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繊維・紙
 
【発明の名称】規則性極微構造繊維の形成方法
【出願人】
【識別番号】505326874
【氏名又は名称】田畑 洋
【住所又は居所】神奈川県横浜市港北区篠原台町17−6
【発明者】
【氏名】田畑 洋
【住所又は居所】神奈川県横浜市港北区篠原台町17−6
【氏名】清水 進
【住所又は居所】神奈川県秦野市鶴巻北1丁目22番9号
【要約】
【課題】
屈折率や強度、弾性など物性の異なる少なくとも2種類以上の高分子材料を用いた複合繊維内の長軸または長尺方向に一様な極微の規則性配列構造を有する集合体や同形状または異形状の集合体群を複数形成する方法。
【解決手段】
前記物性の異なる少なくとも2種類以上の溶融高分子材料の一方成分を一定の配列に隔離された複数の開口に連なる貫通孔から供給し、他方の成分を貫通孔間に設けた流路とその流路出口に繋がる周囲に設けた流速と流れ方向制御用緩和溝を経由して供給し、一定配列構造を維持した状態で合流させた後に下方に続く漏斗状流路にて圧縮細化し、その外周部を何れかの成分で被覆後に再び圧縮して成るか、前記工程を多段的に繰り返して圧縮比を高めるごとき口金により、極微構造体の寸法及び極微構造体間のピッチ間隔等も制御した極微の規則性配列構造繊維を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海島型溶融複合紡糸において、紡糸性を有する物性の異なる2種類以上の高分子材料から選択された一方の島部形成成分を紡糸口金に設けられた規則的配列を有する複数の開口に連なる貫通孔に供給し、もう一方の海部形成成分を該貫通孔間に設けた別流路に供給し、各貫通孔下部出口を一定間隔位置で囲うよう設け、かつ該貫通孔下部からの吐出流速と流層を乱さないようにする流速制御と流れの方向制御を兼ねた海部成分用の前記別流路に連なる緩和溝を通して供給し、その下流にて島成分を一定間隔で囲い合流させ、海成分内に規則的な島成分の配列構造を有する複合流体を形成させた後、その下流にて圧縮細化し、複合流体Iとなし、更にその下流にて、別に設けられた流路から該海成分またはその他の成分を供給し、該複合流体Iの外周を囲う複合流体とし、その下流にて圧縮細化して複合流体IIを得るようにすることを基本として順次形成し、紡糸、延伸などにより、繊維長軸または長尺方向に一様で、かつ規則的配列構造が得られることを特徴とする規則性配列極微構造繊維の成形方法。
【請求項2】
請求項第1項において、複合流体Iの出口に直接連なる流路を設け、該流路と並行した別の位置に請求項1項記載の複合流体Iを形成するのと同様の流路工程を設けることで複合流体I’を形成し、前記複合流体Iとともにその下流に設けた別流路から供給される該海成分、またはその他の成分により囲い、その下流にて圧縮細化して複合流体IIIとし、これらの工程を必要に応じて多段的に順次行い、紡糸、延伸などにより、繊維長軸または長尺方向に一様で、かつ規則的配列構造が得られることを特徴とする規則性配列極微構造繊維の成形方法。
【請求項3】
請求項第1、第2項において、光の回折・散乱機能発現に際し、繊維内の島部形成成分群により形成される長軸方向に一様な極微構造体は繊維の長軸または長尺方向に垂直な断面において、規則的配列構造を持ち、該島部形成成分により形成される極微構造体の直径(2r=D)、それらの直径中心間距離(P)との間に
2r(D)<P
の関係を有し同時に光の波長λとの間には
λ≧2r(D)
の関係を有することを特徴とする請求項第1項記載の規則性配列極微構造繊維の形成方法。
【請求項4】
請求項第1項から第3項記載の極微構造繊維の形成において、微量高精度の吐出量制御機を少なくとも1機以上具備し、好ましくはその精度が繊維1フィラメント当たり0.001ml/min以上の吐出量を制御できることを特徴とする請求項第1項から第3項記載の規則性配列極微構造繊維の形成方法。
【請求項5】
請求項第2項記載の各流体を圧縮流動して細化するための流路において、その出口側が入り口側形状と相似的に縮小している流路、または入り口側形状と異なった圧縮比率で縮小している流路、或いは前記流路が少なくとも1つ以上複合された流路により形成されることを特徴とする請求項第1項から第4項記載の規則性配列極微構造繊維の形成方法。
【請求項6】
請求項第1項、第2項記載の規則的配列を有する複数の開口及びそれに連なる貫通孔流路が縦横の行列配列、3角形配列(千鳥配列)、5角形配列、6角形配列、8角形配列などの多角形配列による規則的配列を有することを特徴とする請求項第1項から第5項記載の規則性配列極微構造繊維の形成方法。
【請求項7】
請求項第1項、第2項記載の規則的配列を有する複数の開口及びそれに連なる貫通孔流路が円形や楕円形、長円形、四角形、矩形、多角形、その他の異形状からなる1種類以上の形状により形成されることを特徴とする請求項第1から第6項記載の規則性配列極微構造繊維の形成方法。
【請求項8】
請求項第1項記載の規則的に配列された複数の貫通孔流路が2種類以上の異なる寸法及び形状を含むことを特徴とする請求項第1項から第7項記載の規則性配列極微構造繊維の形成方法。
【請求項9】
請求項第2項記載の規則的に配列された複数の貫通孔流路各々の出口側が海部形成成分の流体内に突出した状態で島部形成成分が流出することを特徴とする請求項第1項から第8項記載の規則性配列極微構造繊維の成形方法。
【請求項10】
請求項第1項、第2項記載の島部形成成分が規則的配列構造を持つ複合流体I、I’、II、II’・・・N、N’を圧縮流動して細化するその出口側が海部形成成分の流体内に突出した状態で吐出されることを特徴とする請求項第1項から第9項記載の規則性配列極微構造繊維の形成方法。
【請求項11】
請求項第2項記載の島部形成成分が規則的配列構造を持つ複合流体I、I’、II、II’・・・N、N’を圧縮流動して細化し、吐出して繊維化する断面形状が円形や楕円形、長円形、四角形、矩形、多角形及びその他の異形状からなることを特徴とする請求項第1項から第10項記載の規則性配列極微構造繊維の形成方法。
【請求項12】
請求項第1項、第2項記載の海成分を供給する規則的配列を有する開口から連なる各貫通孔出口端に設けた緩和溝形状が一定面積の矩形、三角形、四角形、菱形等の各種異形状により形成されることを特徴とする請求項第1項から第11項記載の規則性配列極微構造繊維の形成方法。
【請求項13】
請求項第1項、第2項記載の複合流体I、I’、II、II’・・・N、N’等の極微構造体を有する繊維の外周被覆部成分を除去し、該複合流体部を分離した繊維とすることを特徴とする請求項第1項から第12項記載の規則性配列極微構造繊維の形成方法。
【請求項14】
請求項第1項記載の規則性配列極微構造繊維形成用の紡糸口金において、島成分を供給するための開口が複数集合して規則性配列をなし、該開口はその下部の貫通孔に連なり、該貫通孔間には海成分を供給する別流路が配置され、該流路の下部出口側が各貫通孔出口を囲むように配置された緩和溝に連なり、その下流側に海島構造でかつ規則性配列構造を有する複合流体が徐々に細化して複合流体Iと成すための漏斗状流路を有し、該漏斗状流路の下流出口に該複合流体Iの少なくとも1つを囲うための海成分を供給する流路を有する別の漏斗状流路により、さらなる複合流体を段階的に形成、細化し吐出口から吐出する構造を有することを特徴とする請求項第1項から第13項記載の規則性配列極微構造繊維成形用紡糸口金。
【請求項15】
請求項第2項記載の規則性配列極微構造繊維形成用の紡糸口金において、複合流体Iを形成するための漏斗状流路の出口が下流流路に連なる構造であり、並行した別の位置に同様の構造による別の複合流体I’を形成し、該複合流体I’の下流流路出口と前記複合流体Iの出口の下流流路出口は並行した別位置に設け、その下流にて両者の周囲を囲うための海部を形成する成分を供給する流路を有する漏斗状流路を配して新たな複合流体を形成し、徐々に細化して複合流体IIIをなすごとくに多段的に成形できるようにしたことを特徴とする請求項第1項から第14項記載の規則性配列極微構造繊維成形用紡糸口金。
【請求項16】
請求項第14項、第15項記載の海成分を供給する流路に連なる緩和溝が島成分の流路の貫通孔出口を均一に囲う位置に一定面積の矩形、三角形、四角形、菱形、扇形などの各種異形状で設けられていることを特徴とする規則性配列極微構造繊維成形用紡糸口金。
【請求項17】
請求項第14項、第15項記載の複合流体の断面寸法を徐々に細化するための漏斗状の流路形状において、漏斗の上流側形状と下流側開口形状が相似形となる流路、または圧縮比率を異にする、またはそれらを複合する流路としたことを特徴とする規則性配列極微構造繊維成形用紡糸口金。
【請求項18】
請求項第14項、第15項記載の規則的配列を有する開口に連なる貫通孔が縦横の行列配列、3角形配列(千鳥配列)、5角形配列、6角形配列、8角形配列などの多角形配列などを含む規則的な配置となっていることを特徴とする規則性配列極微構造繊維形成用紡糸口金。
【請求項19】
請求項第14項、第15項記載の開口に連なる貫通孔や漏斗状流路の出口や吐出孔が円形、楕円形、長円形、四角形、矩形、多角形、などの異形状からなる1種類以上の開口形状であることを特徴とする請求項第14項から第18項記載の規則性配列極微構造繊維成形用紡糸口金。
【請求項20】
請求項第14項、第15項記載の貫通孔の出口、各漏斗状流路と密着した下流の流路出口が突起形状を有することを特徴とする請求項第14から第19項記載の規則性配列極微構造繊維形成用紡糸口金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、光の回折・散乱に基づく新規な光学的特性を発現する繊維や繊維内にマルチに光ファイバー機能を形成する、あるいはまた、繊維の長尺方向に等方的な強度や導電性などの発現を得るための基盤技術として、繊維内の長軸或いは長尺方向に一様で高度に制御された極微構造を有する繊維の形成方法及びそのための紡糸口金に関する。
【背景技術】
近年、織編物用繊維は、多様な風合いや機能を持つ繊維の開発・実用化が進められている。特に、繊維の断面形状を各種の異型断面にすることにより、柔軟性や肌触りの向上や表面光沢の向上などの工夫がされてきた。また、2種類の高分子材料を複合化する際に空気層を設けるなどにより、膨らみや保温性などを付加したものや複合繊維化した後、一方の成分を除去した極細繊維などが実用化されている。
また、上記織編物用繊維への要求の一つに高深色性がある。物体色は可視光線領域の光の吸収により発色するため、染料や顔料による発色により良好な深色性を得ようとする場合、染料や顔料に含まれる不純物を極度に低減して高純度にする必要があり、高価にならざるを得ない。そのため、繊維表面を微細に荒らす加工を施すことで表面反射光を低減させることで深色性を得ている。更に、個人差があるものの染料や顔料による繊維はその染料や顔料により、かぶれや肌荒れなどの一要因になったり、紫外線などによる退色により、初期品質の低下などの欠点がある。
また、染料による染色工程や顔料による混練工程における処理エネルギーや洗浄による廃液処理なども必要になり、工程及び環境上からも改善への要望は大きいものがある。
近年、このような染料や顔料など物体色あるいは化学色ではなく、光の物理的反射現象を用いた発色材料が作製されている。それらの方法として、光との相互作用を発現するように物体表面やその内部に高度に制御された微細構造を工夫する幾つかの公知技術が知られている。
例えば、光の干渉反射作用を利用することにより発色する構造体としては、分子配向異方性フィルムを2枚の偏光フィルムで挟んだ構造とすることにより発色する材料が発表されており、第一の偏光フィルムに法線方向から光が入射すると、このフィルムを通った光は一定方向のみに振動する光(直線偏光)となり、次にこの直線偏光が45度に配位した分子配向異方性フィルムを通ると偏光面を回転させて楕円偏光に変わる。そして、この楕円偏光が第2の偏光フィルムを通ると再び直線偏光となるが、その際に、波長によって光の強さが異なるために、それが着色偏光となって色として認識されることによるものである(非特許文献1、非特許文献2)。
また、屈折率の異なる2種類の高分子材料を、交互に何十層と積層した構造により発色する繊維の製造方法も報告されおり、屈折率の異なる交互積層界面で生じるフレネル反射が重なって干渉を起こし、その結果として反射率の波長依存性や反射率そのものの増強などの現象を生じるもので、特定波長で特定位相差を持って重なり合うときに現れる発色である(特許文献1、特許文献2)。
例えば、特許文献1には少なくとも第1と第2の高分子材料の屈折率がお互いに少なくとも0.03異なり、しかも0.1μm程度の厚さで積層させたフィルム状の反射性ポリマー物体を開示している。更に、特許文献2においては屈折率の異なる2種類の高分子物質からなる交互積層構造を有する繊維状の発色構造体を開示している。後者は非染色の発色繊維であって、見る角度によって色味が変わり、しかもこれらの撚糸による複合効果により、多様な質感の織編物を可能としている。
上述の繊維を製造するための製造法や紡糸口金は、例えば、矩形断面の繊維の中に薄膜の多層積層構造を形成するためのものであって、いずれの場合も2種類の屈折率の異なる高分子材料を各々が相対する方向から、すなわち上下、または左右方向から供給し同時に積層構造を形成し扁平な繊維にする方法が開示されている(特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
また、上述の供給方法において、上下の開口部から供給され積層構造を形成しその流体がC型の溝に入り矩形に成型されている(特許文献6)。更に、別の供給方法として、ストリーム法と呼ばれる方式であって、幅広の溝に一方の高分子材料を流し、その直上の一列に並んだ孔から他の高分子材料を供給し積層構造を形成する方式が開示されている(特許文献7)。
更に、物理的光の反射作用を利用した構造体として、繊維表面の平面或いは凹面上に多数の所定の溝(間隔と深さ)を規則的に形成させ、形成溝による光路長差(ΔL=mλ :ただしmは回折次数で、m=0,1,2・・・)に基づき回折発色を得るとしている(特許文献8、特許文献9、特許文献10)。
また、最近では、紫外線領域や可視光線領域、赤外線領域における特定光波長の反射を回折・散乱作用に基づき反射させるために必要とされる繊維の規則性極微断面構造について開示された(特許文献11)。
一方、繊維の製造法としては、一般的に「海島型複合繊維」と称されている繊維の紡糸法や紡糸口金が提案されている。例えば、少なくとも3枚の口金板群で構成され、該口金板群間に海島成分の流路を形成し、この流路中に島成分を導入する管状体群を設け、各管状体の周囲、即ち、外壁に沿って海成分を供給し、各管状体の下部で海島型の一次複合流を形成させる。この島成分と海成分が会合して一次複合流体を形成する部分を多少拡大して流速を緩和させ、海島形成の安定化を図るとしている。(特許文献12)。しかし、このような口金機構においては、海島成分が会合した際の両成分の境界層が不安定になり易く、また広範な流速への対応に問題が生じ易く、安定かつ明瞭な境界層を維持した複合流体が得られ難い。また、島成分間距離も一定に維持し難いため、島成分の規則性配列構造を得ることは困難である。
上述の如く、従来の繊維形態から多様な微小構造形態への開発・実用化が行われている。
【特許文献1】
特開平4−295804号
【特許文献2】
特許第3036305号
【特許文献3】
特開平11−1817号
【特許文献4】
特開平11−1818号
【特許文献5】
特開平11−189911号
【特許文献6】
特開2000−178825号
【特許文献7】
特開平11−1819号
【特許文献8】
特開昭62−170510号
【特許文献9】
特開昭63−120642号
【特許文献10】
特開平8−23007号
【特許文献11】
特開2003−227923号
【特許文献12】
特開2000−129531号
【非特許文献1】
繊維機械学会誌Vol.42,No.2,P55(1989)
【非特許文献2】
繊維機械学会誌Vol.42,No.10 P160(1989)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
管状体群を狭い面積内に多数配置するには、管状体間のピッチ間隔寸法やその接合法の制約から限界があると同時に加工精度や位置精度のばらつきが大きいことから流量の分配や島成分の間隔寸法の正確さを求めるのは困難であり、海島成分の融着防止には有効であるが、海成分内に極微の島成分の規則的配列構造を高精度に、しかも長期間安定的に得ることは困難である。また、海島構造による複合繊維系において、高精度極細繊維の例でも従来の海島型複合繊維成形の目的が島成分分離による島成分の取得にあることが多いため、島成分そのもののサイズ径や島成分間の間隔寸法の精度制御は低いため、精密な物理光学的光機能の設計や方向性精度の高い機械物性、導電物性などを要求する種々の繊維機能制御に繋がる規則性ある極微構造の成形方法やそのための口金の設計及び紡糸制御システムにはなっていないという問題がある。
本発明は、従来の構造体の機能及びそれらの形成法から来る前記課題に着目してなされたものであって、上述の如き諸々の機能を得るための高度な極微構造制御への基本となる構造体を具現化するための新概念の口型及びそれらを用いた新規構造体の形成法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための新規な基本構造として、これまで不可能であると考えられてきた極微細構造体を繊維内に規則的に配列した繊維断面構造を得る手段を説明するにあたり、もっとも精度を必要とする光の回折・散乱作用に基づく反射機能を発現させるための海島(芯鞘)型複合繊維における基本的な回折・散乱型極微断面構造の具現化方法を例として以後記すこととする。
まず、繊維の断面構造において、光の回折・散乱機能発現の条件を満たすに十分な極微配列構造体はその直径を2r(=D)、極微構造体の配列方向をx軸方向及びそれとの直交方向のy軸方向にあるピッチ間寸法をPとすれば、2r(=D)≦Pを満たすものであって、散乱理論に基づき基本的因子である極微構造体粒子のパラメータサイズαと波長λとの間には、α=(λ/2πr)の関係を維持することが重要な視点である。
このような条件を具現化する極微構造体を形成するために重要なことの一つは、この極微構造体を形成するための極微量の供給法である。その吐出量は目的する反射波長と繊維の太さ並びに極微構造体を構成する極微体の数にもよるが、概ね1フィラメント当りに対し、0.001ml/min〜0.1ml/minとなる。本発明では、繊維の極微構造体を構成する島成分である高屈折率成分(A)の極微量を精確に吐出制御できる供給機から開口群I(図4参照)の21に導き、別に設けた分配流路から海成分である低屈折率成分(B)を開口群II(図4参照)の22に供給し、満たされた残りの海成分(B)を次の流路によって、図2に示したように形成された一定規則の配列を持つ複合流体I、複合流体II、複合流体III、複合流体n(図2参照)の外周部に分配すること、あるいはこの外周部成分は更に別の流路からその他の成分を供給できるようにしたことを特徴としている。
次の解決手段は屈折率の異なる高分子材料の極微量を吐出制御できる供給機から、極微構造体の規則的配列位置を正確に保つための手段として、耐食性を重視する場合はSUS316や硬度を重視する場合はSUS630などを用いた複数のプレートで組み立てられた紡糸口金内(図6参照)において、極微構造体を構成する島成分(A)を複数の開口群1に供給分配し、別な供給機及び流路から、もう一方の海成分(B)を開口群Iの各開口の周辺部に隔離して設置された複数の開口群IIに供給分配する。該開口群IIは島成分(A)どうしの間に配置され、開口群Iと交わることなく、その出口側開口部は開口群Iの各開口周囲を囲む形状となっている。島成分(A)は開口群Iの各々の開口から、また、海成分(B)は開口群Iの各開口を囲む形状の開口群II2によって夫々平行に流出して、その下流側で合流させる。また、図5に示す海成分の流路22の下部を緩和溝加工することでのすることにより、海成分の流速を制御することで液流を乱すことなく、かつ島成分(A)の位置関係を適正に維持した複合流体とすることができる。この段階で繊維化されたときの極微構造体を得る前躯体である一定規則の配列構造を持つ複合流体Iを形成することを特徴としている。
更なる解決手段として、前記複合流体Iを下流側流路により圧縮流動し、一定規則の配列構造を維持し複合流体Iを相似的に細化すること及びその圧縮比率をより高めることを目的として、一旦、圧縮流動により細化した複合流体Iの周囲を海成分(B)或いはその他の成分により囲い、複合流体IIを形成し、再び圧縮流動して細化する。圧縮流動する場合には、複合流体IIの断面の圧縮比が相似的比率、非相似的比率のいずれか一つ以上を含む圧縮流路を通過して細化することを特徴としている。
更に次の解決手段として、一定規則の配列構造を構成している集合部分を繊維断面の適正な部位に配置する目的で、前記の圧縮流動する流路並びに複合流体I、複合流体IIを平行移動させる流路を有することを特徴としている。
次なる解決手段として、前記各複合流体I或いは複合流体IIの複数をその下流側流路で別流路より供給された海成分(B)或いはその他の成分により再び周部を囲い、まとめた複合流体IIIとなし、その下流側にて圧縮流動し細化することを特徴としている。
更に、繊維断面内に多くの極微の規則的配列部分を増加させる目的で、複合流体Iが細化された出口側の同一平面上、即ち、細化された複数の複合流体Iの出口とは隔離された位置に設けた複数の開口群I′に島成分(A)を供給し、もう一方の海成分(B)は別に設置した複数の開口群II′に供給する。該開口群II′は島成分(A)間に配置され、開口群I′と交わることなく、その出口側開口は開口群I′の各流路を囲む形状の流路をなす。島成分(A)は開口群I′の各々の開口から、海成分(B)は開口群I′の各開口を囲む形状の開口群2からそれぞれ平行に流出して、その下流側で合流し圧縮流動しても液流を乱すことなく、島成分(A)の位置関係を適正に維持した繊維の極微構造体となる前躯体である一定規則の配列構造を持つ複合流体I′を構成していることを特徴としている。
複合流体Iと同じか、或いは寸法の異なる断面構造となした後、その下流側にて複合流体I及び複合流体I′の複数の各周囲を海成分(B)、あるいはその他の成分により囲い圧縮流動して細化し繊維化することを特徴としている。
また、より短波長側の反射機能発現を必要とする場合には、特に極微構造体直径をより微細にして、そのピッチ間隔も小さくすることが重要となる。この細化された規則性配列構造を有する複合流体Iの周囲を海成分(B)或いはその他の成分によってさらに周囲を囲い、別の複合構造の複合流体IIを形成させ、それを前記同様に圧縮流動して細化し、繊維化する方法、あるいはこれを複数回繰り返し繊維化する。更に、この複合流体IIの複数を包含して囲い、該複合流体IIの繊維断面内における適切な位置に適正な流路形状を設け、圧縮流動して細化し、繊維化することを特徴としている。
或いは、上記の複合流体IIの内部に形成された規則性を有する配列構造体である複合流体Iが2種類以上の形状あるいは2種類以上の寸法で構成させることにより、紫外線、可視光線、赤外線のいずれかを含む2種類以上の特定波長光の同時反射機能を発現できることを特徴としている。
また、本発明では、極微構造体の前躯体である規則性配列構造を形成するための開口群Iは縦横の行列配列、3角形配列(千鳥配列)、5角形配列、6角形配列、8角形配列等の多角形配列を含む規則的配列を持つこと並びに開口群の各開口形状が円形以外に楕円形、長円形、四角形、矩形、多角形、その他の異形状からなる1種類以上の形状であること、そして1種類以上の異なる寸法形状を含むことを特徴とすると共に極微構造体を構成する島成分(A)の周囲を囲う海成分(B)あるいはその他の成分で周囲を被覆することも可能な基本的な口金構造であることを特徴としている。
また、本発明によってなる極微構造体部の周囲を被覆している成分を除去することによって、複数の一定寸法の極微構造体からなる極細繊維を得ることができることを特徴としている。
次に本発明における前記の形成法を具現化するための基本的な紡糸口金構造についての詳細を以下に記す。複数のプレートで組み立てられた紡糸口金(図4)は、第一プレートには高屈折率高分子成分である島成分(A)、低屈折率高分子成分である海成分(B)、或いはその他の成分の導入路(図7a,b)があり、第2プレートに一方の島成分(A)を供給する流路と複数の開口群I(図8a,b)を有し、該開口群Iはその下部の第3プレートを貫通した開口となっている。第3プレートにはもう一方の海成分(B)を供給する流路と開口群IIが設置され、該開口群IIは開口群Iの周囲を壁により囲う形状を有していると同時に開口群I及び開口群IIは第3プレート内に精確な位置を維持し、相互に接触することなく出口側にて合流する構造となっている。なお、開口群IIの下部形状は島成分量に対して、相対的に吐出量が多くなる場合が多い海成分側の流れを制御するための緩和溝形状を有している。なお、この海成分で充満される緩和溝部分は貫通孔出口から吐出する島成分流の外層相を乱さないように、また島成分流の方向に影響を与えないように貫通孔と平行性を含めて緩和溝壁の加工が成されている。その下部にある第4プレートの流路(図10、11)は、下流側に徐々に細化する方向で漏斗状となり先端開口を有している。該漏斗状流路は入口側形状と出口側形状が相似的或いは目的により、非相似的な流路形状を有したものとなっている。
更に、第5プレートの流路(図12)は、第4プレートの先端開口の出口側を受け入れる位置に配置し、別方向から海成分(B)或いはその他の成分を供給し、複数の前記複合流体Iの周囲を囲い複合流体IIを形成して、その下流側で細化するための漏斗状流路と先端開口を有している。該開口の下流に、更に第6プレートを設置し、海成分(B)或いはその他の成分により、複合流体内の規則性配列微細構造部を更に極微化する目的で前記複合流体IIの外周部を囲うための流路及び下流側で細化する漏斗状流路と先端開口が設けられている。
更に、図6では、前記複合流体Iが細化された出口側開口の同一平面上、即ち、細化された複数の複合流体Iの出口とは隔離された位置の第5プレートの上面側に、前述と同様に、再び島成分(A)の流路である複数の開口群I′を設け、第6プレートを貫通する開口とした。図6に示すように、第6プレートにはもう一方の海成分(B)を供給する流路及び複数の開口群II′を設け、該開口群II′は前記同様、島成分(A)と島成分(A)の開口群の間に配置され、かつ島成分(A)の開口群1′と交わることなく設けられている。その第6プレートの下部にて島成分(A)及び海成分(B)が吐出され合流する流路を有する構造となっている。
この段階で繊維の極微構造体を形成する前躯体となる流体、即ち、一定規則性を有する配列構造を持つ複合流体I′を形成し、その下流側の第7プレート(図6)に海成分(B)或いはその他の成分を供給する別流路を設け、再び複合流体I′の外周部を囲いその下流側にて細化するための漏斗状流路と先端開口を有する。この流路にて複合流体I′を細化して、複合流体Iと同等の断面構造と成した後に、第8のプレート(図6)に設置した流路にて、複合流体I及び複合流体I′の各々の周囲を海成分(B)、或いはその他の成分により囲い圧縮流動により細化し、繊維化される。
上述のごとく、本発明では、少なくとも1つの複合流体Iの周囲を囲う海成分(B)或いはその他の成分を供給する流路とそれを細化する漏斗状流路及び開口を設け、複合流体IIを形成する。更に、下流側プレートの流路にて複合流体IIを同様にその周囲を囲う海成分(B)或いはその他の成分を供給する流路とそれを細化する漏斗状流路及び開口を設け複合流体IIIを形成する。前記同様に複数回これを繰り返すことで所定の複合流体nが形成されて行くことになる。
そして、目的設計に最適な極微の規則的配列寸法及び所定の島部径の前駆体になるようにするため、徐々に細化する方向で漏斗状となっている流路形状の漏斗の上流側と下流側開口が相似形となる流路、或いはその断面の圧縮比率が異なる流路、或いはその開口部が平行に傾斜している流路のいずれかが複合された流路であることを特徴としている。
また、上記において、開口群I、開口群I′の開口配列が縦横の行列配列、3角形配列(千鳥配列)、5角形配列、6角形配列、8角形配列などの多角形配列の少なくとも1種類以上の一定規則の配置となっていること並びに、開口群II及び開口群II′が開口群I、開口群I′の間に隔離し配置されたこと、更に、開口群I、開口群II、開口群I′、開口群II′及び各漏斗状の先端の開口並びに吐出孔が円形や楕円形、長円形、四角形、矩形、多角形、などの異形状や突起状あるいは異なる寸法のいずれかの複数を有する開口でも行えることである。
以上のような特徴により、物性、例えば屈折率の異なる2種類以上の高分子材料である成分(A)、成分(B)及びその他の成分によって規則性ある極微構造体を繊維断面内に配列し、本事例で記した如く、回折・散乱作用による光の反射機能が効率良く発現すると同時により経済的で、かつ大量生産を可能とする形成法及びその紡糸口金を提供するものである。
【発明の効果】
本発明により、まったく新規な繊維内の長軸方向(長尺方向)に極微の規則的配列構造群(島部)を有する繊維の形成が可能となった。光の反射機能発現への事例においては、設計反射波長を短波長にして行くにしたがい、極微構造体の径やそれらのピッチ間隔は数十ナノメートルレベルの極微構造が必要となるが、前述してきたように形成極微構造体群の周囲を光透過性の材料である低屈折高分子成分である海成分(B)又は、その他の成分によって囲い、或いは更に、その外周を前記成分にて覆うことができる本設計口金により、規則的配列極微構造を維持した状態でその構造体群の更なる極微化を可能とした。
また、上述の如くの光反射機能の事例において、例えば、可視光領域における発色機能の場合、薄膜多層積層に基づく干渉作用による場合と異なり、繊維への入射光角度による影響がないため、広視野角度における無彩色化という現象を回避でき、更に、1繊維内に少なくとも2種以上の特定波長の反射機能を具現化できるため、例えば、有害光線である紫外線反射と発色機能や赤外線反射と発色機能を併せ持つ繊維、強いては織編物の提供、更にはこれらの繊維素材の裁断化等により、従来に無い多機能性のある塗装材や建材、内装材など広範囲に応用できる。
更には、海成分部分をクラッド層とするマルチ光ファイバーの形成や方向性を高度に制御した高導電性高分子繊維、高強度高分子繊維、液晶高分子繊維など均質な種々の新機能繊維設計への基盤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の主たる事例としての回折・散乱機能を有する極微構造繊維の実施の形態について、繊維の断面構造、その形成プロセス、形成方法及びそれを具現化するために使用する紡糸口金について、図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、本発明に基づく極微構造繊維の基本となる断面群の概念図である。図1(a)は、光透過性を有する高分子材料の物性、例えば、屈折率の異なる成分の中の高屈折率成分としての島成分(A)4及び低屈折率成分としての海成分(B)3による矩形断面繊維の例示である。海成分(B)内に島成分(A)からなる円形断面を有する複数の極微構造体が縦横の行列配列をなし、回折・散乱作用に基づく光の反射を発現するに十分な規則性を持って配置されたものである。このような基本的な規則的配列を採ることにより、島成分(A)の各部で散乱された夫々の光が一定方向に反射し、その方向に強く回折反射されることになる。
なお、上記でいう規則性とは、例えば、図1(a)において光透過性を有する低屈折率成分(B)3の内部に、高屈折率成分(A)からなる極微構造体4が、図1(a1)に示すように同一直径D(=2r)でしかもx方向及びy方向に、あるピッチPで規則的に配列していることをいう。ここで、ピッチPとは隣接する極微構造体4の中心間距離を意味する。又、本発明による繊維断面内に配列された極微構造体4の直径Dは極微の規則的配列構造を持つ繊維を構成する材料、すなわち、一方の成分(A)の屈折率n1やもう一方の成分(B)の屈折率n2及びその他の成分の屈折率nnの大きさ、及びそれぞれの屈折率の比、更には極微構造体4の配列形態などにより一義的には設定できないが、概ね次のように考えられる。
散乱理論に基づいて、粒子のサイズパラメータαとして、
α=(λ/2πr)・・・・1
なる関係式がある。r(2r=D)は粒子の半径、λは波長である。散乱理論によれば、散乱光強度はこのαの値により大きく変動(振動)するとされてきたが、本発明者による別の出願中の特許(特願2002−215402)で詳細は示されているごとく単なる散乱理論の適用ではなく、前述の回折・散乱機能発現に着目することにより、1式のαが下記の範囲において、
10−2≦α≦103・・・2
を充足する時、実用的な光反射機能を発現することが見出され、これに基づくαの値を逆算した場合の例では、極微構造体の半径r=(0.19μm/2)のとき、反射ピーク波長λ=0.45μmという値が得られ、α=0.79程度となることが計算によって確認されている。
このようにして得られた光反射機能を発現するためのαの値は10−1〜102、更には10−1〜10が好適である。特に発色という視点から言うなら、反射強度に伴う色彩工学的な観点から、10−1〜10であることが望ましい。このαの値が10−2より小さくなると、粒子サイズが波長オーダーより非常に大きくなり、赤外線領域を逸脱するサイズとなる。逆に、このαが103より大きくなると、粒子サイズが分子レベル以下のサイズとなり、規則性を保持することが困難になると共に、散乱光強度自体も非常に小さくなり、実用的な光反射機能を発現できなくなる。
又、極微構造体の直径2r(=D)とピッチPの関係は、2r(=D)<Pの式で示されるもので、極微構造体の直径Dは、最大でもピッチPの寸法未満(この場合、隣接する極微構造体同士が点接触しない範囲を意味する)である。直径DがピッチPと同等かそれ以上になると、極微構造体同士が融着し、設計極微構造の形成が困難となり、目的とする光反射機能を低下、あるいは消滅させるので好ましくない。
又、図1(a1)に示す島成分(A)のX軸方向の極微構造体数については、理論的計算上は無限条件で行うが、実際的には目的とする反射光波長λよりも充分長い距離をとることが望ましく、好ましくは波長λの数倍以上、より好ましくは数十倍程度確保されることが望ましく、目的波長の反射効率を向上させることが出来る。
又、Y軸方向における行数は、極微構造体の島部成分(A)と海部成分(B)の物性値、例えば、光反射特性では、それらの屈折率比に依存し、その値が大な組合せほど良いが、通常の高分子材料では概ね5行以上、より好ましくは10行以上が望ましい。
又、島部の形態については、例えば、図1(a1)は極微構造の円形の規則的配列の縦横行列配列の一事例を、図1(a2)は三角形配列(千鳥配列)の一事例であり、図1(b)は繊維断面内において縦横の規則的配列を持つ2種類の極微構造体で構成されている事例で、図1(b)の極微構造体5は楕円形状が縦横の配列を持ち、もう一方の極微構造体4は円形で直径が楕円形の短径よりも小さくピッチP寸法も小さい縦横配列となっている。この場合、光反射機能に対しては、楕円形の極微構造体5は赤外線領域の回折・散乱作用に基づく光の反射機能、例えば、熱線反射を目的とすることに適し、小円形の極微構造体4は可視光線領域、例えば青色波長のみを回折・散乱作用に基づく光の反射機能を発現するのに適した多機能形態を例示したものである。これらの極微構造体4及び5は必ずしも本事例の形態に限るものではなく、矩形、3角形や金平糖のような各種の異形であっても差し支えない。
図1(c)は、図1(a)の矩形断面形状の外周部を更に島成分(B)あるいは他の成分6により被覆した複合構造体例である。前記と同一繊維径で比較すると、必然的に繊維断面内の極微構造体の寸法及びピッチPの寸法を更に小さくすることができる。この事例の特徴は、繊維外形寸法を変えずに、紫外線領域などの短波長の光を反射させるために極微構造部分のみを更に小さくした繊維断面の例示であり、その他の成分を耐摩耗性のある高分子材料を使用すると繊維の強度向上にも効果がある。
又、図1(d)は繊維断面の図1(a)を複数個まとめ、図1(c)の場合と同様にその外周部を島成分(B)又はその他の成分6で囲い1つの繊維断面とした例で、これによって光の入射方向による光の反射効果がより向上するものである。図1(e)、(f)も同様の目的であるが、繊維断面や形状などの異なった例を示したものである。
次に本発明の形成方法においては、使用高分子の高精度微量供給機が装備されていることが好ましい。その理由は、図1(a)に示す矩形断面構造を有する繊維において、断面寸法が織網物対応での通常かつ実用的な寸法、例えば、10μm×30μm(約3dtex/f)として、青色波長を反射させようとする場合、その内部に直径0.1μm、ピッチP寸法が、0.29μmの極微構造体4を5列×10行=50個を縦横の等間隔の規則的配列が必要となる。更に、この繊維の量産化として、最低12フィラメントを同時に紡糸する場合、この繊維全体の吐出量は約11ml/minとなり、極微構造体50個の総吐出量は、12フィラメント分で僅かに約0.018ml/minの程度となる。従来の複合紡糸装置に用いられてきた通常のギヤポンプなどの押出し機では、最低の吐出量が1.0ml/min前後であることから、上記の極微量を精確に吐出することは、紡糸口金の分配流路を工夫しても適量の正確な吐出制御が非常に困難である。したがって、微量制御が必要なこのような場合では、新たな高精度の微量供給機が必要となり、極微量を精確に押出し可能なシリンダータイプの高精度微量供給機を用いる方が好ましい。勿論、この高精度微量供給機はシリンダータイプに限るものではなく、極めて精確なギヤポンプやその他の各種方式による押出機や供給機でも差し支えないものである。
次に、図2は図1(e)、(f)に示した断面構造を持つ繊維を成形する場合の事例に対して、その流体断面の形状変化プロセスを模式的に図示したものである。他の例は図3の模式図に示すが、これらは一例であってこれに限定するものではない。
まず、図2に基づく形成プロセスは、一方の島成分(A)を高精度微量供給機によって、図4に示す紡糸口金内に設けられた一定規則で配列している複数の開口群I18(図4(b))の集合部に供給し、各々の開口21に分配される。次に分配された島成分(A)は個々の開口21の下流側に押出される。他の流路から供給された海成分(B)は、島成分(A)間に配置された緩和溝である複数の開口群II19(図4(c))から供給し、開口22の出口側に設けた出口開口24とは壁によって隔離された流路に流入する。開口群I18の島成分(A)と開口群II19の海成分(B)は平行に下流側に押出され、夫々の高分子成分は液流と方向が乱れることなく合流し、一定規則で配列された位置関係を保ち、図2(b)に示す一定規則の配列構造の複合流体I11を構成する。この図2(b)では4個の一定規則の配列構造を持つ複合流体I11の断面略図を示している。
この図2(b)に示した前記複合流体Iの4個は、下流側に設けた別々の流路内で個別に、複合流体Iの断面を相似的に圧縮流動して細化する。その状態を図2(c)に示す。この場合、複合流体Iの4個を同時に相似的に圧縮流動し、細化しても差し支えないし、必ずしも相似的でなく、断面の方向によって圧縮比率を変えることによって、複合流体Iの位置を制御しても差し支えない(図14参照)。また、複合流体Iの複数個を敢えて別々に圧縮する理由は、繊維断面に構成される極微構造体の寸法及び規則的配列のピッチ間寸法をより小さくする必要がある場合や、繊維太さによっては極微構造体が繊維断面のより外周側にあることが望ましいとき、例えば、出来るだけ光の反射機能を効率よく発現することを要求するような繊維断面を形成する場合などには適している。
図2(d)は、圧縮流動により細化された複合流体I11′を4個まとめて下流側の円形の流路内に受け入れて、複合流体Iの各々の外周部を囲うための別な流路から海成分(B)あるいは他の成分を供給して規則的な配列を持つ複合流体I11′の4個を包含する新しい円形の断面を持つ複合流体II13を形成する。その下流の流路では、更に圧縮流動により、この複合流体II13を細化して図2(e)の断面構造とする。この段階にて紡糸口金の吐出孔から吐出して繊維化する。あるいはその後、延伸して繊維化することにより、図1(e)の円形断面繊維に示したものと同構造の繊維断面を得ることが出来る。
更に、極微構造体の寸法及びそのピッチ間隔寸法を更に小さくするための手段として、図2(d)に示す細化された複合流体II13の外周部を囲うために別な流路から海成分(B)あるいは他の成分を供給し、規則的な配列を持つ複合流体Iの4個を包含する円形断面の複合流体IIを更に包含する円形の複合流体III15を形成する(図2(f)参照)。その下流の流路では、更に圧縮流動によって複合構造流体IIIを細化して図2(g)の断面構造とする。この段階にて紡糸口金の吐出孔から吐出して繊維化する、あるいはその後延伸して繊維化することにより図1(e)の円形断面繊維に示したと同構造の繊維断面を得ることが出来る。更に、延伸する工程においては、極微構造体寸法及びピッチP寸法を正確に決められた寸法にするため、その延伸する割合を制御、調整することでより精度の高い寸法に仕上げることができる。
次に、目的とする物性、例えば、光の反射機能を更に向上させる実施の形態は図3に示すごとく、前述の図2のプロセス中で複合流体Iを形成する工程を2段階行うことにより、更に多くの極微構造体を繊維断面内に形成させるための例示である。第1段階では紡糸口金の配列可能な最大面積内に縦横の規則的配列の開口群Iに島成分(A)を供給分配し(図3(a))、次に開口群IIに海成分(B)を供給分配し(図3(b))、複合流体I11を形成し細化する(図3(c))。その細化された位置と隔離された位置に、再び図3(a)と同様に縦横の規則的配列の開口群I′に島成分(A)を供給し、開口群II′に海成分(B)を供給して複合流体I′を形成、細化する(図3((e))。細化された3個の複合流体I、複合流体I′を次の段階で海成分(B)またはその他の成分によって3個の複合流体I11′の各々を囲い複合流体II13を成す(図3(f))。この段階で紡糸口金の吐出孔から吐出して繊維化するか更に細化13′して(図3(g))吐出、繊維化する。或いはその後延伸して繊維化することにより、図1(d)に示す矩形断面と同様の繊維を得ることが出来る。
更に、紡糸口金に関する実施の形態を図に従って説明する。紡糸口金の部分的な断面図例を図4に、図5には開口群I及び開口群IIの拡大断面図を示す。図6に複合流体Iを2段階で形成するための口金の断面図例を示す。図7から図13には紡糸口金の平面図とその一部の断面図を示す。図14は圧縮流動するための流路例を示す。
図4(a)は6枚のプレートで構成した紡糸口金の断面図であって、第1プレート33には図7(a)に示すように島成分(A)の流入口34と海成分(B)及びその他の成分の流入口35、36があり、第2プレート37は島成分(A)を分配する開口21が一定規則に配列され(図8(a))、その開口21は第3プレート38を貫通している。この第3プレート38には海成分(B)が供給される流路があり、島成分(A)の開口21の周囲を均一に囲う位置に開口群IIを形成する開口22が配置されている。開口22(図4(c)参照)の出口側は開口21と壁で隔離されてなる断面24(図4(c))を有する。島成分(A)の開口21(図4(b))の出口側開口部を均一に囲う形状であるだけでなく、前述したように特殊な形状の緩和溝を有することによって繊維となしたときの極微の規則的配列構造と断面の面積割合が相似的な関係を持ち、島成分(A)と海成分(B)が平行かつ規則的な配列位置を維持し、液流の安定化を図る形状となっている。下部の第4プレート39には夫々の成分が規則的な配列位置関係を維持して合流後、その下流にて徐々に圧縮流動される流路25によって複合流体Iを形成して細化されるように設計されている。
また、図4(a)において、第5プレート41(図12参照)では該複合流体Iの複数の各々を海成分(B)或いはその他の成分により囲い、その下流に向けて徐々に圧縮流動される流路28により複合流体IIを形成し、下部の開口29から吐出して繊維化する。或いは更に、第6プレート42(図13参照)に設置した流路30から海成分(B)或いはその他の成分を供給し、複合流体IIの外周を囲い複合流体IIIをなし、その下流に向けて徐々に圧縮流動される流路31により複合流体IIIを細化し、下部の開口32から吐出して繊維化するように設計されている。
繊維内に極微の規則的配列構造をより多く、しかも密に配置する手段としては、図6に示す紡糸口金の部分的な断面図に示すごとく、前述の図4(a)の紡糸口金において、複合流体Iが形成され細化した第4プレートの下側に、再び第2、第3、第4プレート図8、図9、図10の構造と同機能のプレート、即ち、第5、第6のプレートを複合流体Iの流路と交わらない位置に配置し、複合流体I′を少なくとも一つ以上形成し、その各々を細化する。次に第7プレートの流路25′にて複合流体I′の複数を流動圧縮細化し、さらに第8プレートにて、細化された複合流体I及び複合流体I′の複数個を流路27′によって供給された海成分(B)またはその他の成分によって被覆し、流路28′によって圧縮流動により細化、吐出して繊維化することで繊維断面内に多数の極微構造体の集合を有する極微の規則性配列構造繊維を形成することが出来る。
又、図6において、前述の第4プレート及び第7のプレートの流路が図14(a)に示すごとく上部の液流入側の中心位置と下流側出口の中心位置が変化する場合や図14(c)のごとく液流入側断面形状と出口側では非相似形となし、その圧縮比率を変えることや、流路図14(d)のごとく平行移動することによって繊維断面内の極微の規則性配列構造体群の位置を制御し、最適位置へ制御することができる。
又、図6における第2プレート及び第5プレートに配置されている開口21の配列が、図4(b)に示すように、縦横の行列配列や3角形配列(千鳥配列)、6角形配列などの配列である場合やその開口21の形状が円形以外に三角形、四角形、長円形あっても良い。そして、これらの配列や開口21の形状、寸法並びに配列のピッチ寸法などの少なくとも一つ以上を組み合わせた開口群Iを有するものであっても良い。その理由は、光の反射の例でいえば、複数の異なる特定波長を同時に反射させるような複合的多機能を得ようとする場合などに適した紡糸口金となる。
又、図4(a)に示す第4プレートの開口26、第5プレートの開口29及び図6の第7プレートの開口26′が突起状となっている口金を使用することによって、繊維断面における極微の規則的配列構造の集合部をより適正な配置にすることが出来る。
以下に本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。但し、この実施例によって本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
溶融高分子材料の高精度微量供給機を備えた複合溶融紡糸装置を用い、紡糸には本発明の図4に示す紡糸口金において、第2プレート平面図、図7(a)の配列に示すごとく、12に分割された1つに4ブロックの円形の開口群Iがあり、その開口は導入孔直径0.4mm、出口孔直径0.2mm、そして孔数1ブロック当たりで8×8=64ホール、4ブロック合計256ホールの縦横配列ピッチ1.0mmの流路群1を有し、図8に示す通り、第3のプレートの出口側は第2のプレートから貫通している円形開口部の周囲を8角形の異型、1辺の長さ0.3mmの溝で囲ったものを用い、下口金には12ホールの直径0.2mmの吐出孔を持つ紡糸口金を使用した。
使用高分子材料は極微構造体を構成する島成分(A)には平均屈折率n1=1.63のポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、海成分(B)には平均屈折率n2=1.53のナイロン6(Ny−6)を選択し、下記条件で、図1(f)に示す繊維断面内に4ブロックの極微の規則性配列構造を有する繊維の紡糸を行った。
溶融複合紡糸条件については、高精度微量供給機により、PETの吐出量は0.05〜0.15g/min、他方のNy−6は従来型の押出し機によって13〜20g/minの範囲で供給した。紡糸温度は285℃、巻き取り速度は1km/minから5km/minの条件下で、吐出量、巻き取り速度を適宜調整して未延伸糸を得た。更にこの未延伸糸は、2ないし3倍の熱延伸処理によって繊維断面の細化を行い、繊維断面内に4ブロックの極微の規則性配列構造を有する繊維を得た。
上記繊維断面の走査型電子顕微鏡(TEM)によると、繊維の断面寸法は約20μmの円形で内部には4つのブロックに分かれた極微の規則性配列構造を有するPETの極微構造体が、平均直径D=0.1μmφ、平均ピッチP=0.3μmの断面を持ち各ブロックは8×8=64個で合計256個の極微の規則性配列を得た。
上記の単繊維を、積分球を具備した分光光度計(日立製作所モデルU−4000型)を用い、入射角度θ=45°の可視光反射スペクトルを測定した。このときの反射率は標準白色板を基準とした。反射スペクトルは、ピーク波長λ=420nm付近に反射率75%、半値幅約65nm程度の分光スペクトルが得られた。
更に、この単繊維を約45°での目視によって、青紫色に発色していることが確認できた。見る角度を0°〜60°の広範囲変においても青紫色か赤紫色に明らかな発色が認められ、干渉型繊維のような無彩色系になることを回避できた。
(実施例2)
上記の紡糸装置並びに紡糸口金を用い、2種類の同様の高分子材料、PETとNy−6の組み合わせにより、図1(f)に示す繊維断面内に4ブロックの極微構造体を有する繊維の紡糸を行った。
紡糸条件は、PET側を実施例1より吐出量を増加させ、0.1〜0.3g/min、他方のNy−6を15〜20g/minの範囲で供給し、紡糸温度は285℃、巻き取り速度は1km/minから5km/minの条件下で、吐出量と巻き取り速度を適宜調整して未延伸糸を得た。更にこの未延伸糸は2ないし3倍の熱延伸処理によって繊維断面の細化を行い、繊維断面内に4ブロックの極微の規則性配列構造を有する繊維とした。
上記繊維断面を上記同様のTEMにて観察したところ、繊維の外形寸法は実施例1とほぼ同様の約20μmの円形であるが、内部の4つのブロックに分かれた極微の規則性配列構造を有するPETの極微構造体が、平均直径D=0.2μmφ、平均ピッチP=0.57μmの断面を持ち各ブロックは8×8=64個で合計256個の極微の規則性配列を得た。
又、上記単繊維を、実施例1と同様の条件で可視光領域の分光反射スペクトルを測定した。反射スペクトルは、波長λ=550nm付近に反射率70%程度の分光スペクトルを得た。
(実施例3)
上記の紡糸装置並びに紡糸口金を用いて、2種類の高分子材料も同様のPETとNy−6の組み合わせにより、下記条件で、図1(f)に示す繊維断面内に4ブロックの極微の規則性配列構造を有する繊維の紡糸を行った。
紡糸条件は、PET側は実施例1、2より吐出量をさらに多くした0.3〜0.7g/min、他方のNy−6は15〜20g/minの範囲で供給し、その他の条件は同様で紡糸温度は285℃、巻き取り速度は1km/minから5km/minの条件下にて吐出量、巻き取り速度を適宜調整して未延伸糸を得た。更にこの未延伸糸は2ないし3倍の熱延伸処理によって繊維断面の細化を行い、繊維断面内に4ブロックの極微の規則性配列構造を有する繊維とした。
上記繊維断面を同様にTEM観察したところ、繊維の外形寸法は実施例1、2と同様の約20μmの円形であるが、内部の4つのブロックに分かれた極微の規則性配列構造を有するPETの極微構造体が、平均直径D=0.25μmφ、平均ピッチP=0.65μmの断面を持ち各ブロックは8×8=64個で合計256個の極微の規則性配列を得た。
上記単繊維を、同様の条件による分光光度測定を行い、最大反射波長λ=670nm、反射率65%を得たが、実施例1及び2のピークに比較してやや幅広な反射スペクトル形態を示した。
(実施例4)
上記の紡糸装置並びに紡糸口金を用い、島成分(A)に平均屈折率n1=1.71のポリエチレンナフタレート(PEN)を用い、他方は前述同様の平均屈折率n2=1.53のナイロン6(Ny−6)を用い、下記条件で、図1(f)に示す繊維断面内に4ブロックの極微の規則性配列構造を有する繊維の紡糸を行った。
紡糸条件は、PEN側の吐出量を0.05〜0.15g/min、他方のNy−6は従来型の押出し機によって13〜20g/minの範囲で供給し、紡糸温度は285℃、巻き取り速度は1km/minから5km/minの条件下で、吐出量、巻き取り速度を適宜調整して未延伸糸を得た。更にこの未延伸糸は2ないし3倍の熱延伸処理によって繊維断面の細化を行い、繊維断面内に4ブロックの極微の規則性配列構造を有する繊維を得た。
上記繊維の断面寸法は約22μmの円形で内部には4つのブロックに分かれたPENの極微構造体が、平均直径0.12μmφ、平均ピッチPが0.32μmの縦横の四角形配列を持ち、各ブロックは8×8=64個で合計256個の規則性配列を得た。
上記単繊維を、同様の分光光度測定を行い、最大反射波長λ=460nm、反射率約84%、半値幅80nm程度の反射スペクトルを得た。
この単繊維の視角度約45°での目視色は、深青色に発色していることが確認できた。見る角度を0°〜60°の範囲で変化させた場合でも青紫色か青緑の明らかな発色を得た。
(実施例5)
実施例4と同様の紡糸装置並びに紡糸口金を用い、2種類の高分子材料も同じようにPENとNy−6の組み合わせによって、図1(f)に示す繊維断面内に4ブロックの極微構造体を有する繊維の紡糸を行った。
紡糸条件は、PEN側を実施例4より吐出量を増加した0.1〜0.3g/min、他方のNy−6は15〜20g/minの範囲で供給し、紡糸温度は285℃、巻き取り速度は1km/minから5km/minの条件下で、吐出量と巻き取り速度を適宜調整して未延伸糸を得た。更にこの未延伸糸は2ないし3倍の熱延伸処理によって繊維断面の細化を行い、繊維断面内に4ブロックの極微の規則性配列構造を有する繊維とした。
形成繊維断面の外形寸法は実施例1と同様、約23μmの円形であるが、内部の4ブロックに分かれた極微の規則性配列構造体が、平均直径0.22μmφ程度、平均ピッチ0.6μm程度の断面を持ち、各ブロックは8×8=64個で合計256個の極微の規則性配列を得た。
又、上記単繊維の分光光度測定により、最大反射波長λ=570nm、反射率85%の比較的先鋭なスペクトルを示した。
(実施例6)
紡糸装置並びに紡糸口金並びに高分子材料も同じPENとNy−6の組み合わせを用い、下記条件で、図1(f)に示す繊維断面内に4ブロックの極微の規則性配列構造を有する光反射機能を発現する繊維の紡糸を行った。
紡糸条件において、PENの吐出量をさらに多くして0.3〜0.7g/min、他方のNyは同じ15〜20g/minの範囲で供給し、その他の条件は同様の紡糸温度285℃、巻き取り速度1km/minから5km/minの条件下で、吐出量、巻き取り速度を適宜調整して未延伸糸を得た。更にこの未延伸糸は2ないし3倍の熱延伸処理によって繊維断面の細化を行い、4ブロックの極微の規則性配列構造を有する繊維とした。
形成繊維の断面を同様のTEM観察した結果、繊維外形寸法は約23μmの円形であるが、内部に4ブロックに分かれた極微の規則性配列構造体が得られ、平均直径D=0.25μmφ、平均ピッチP=0.6μmの断面を持ち各ブロックは8×8=64個で合計256個の極微の規則性配列を得た。
更に、得られた単繊維を、同様の条件で可視光分光光度計を用いて反射スペクトルを測定した。反射スペクトルは、主波長λmax=680nm、反射率は68%であった。又、視認発色状態は少し黒味のある赤色を呈していた。
(実施例7)
紡糸には本発明の図6に基づく6枚のプレートによる紡糸口金を用い、実施例1ないし6で使用した口金の第5プレートの分配流路を変更して、最外周部には高屈折成分であるPETを供給出来る流路を設けた第5プレートを使用し、他は同じ口金とした。
極微構造体を構成する高分子材料はPETとNy−6を選択し、最外周部は高屈折材料であるPETによって囲われた図1(f)に示す繊維断面内に4ブロックの極微の規則性配列構造を有する光反射機能を発現する繊維の紡糸を行った。
紡糸条件としては、極微構造体を形成させるためのPETの吐出量を0.05〜0.15g/min、外周部の被覆用に10g/min、他方のNy−6を5〜13g/minの範囲で供給し、紡糸温度は285℃、巻き取り速度は1km/minから5km/minの条件下で、吐出量、巻き取り速度を適宜調整して未延伸糸を得た。更にこの未延伸糸は2ないし3倍の熱延伸処理によって繊維断面の細化を行い、4ブロックの極微構造体を有する繊維を得た。
形成繊維断面をTEMにて観察したところ、繊維の断面寸法は約25μmの円形で、最外周はPETによって被覆され、その内側にはNyの層があり、更に内部には4ブロックに規則性配列を有するPETの極微構造体群が、平均直径D=0.12μmφ、平均ピッチP=0.33μmの断面を持ち各ブロックは8×8=64個で合計256個の極微の規則性配列を得た。
更に、得られた単繊維を可視光分光光度計にて、入射角度θ=45°の反射スペクトルを測定した。反射スペクトルは主波長λmax=480nm、反射率は71%、その波長における半値幅は約80nmであった。この単繊維の視角度約45°での目視色は、青色に発色していることが確認できた。見る角度を0°〜60°の範囲で変化させた場合でも青色か青緑色に明らかな発色が認められ、無彩色領域は回避できた。
(実施例8)
実施例7と同じ紡糸口金を用い、紡糸する高分子材料も同様とし、極微構造体を構成する高屈折率材料にPETを用い、他方の低屈折材料としてはNy−6を選択し、最外周部もPETによって囲われた図1(f)に示す繊維断面内に4ブロックの規則性配列を有する繊維の紡糸を行った。
紡糸条件は、PETの吐出量を0.1〜0.2g/min、外周部被覆用に8g/min、他方のNy−6は5〜13g/minの範囲で供給し、紡糸温度は285℃、巻き取り速度は1km/minから5km/minの条件下で、吐出量、巻き取り速度を適宜調整して未延伸糸を得た。更にこの未延伸糸は2ないし3倍の熱延伸処理によって繊維断面の細化を行い、4ブロックの極微構造体を有する繊維を得た。
形成繊維断面のTEM観察により、繊維の断面寸法が約24μmの円形で、最外周はPETによって被覆され、その内側にはNy−6の層があって、更に内部には4ブロックに分かれた規則性配列を有するPETの極微構造体群が得られ、平均直径D=0.18μmφ、平均ピッチP=0.30μmの断面を持ち各ブロックは8×8=64個で合計256個の極微の規則性配列を得た。
又、得られた単繊維を同様の条件にて分光光度計測を行い、主波長λmax=475nm、反射率65%、その波長の半値幅は約80nmであった。又、この単繊維の約45°での目視色は緑色に発色しており、見る角度を0°〜60°の範囲変化させた場合でも緑色か青緑色に明らかな発色が認められた。
(実施例9)
実施例7と同様の紡糸口金を用い、極微構造構成材料にPETを用い、他方にNy−6を選択し、最外周部もPETによって囲われた図1(f)に示す繊維断面内に4ブロックの規則性配列を有する繊維の紡糸を行った。
紡糸条件は、島部形成用PETの吐出量を0.15〜0.25g/min、外周部の被覆用に5〜8g/min、他方のNy−6は5〜13g/minの範囲で供給し、紡糸温度は285℃、巻き取り速度は1km/minから5km/minの条件下で、吐出量、巻き取り速度を適宜調整して未延伸糸を得た。更にこの未延伸糸は2ないし3倍の熱延伸処理により繊維断面の細化を行い、4ブロックの極微構造体を有する繊維を得た。
形成繊維断面のTEM観察により、繊維の断面寸法が約25μmの円形で、最外周はPETによって被覆され、その内側にはNy−6の層があって、更に内部には4ブロックに分かれた規則性配列を有するPETの極微構造体群が得られ、平均直径D=0.3μmφ、平均ピッチP=0.65μmの断面を持ち各ブロックは8×8=64個で合計256個の極微の規則性配列が得られた。
得られた単繊維をこれまでと同様の測定条件により、主波長λmax=670nm、反射率60%、その波長半値幅は約100nmであった。この単繊維の約45°での目視色は、赤色発色を得、見る角度を0°〜60°の範囲変化させた場合でもやや紫赤色の明らかな発色を得、無彩色を回避できた。
以上記述した如く、本発明による口金の考え方及び成形方法により、海島複合繊維内の長軸あるいは長尺方向にこれまで例の無い設計に応じた多量の規則性極微構造体群の成形が可能となった。
【産業上の利用可能性】
本発明により、光の回折・散乱現象の具現化による全方位反射型の構造発色を含むマルチ光反射機能繊維や加工等による塗装、建材などへの応用分野、更に多重送信が可能な光マルチファイバーなどの情報産業、或いは長尺方向に特異的な強度や伝導性などの物性を有する機械、電気分野など極めて広範な利用応用への可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】規則性極微配列構造繊維の基本的断面構造の模式図的である。(a)繊維断面内部に極微構造体が縦横の四角形配列した配置例である。(a1)極微構造体の縦横四角形規則的配列の拡大図である。(a2)極微構造体の3角形(千鳥配列)規則的配列の拡大図である。(b)繊維の同一断面内に2種類の極微構造体を配置した例を示す。(b1)2種類の寸法、形状の異なる極微構造体が縦横4角形の規則的配列図である。(c)(a)に示した繊維の外周を更に被覆した図を示す。(d)矩形繊維の同一断面内に縦横の四角形配列の極微構造体群が3箇所に配置された模式図。(e)円形の繊維断面内に極微構造体が四角形ブロック内に形成、4ブロック独立配置模式図。(f)(e)の円形繊維の外周部を成分(B)又はその他の成分で、さらに被覆した図である。
【図2】規則性極微配列構造繊維の形成プロセス概念模式図である。(a)規則性極微配列構造をなすための成分(A)が縦横四角形配列の流路内に入った図である。(b)成分(A)の各々が成分(B)により周囲を囲まれ4個の四角形に形成された図である。(c)一定規則の配列、4つのブロック各々を別流路にて細化した図である。(d)(c)の外周を成分(B)又はその他の成分で被覆した図である。(e)(d)を細化した図である。(f)(e)の外周を成分(B)又はその他の成分で被覆した図である。(g)(f)を細化した図である。
【図3】同一繊維断面内に異種極微構造体群形成プロセス概念図である。(a)成分(A)の縦横四角形を規則性配列するために分配した図である。(b)成分(A)の周囲を成分(B)によって囲い、規則性配列した図である。(c)(b)を次工程で細化し、平行した別位置に成分(A)を縦横四角形配列分配した図である。(d)(c)の位置と平行別位置に再度成分(A)の周囲を成分(B)により被覆した図である。(e)(d)を細化した図である。(f)(c)及び(d)で細化した3箇の四角ブロックの周囲を被覆した図である。(g)(f)を細化した図である。
【図4】1フィラメントの紡糸口金断面図例と成分(A)、(B)の最上流分配プレート平面図である。(a)本発明の複数枚プレートで構成された紡糸口金例の断面図である。(b)(a)断面図A−A’部の平面図である。(c)(a)断面図B−B’部の平面図である。
【図5】図4(a)、(b)の断面及び平面の拡大図である。(a)第2、第5、第3、第6プレートの規則性配列開口群I及び開口群IIの拡大断面図である。(b)第3、第6プレートの下流側の平面図を示す。
【図6】2段階複合流体形成用口金の断面図である。
【図7】紡糸口金例の第1プレート平面図とその一部断面図である。(a)複数枚プレートで構成された紡糸口金例の第1プレートの平面図である。(b)(a)平面図の一部断面を示す。
【図8】紡糸口金例の第2プレート平面図とその一部断面図である。(a)複数枚プレートで構成された紡糸口金例の第2プレートの平面図である。(b)(a)平面図の一部断面を示す。
【図9】紡糸口金例の第3プレート平面図とその一部断面図である。(a)複数枚プレートで構成された紡糸口金例の第3プレートの平面図である。(b)(a)平面図の一部断面を示す。
【図10】紡糸口金例の第4プレート平面図とその一部断面図である。(a)複数枚プレートで構成された紡糸口金例の第4プレートの平面図である。(b)(a)平面図の一部断面を示す。
【図11】図9の紡糸口金の第4プレート平面図の裏面を示す平面図とその一部断面図である。(a)図9に示す紡糸口金の第4プレート平面図の裏面を示す平面図である。(b)(a)平面図の一部断面を示す。
【図12】紡糸口金例の第5プレートの平面図とその一部断面図である。(a)複数枚プレートで構成された紡糸口金例の第5プレートの平面図である。(b)(a)平面図の一部断面を示す。
【図13】紡糸口金例の第2プレートの平面図とその一部断面図である。(a)複数枚プレートで構成された紡糸口金例の第2プレートの平面図である。(b)(a)平面図の一部断面を示す。
【図14】流動圧縮流路の事例図である。(a)1つの流路例の拡大平面図である。(b)1つの流路例(a)の拡大断面図を示す。(c)2つの流路組み合わせ例の拡大平面図である。(d)2つの流路組み合わせ例(c)の拡大断面図を示す。
【符号の説明】
1 繊維断面
2、10 極微構造体群
3、8 海成分(B)
4、9 極微構造体島成分(A)
5 楕円等異形島成分(B)
6、7、12 海成分(B)又はその他の成分
11 複合流体I
11′ 複合流体I′
13 複合流体II
13′ 複合流体II′
15 複合流体III
15′ 複合流体III′
18 開口群I
19 開口群I及び開口群II平面
20 第2プレート表面流路
21 開口群Iを構成する開口貫通孔
21′ 開口群I′を構成する開口
22 第3プレート海成分開口
23 開口群IIを構成する開口
23′ 開口群II′を構成する開口
24 緩和溝
25、28、31 圧縮流動し細化するための流路
26、29、32 吐出口
27、30 海成分(B)又はその他の成分用別流露
33 第1プレート
37 第2プレート
38 第3プレート
39、39′40′ 第4プレート
37′、41 第5プレート
42、38′ 第6プレート
39′ 第7プレート
41′ 第8プレート
【図1】
図1
【図2】
図2
【図3】
図3
【図4】
図4
【図5】
図5
【図6】
図6
【図7】
図7
【図8】
図8
【図9】
図9
【図10】
図10
【図11】
図11
【図12】
図12
【図13】
図13
【図14】
図14
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