踵側の後方部を除く中央部を支持する接地体と、を備え、
平坦な床面に前記接地体を接触させ、前記足裏支持体の前記中央部および前記後方部を上方から押圧して前記足裏支持体の後方端を最も下げた状態において、
前記足裏支持体の後方端と前記中央部の後方端とを含む第1平面が、前記平坦な床面に対し、20度以上の所定の角度を有し、
前記中央部の後方端と前記中央部の前方端とを含む第2平面が、前記平坦な床面に対し、前記所定の角度よりも小さい角度を有する、履物の底。
【請求項2】
前記所定の角度が45度以下である請求項1に記載の履物の底。
【請求項3】
前記所定の角度が25度を超える請求項1または2に記載の履物の底。
【請求項4】
前記第2平面が、前記平坦な床面に対し、15度以下の角度を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の履物の底。
【請求項5】
前記第2平面が、前記平坦な床面に対し、実質的に平行である請求項4に記載の履物の底。
【請求項6】
前記状態からさらに前記前方部を上方から押圧して前記足裏支持体の前方端を最も下げた状態において、前記足裏支持体の前方端が前記第2平面よりも下方に位置する請求項1〜5のいずれか1項に記載の履物の底。
【請求項7】
前記足裏支持体の後方端を0、前記足裏支持体の前方端を100として、前記足裏支持体の長手方向に沿って前記足裏支持体における位置を表示したときに、前記中央部の後方端が30以上60未満の範囲にある請求項1〜6のいずれか1項に記載の履物の底。
【請求項8】
前記足裏支持体の後方端を0、前記足裏支持体の前方端を100として、前記足裏支持体の長手方向に沿って前記足裏支持体における位置を表示したときに、前記中央部の前方端が60以上90以下の範囲にある請求項1〜7のいずれか1項に記載の履物の底。
【請求項9】
前記足裏支持体の長手方向に沿った前記前方部の長さをL1、前記長手方向に沿った前記後方部の長さをL2、前記中央部の前方端における前記接地体の床面からの高さをH1、前記中央部の後方端における前記接地体の床面からの高さをH2、と表示したときに、L1>H1、およびL2>H2が成立する請求項1〜8のいずれか1項に記載の履物の底。
【請求項10】
前記中央部の後方端における前記接地体の高さH2が、3cm以上である請求項1〜9のいずれか1項に記載の履物の底。
【請求項11】
前記接地体が、前記足裏支持体よりも硬質の材料からなる請求項1〜10のいずれか1項に記載の履物の底。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の履物の底と、前記履物の底の少なくとも一部を覆う甲部と、を備えた履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、使用者の膝の負担の軽減に有用な履物の底の構造に関し、さらに、この底を備えた履物、例えばスリッパ、サンダル、靴、に関する。
【背景技術】
「老化は膝から」と言われるように、高齢者の典型的な悩みの一つは膝の不具合である。肥満等による膝の負担の増大により、膝の痛みに悩む人も少なくない。膝の痛みの緩和のために、整体、鍼等の治療を受ける人も多い。膝の痛みが引き起こす最大の問題は歩行である。外出を控えたとしても屋内では移動せざるを得ないため、せめて屋内では、膝の痛みが緩和された状態で歩きたい、というのが膝に支障を抱える人に共通する願望である。
杖のような歩行補助具を除けば、歩行に用いる唯一の道具は履物である。しかし、これまで、膝の負担の軽減のために履物を改善する試みが十分に為されてきたとは言い難い。これは、おそらく、以下に例示するように、これまでの履物が、健常者を対象として、あるいは高齢者を対象としたとしても歩行に支障を感じる程度には膝に痛みを感じない高齢者を対象として、設計されてきたためである。
特許文献1は、前傾斜面と後傾斜面とがV字型形状を構成する靴底を開示している。特許文献1によれば、この靴底を用いると、面着地および面蹴りが可能になるため、軽いウォーキングでも青竹踏み効果、ハイヒール効果等が得られる。
特許文献1が開示する靴底は、膝に痛みを抱える人の歩行を楽にするものではない。この靴底を取り付けた靴を履くと、後傾斜面から前傾斜面へと接地面を移行させたときに使用者の体勢が前方へと大きく傾くことになって膝の負担が却って過大となる。
特許文献2は、「健康ダイエット」用の履物として、つま先から土踏まずにかけての部分を厚底とした履物を開示している。この履物は、ジョギング等の運動効果を増すこと等を目的として設計されたものであり、特許文献1が開示する履物と同様、使用者として健常者を想定している。
特許文献2が開示する履物では、つま先側に厚底を配置することにより、つま先側を踵側よりも高く持ち上げている。この履物では、つま先側が地面(床面)に対して1〜25度の角度を有する。しかし、つま先側が踵側よりも高いいわゆる逆ヒール靴では、一般に、ヒールを高くして傾斜を急にすると歩きやすさが損なわれる。特に、つま先側が床面に対して20度以上の角度を有するようになると、特許文献2が開示するような逆ヒール靴では、直立姿勢を安定して保つことさえ困難となる。
特許文献3は、高齢者を対象として設計された逆ヒール靴を開示している。この靴は、爪先側端部近傍のトゥボックスの幅をそれよりも踵側のボールジョイントの幅よりも大きくし、かつ爪先側端部のトゥスプリングを高くし、靴の踵部のヒールカップの傾斜を爪先方向に傾けた構造を有する。特許文献3によると、逆ヒール靴を履くと歩行時に足関節が軽度に背屈位になるため、高齢者には、支持性の向上、歩き易さ、歩行能力の増大、姿勢の改善といった利点がもたらされる。特許文献3が開示する靴は、靴の幅の調整によって足趾の開排運動を容易とするものである。
特許文献3が開示するように、靴の踵部を前方の爪先側に傾けると、使用者の膝は足首よりも前方に位置することとなり、膝を曲げて立つことになる。このため、使用者の膝の負担は緩和されない。特許文献3が開示する靴は、上体が前屈する高齢者特有の姿勢の矯正には役立つが、膝に痛みを抱える使用者に適したものではない。特許文献3が開示する逆ヒール靴においても、つま先側が地面に対して20度以上の角度を有するようになると、直立することが困難となる。
【特許文献1】
特開平11−285401号公報
【特許文献2】
特開2004−16797号公報
【特許文献3】
特開平5−277001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
上述のとおり、履物の底については、各種の改善が提案されている。しかし、膝に痛みを抱える使用者の歩行に適した履物の底は未だ知られていないのが現状である。かかる事情を鑑み、本発明は、歩行時の膝の負担を軽減する構造を有し、かつ膝の負担を軽減しながら歩くことを可能とする履物の底、さらには、この履物の底を用いた履物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
本発明は、可撓性を有する足裏支持体と、前記足裏支持体のつま先側の前方部および踵側の後方部を除く中央部を支持する接地体と、を備え、平坦な床面に前記接地体を接触させ、前記足裏支持体の前記中央部および前記後方部を上方から押圧して前記足裏支持体の後方端を最も下げた状態において、前記足裏支持体の後方端と前記中央部の後方端とを含む第1平面が、前記平坦な床面に対し、20度以上の所定の角度を有し、前記中央部の後方端と前記中央部の前方端とを含む第2平面が、前記平坦な床面に対し、前記所定の角度よりも小さい角度を有する、履物の底を提供する。
本発明は、さらに、本発明の履物の底と、前記履物の底の上方の一部を覆う甲部と、を備えた履物を提供する。
【発明の効果】
本発明の履物の底では、足裏支持体の後方端と中央部の後方端とを含む第1平面が床面に対して十分に大きな角度を有するように中央部が高く持ち上げられて、使用者の足の後側の筋肉、特にふくらはぎの筋肉が伸びて緊張した状態となるため、膝の負担が相対的に軽くなる。また、本発明の履物の底では、第2平面が第1平面よりも床面に対して小さな角度を有するため、中央部に体重をかけることにより、後方部が床面に対して大きな角度を有するにもかかわらず、使用者が楽に直立し、歩行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好ましい形態について説明する。
図1〜図3に、本発明の履物の一例としてスリッパを示す。このスリッパ1は、接地体11および足裏支持体12からなる底部(ソール)10と、足裏支持体12上に配置された中敷き部(インナー)13と、足裏支持体12および中敷き部13の上方の一部を覆う甲部(アッパー)14と、を備えている。
接地体11は、その外形が直方体であって、接地面11aにおいて床面20に接し、接地面11aと実質的に平行な支持面11bにおいて足裏支持体12の一部を支えている。本明細書では、足裏支持体12において、接地体11に支えられている部分12bを中央部、中央部12bよりもつま先(トゥ)側の部分12aを前方部、中央部12bよりも踵(ヒール)側の部分12cを後方部、と呼ぶ。また、以降、つま先側を前方、踵側を後方と呼ぶ。
このスリッパ1では、接地体11と足裏支持体12とが、2本の釘51,52により固定されている。釘51,52は、中敷き部13の上方から打ち込まれ、その先端が中敷き部13および足裏支持体12を貫通して接地体11に至り、これらの部材11,12,13を一体化している。歩行の際には中央部の後方端12r近傍に大きな力が加わるため、1本の釘52は、後方端12r近傍において足裏支持体12を貫通している。固定を確実にするため、釘52は、その先端がやや前方に位置するように傾斜して打ち込まれている。ただし、一体化の方法は、釘に限らず、螺旋、接着剤等を用いてもよい。
足裏支持体12は、中敷き部13とともに可撓性(撓みうる性質)を有し、上方から押圧するとその前方部12aおよび後方部12cにおいて下方へと撓む。接地体11は、足裏支持体12よりも硬質の材料、例えば合成樹脂、木材、からなる。
図4に、足裏支持体の中央部12bおよび後方部12cを上方から押圧し、後方端12sを床面20に接触させた状態を示す。この状態は、人(使用者)がスリッパ1を履いて直立した状態を想定したものである。直立した状態では、前方部12aにかかる体重は小さいため、中央部12bおよび後方部12cのみを上方から押圧した状態を想定しても差し支えはない。
図4に示した状態では、足裏支持体の後方部12cは、接地体11により持ち上げられた中央部12bの後方端12rから後方に進むにつれて下方へと向かい(床面20に近づき)、後方端12sで床面20に接している。この状態で、足裏支持体の後方端12sと中央部の後方端12rとを含む平面(第1平面)21を想定すると、第1平面21は、床面20に対して角度αだけ傾いている。角度αは20度以上となるように設定される。
人の足首は、上方には20度程度までは曲がると言われている。足首の上方への曲げ(背屈)が20度程度以上になると、足首から股関節にかけての足の後側の筋肉、特にふくらはぎの筋肉、が緊張する。このような足の後側の筋肉の緊張は、膝の負担を軽減し、結果として膝の痛みを緩和する。この効果を大きくする必要がある場合には、25度を超えるように角度αを設定してもよい。
しかし、単に角度αを大きくするのみでは、安定して立つことができなくなって膝の負担を軽減する効果を得ることが却って困難となる。このため、足裏支持体の中央部12bは、後方部12cよりも床面20に対する角度が小さくなるように、換言すれば床面20に対する傾きが小さくなるように、設定する。より詳しく述べると、中央部の前方端12qと後方端12rとを含むように設定される平面(第2平面)22は、床面20に対する角度が実質的に0度、即ち床面20に対して実質的に平行、である。中央部12bは、使用者が安定して立つための支持面を提供する。
図4に示した状態、すなわち足裏支持体の中央部12bおよび後方部12cを押圧した状態では、足裏支持体の前方端12pは、第2平面22よりも上方に位置する。より詳しくは、足裏支持体の前方部12aの一部は第2平面22よりも下方に位置するが、前方端12p近傍はやや上方へと変形して第2平面22よりも上方に位置する。前方部12p近傍の局部的な上方への反りは歩行感の確保に重要である。
もっとも、この状態(図4)からさらに足裏支持体の前方部12aを上方から押圧して足裏支持体の前方端12pを最も下げた状態とすると、前方部12aが撓み、前方端12pは第2平面22よりも下方に位置することになる。
スリッパ1の長手方向に沿った足裏支持体の前方部12aの長さをL1、同長手方向に沿った後方部12cの長さをL2、中央部の前方端12qにおける接地体11の床面20からの高さをH1、中央部の後方端12rにおける接地体11の床面20からの高さをH2とすると、長さL1、L2はそれぞれ高さH1、H2よりも大きいことが好ましい(L1>H1、L2>H2)。この関係が成立する場合、足裏支持体12の上方から前方部12aおよび後方部12cを押圧すると、足裏支持体の前方端12pおよび後方端12sは、ともに床面20に接することになり、安定した歩行が可能となる。
従来の逆ヒール靴の底部(例えば特許文献3)では、図5に示すように、接地体111が足裏支持体112を支持する角度α’は足裏支持体の部位によらず一定であった。このため、角度α’が20度以上となる程度に逆ヒールが大きくなると、使用者が安定して立つことが難しくなる。これに対し、スリッパ1では、足裏支持体の後方部12cにおいて使用者に逆ヒール構造による効果を与えながら、足裏支持体の中央部12bにおいて安定して立つための支持面が設定されている。しかし、この構造を採用したスリッパ1においても、角度αが大きすぎると使用者が安定して立つことが困難となる。このような観点から、角度αは45度以下、特に40度以下、が好適である。
図4に示した状態からさらに足裏支持体の後方部12cを上方から強く押圧して後方部12cを下方へと撓ませると、足裏支持体の後方端12sがやや接地体11に近づいて角度αが若干大きくなることがある。これによる角度αの相違はごく僅かではあるが、正確を期すため、本明細書では、角度αの値として、足裏支持体の後方端12sが最も下がった状態で取りうる最小値を採用することとする。
図6に示すように、足裏支持体の後方端12sを0、前方端12pを100として、足裏支持体12の長手方向に沿って足裏支持体12における位置を表示したときに、中央部の後方端12rは、30以上60未満、35以上55以下、の範囲にあることが好ましく、前方端qは、60以上90以下、特に65以上85以下、の範囲にあることが好ましい。後方端12rおよび前方端12qが上記範囲にあると、膝への負担を軽減しつつ歩行感を良好に保つことが容易となる。
上記に従って表示したときに、中央部の後方端12rが35以上50以下の範囲にあると、使用者の土踏まず近傍が刺激され、心地良く歩行できる。また、中央部の前方端12rが65以上80以下の範囲にあると、足の趾骨の下方への曲がりが自由になってさらに歩きやすくなる。
接地体の高さH2は、角度αが20度を超える値となるように設定すればよく、例えば、3cm以上、特に4cm以上、にとすればよい。接地体の高さH1は、H2と同じであることが望ましいが、必ずしも同じでなくてもよい。
図6を参照して、足裏支持体の中央部12bの好ましい長さを説明する。中央部12bが極度に短いと、使用者は安定して直立しにくい。これを考慮すると、足裏支持体の後方端12sを0、前方端12pを100として表示する、中央部の後方端12rの位置の値から前方端12qの位置の値を引いた差分は、10以上、特に15以上、が好ましい。
図7A〜図7Cに、使用者30が着用した状態のスリッパ1を示す。使用者30が直立した状態(図7A)では、使用者30の体重は、実質的に、足裏支持体の後方部12cおよび中央部12bにかかっている。この状態では、使用者の足の後側の筋肉31、より詳しくは膝から足首にかけてのふくろはぎ部分の筋肉、が緊張し、これにより膝にかかる負担が相対的に軽減される。使用者30は、足裏支持体の中央部12に体重をかけることができるため、足首32が背屈しているにもかかわらず、安定して直立できる。
歩行開始のために使用者30が体重を前方にかけると(図7B)、足裏支持体の後方端12sが床面20から離れて上方へと移動し、前方端12pが下方へと移動する。使用者30がさらに体重を前方にかけると(図7C)、接地体11の接地面11aの一部が床面20から離れ、足裏支持体の前方端12p近傍が床面20に接することとなる。
図7A〜Cに示すように、歩行中、足裏支持体の前方部12aおよび後方部12cは、使用者の体重のかけ方によって下方へと大きく撓む。接地体11により中央部12bが持ち上げられた足裏支持体12の場合、足裏支持体12に可撓性がないと、使用者は歩行に伴う体重移動を円滑に行うことができないが、このスリッパ1では、このような不都合はない。他方、中央部12bは、硬質の接地体11に支えられ、使用者30の体重をしっかりと支える。前方部12aおよび後方部12cの可撓性と、中央部12bの非可撓性とが、歩行感の向上に重要な役割を果たす。
実際の歩行では、大股に歩こうとしなければ、図7Cに示した程度にまで体重を前方にかける必要はない。図7Cに示した姿勢では膝に負担がかかりやすいため、図7Bに示した姿勢から(図7Cに示した姿勢を経由せずに)他方の足を前方へと踏み出して図7Aに示した姿勢に戻る歩行が、膝に痛みを抱える使用者にはむしろ適している。
図8に、本発明を適用したスリッパの別の一例を示す。このスリッパ2も、接地体25,足裏支持体12,中敷き13および甲部14を備えているが、接地体25は、足裏支持体の中央部(前方端12qと後方端12rとの間)において足裏支持体12と接合されている。接地体25は、接地面25aおよび支持面25bがともに曲面である点で、接地体11と相違する。このように接地体は、直方体に限らず、各種形状であってよい。
このスリッパ2では、第2平面22が、床面20に対して角度βを有する。第2平面22は、床面20に平行でなくてもよいが(β≠0)、角度βは、第1平面21と床面20とがなす角度αよりも小さくなるように設定される(α>β)。足の裏を安定して支持するためには、角度βは15度以下、特に10度以下、が好ましい。
本発明は、スリッパに限らず、サンダル、各種の靴を含む種々の履物に適用が可能である。サンダル等に適用する場合にも、可撓性を有する足裏支持体を用いるとよい。可撓性は、歩行に伴って変形が必要になる前方部12aおよび後方部12cにおいて付与されていればよく、可撓性の程度は、想定される使用者の体重(例えば60kg)がかかったときに撓むことができればよい。足裏支持体は、図示した形状に限られるわけではなく、その履物の種類に応じた形状に設計すればよい。本発明の履物の底は、図示した以外の部材を有していてもよく、例えば紳士靴や婦人靴に適用する場合には、足裏支持体の後方端の裏側にヒールを貼り付けてもよい。
甲部は、歩行に伴う足裏支持体の撓みを大きく制限しない構造を備えていることが望ましい。スリッパやサンダルのように、甲部が、足裏支持体の側部全体を囲まないように配置されている履物(足裏支持体の前方部分の上方のみに配置される履物)では、甲部が足裏支持体の変形を大きく制限することはない。しかし、一般的な紳士靴や婦人靴のように、甲部が足裏支持体の側部全体を囲むように配置されている履物では、甲部が足裏支持体の適切な変形を阻害し、足裏支持体が図7Aから図7B、さらには図7Cに示した状態に至るように変形できない。これを防ぐためには、例えば、足裏支持体の前方部および後方部を中央部に対して曲げる動作に甲部が追随するように、甲部の少なくとも一部を伸縮可能な材料から形成するとよい。
【産業上の利用可能性】
以上説明したとおり、本発明の履物の底は、膝に痛みを抱える人の歩行を補助するものとして、当該技術分野において多大な利用価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の履物の一例の斜視図である。
【図2】図1に示した履物の別の角度からの斜視図である。
【図3】図1に示した履物の側面図である。
【図4】図1に示した履物を変形させた状態を示す側面図である。
【図5】逆ヒール構造を有する従来の履物の底の構造を示す側面図である。
【図6】足裏支持体の位置の表示を説明するための側面図である。図1に示した履物の使用状態を示す側面図である。図7Aとともに、図1に示した履物の使用状態を示す側面図である。図7AおよびBとともに、図1に示した履物の使用状態を示す側面図である。
【図8】本発明の履物の別の一例の側面図である。
【符号の説明】
1,2 スリッパ
10 履物の底
11,25,111 接地体
11a,25a 接地面
11b,25b 支持面
12,112 足裏支持体
12a 前方部
12b 中央部
12c 後方部
12p 足裏支持体の前方端
12q 中央部の前方端
12r 中央部の後方端
12s 足裏支持体の後方端
13 中敷き
14 甲部
20 床面
21 第1平面
22 第2平面
30 使用者
31 足の後側の筋肉
32 足首
51,52 釘
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
【図6】
図6
【図7A】
図7A
【図7B】
図7B
【図7C】
図7C
【図8】
図8
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